新たに法人を設立する場合には登記が必要となり、さまざまな決定事項や、手続きを経る必要がある。一方で、個人事業主での開業の場合、そういった過程を経る必要がないため、自分がはじめようと思えば、法的手続きなしにはじめることも可能だ。
しかし、個人事業主であっても、開業時にぜひ行ってほしいことがいくつかある。そこで今回は、開業時にしてほしいことについて解説していきたい。
■税務署への開業届等の提出
開業したら、1カ月以内に「開業の届出書」「青色申告の承認申請書」「青色事業専従者給与に関する届出書」の3点セットを税務署へ提出してほしい。(それぞれ、期限は異なるものの、提出忘れを防ぐためにも3点セットでの提出をおすすめしたい。そして、必ず控えを作成し、税務署の受付印をもらっておいてほしい。)
ただでさえ嫌なイメージしかない税務署に、わざわざ自分が事業をはじめたことを宣言することは、敬遠したいと思うかもしれない。しかし、事業を長く続けていく以上は、税務署とは切っても切れない関係になる。そのため、必要な届出を期限内に行うことで得られるメリットを、確実に受けておくことだ。
・開業の届出書
社会保険加入なども行えなくなるため、必ず提出し、税務署の受付印が押された控えも大切に保管してほしい。
・青色申告の承認申請書
青色申告を行うことが可能となり、青色申告特別控除(帳簿のレベルにより10万円もしくは65万円)の適用が受けられる。
・青色事業専従者給与に関する届出書
配偶者など、専業的に自らの事業に従事してくれる人に対し給与(届出書に記載した金額まで)を支給でき、経費にすることが可能。金額設定を上手く行えば節税に繋がる。
■屋号入りの銀行口座の開設
次にしてほしいことが、事業専用の預金口座の開設である。売上金の入金や仕入・経費の支払いなどはプライベートの口座から切り離すことが重要であり、これにより、事業の損益をある程度把握することも可能だ。
プライベートの収支と混在していれば事業の損益、資金繰りを掴むことは困難となってしまう。また資金的に公私が混在していれば、それだけでどんぶり勘定により申告しているというマイナスイメージを持たれかねない。こうした観点からも、事業専用の口座を開設して、プライベート資金との切り離しを行ってほしい。
■小規模共済などへの加入
税金を安く済ませたいがために、無理に経費を使って所得を抑える事業主や、そういうことを促しているようにも見える情報が散見される。税金が安くなっても、経費を使うことでそれだけ資金が流出してしまい、手許に資金が残らないのであれば何の意味もないのではないだろうか。
そこでおすすめしたいのが、余剰する資金を小規模企業共済や、国民年金基金など国の制度の活用である。これらの制度は将来、自らの退職金や年金のための貯蓄であり、掛金相当額が所得から控除される。貯蓄しながら節税ができるという国から用意された制度なので、これを使わない手はないだろう。
■おわりに
個人事業主として事業をはじめる際には、誰しもが通る道である。今後の運営のことを考えても決して損はないはずなので、開業の際には、ぜひこれらのことを検討してほしい。