国税OB税理士が監修。公認会計士・税理士・会計事務所・企業経理担当、税金・会計に関わる“会計人”がいま必要な情報をお届けします!

会計人ニュース

注目キーワード

  • KaikeiZine
  • 税金・会計ニュース
  • 元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:従業員慰安旅行 税務調査で否認されないための留意点③

元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:従業員慰安旅行 税務調査で否認されないための留意点③

社員旅行を数年に一度のペースで盛大に実施している、社員旅行に参加できなかった人には現金を支給している、など社員旅行の企画の仕方は会社によってさまざまです。ただし、税務上の取り扱いに気を付けないと税務調査で問題になる可能性があります。

■社員旅行を数年に1回のペースで実施している場合、単年度に換算して判断できるか?

『当社では海外への社員旅行を実施し、1人当たり24万円を会社負担としました。当社では、社員旅行を5年に1回のペースで実施しているので、単年度であれば約4万8千円となる。この金額は少額であることから経済的利益による給与課税は受けないと考えてよいのではないか?』という疑問があります。

この問題については、【平22.12.17裁決】の中で、次のように述べられています。

●従業員等が受ける経済的利益については、例えば、レクリエーション行事であれば、その行事が実施された時点で享受するものであり、その時点で収入あるいは収入すべき権利が確定するものである。
●したがって、少額不追求の観点から判断するに当たっても、収入あるいは収入すべき権利が確定するごとに、つまりはレクリエーション行事であれば、その行事の実施ごとに判断すべきである。
●したがって、レクリエーション行事として行われる慰安旅行が隔年又は数年に1回実施されていたとしても、単年度に引き直すなどの考慮をすべきではない。
よって、使用者が行うレクレーション行事により従業員が受ける経済的利益の額が少額であるかどうかは、その行事ごとに判断すべきとなるので、単年度当たりの費用を算定し、少額であるという主張は認められないこととなります。

■社員旅行の不参加者に現金を支給したいと考えているが、税務上の問題は?

旅行の不参加者に対する待遇には注意が必要です。全従業員数の50%以上が参加していれば、不参加者が出ること自体には問題はありません。しかし自己の都合で社員旅行に参加しなかった従業員に対し、会社負担分を現金で支給した場合には、その支給額は給与として課税されます。注意しなければならないことは、給与課税が行われるのは現金を受け取った不参加の従業員のみでなく、社員旅行に参加した従業員についても同額の給料が支給されたものとして課税されてしまうという点です。したがって、不参加者への現金支給はなるべく避けたいところです。

ただし、会社(業務)の都合で不参加となった従業員に対し、同様の現金を支給した場合には、現金で受け取った従業員のみ給与課税が行われます。

■社員旅行の会社負担額が役員給与に該当した場合には、損金の額に算入されるのか?

社員旅行には、従業員のみならず役員も参加します。社員旅行の会社負担額が役員給与に該当した場合、役員給与の損金算入要件(定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与)のいずれにも該当しませんので、会社負担額は損金の額に算入されません。したがって、給与として源泉所得税の課税が行われるとともに、法人税の追加負担も発生してしまいます。

■社会通念上一般的と認められる金額を超える分にのみ給与課税すべきでは?

『従業員が受ける経済的利益に課税する場合、社会通念上一般的と認められる金額を超える分にのみ給与課税すべきではないか。すなわち、社会通念上一般的と認められる金額を1円でも超えた場合に、これを超えた部分についてのみならず全体について課税すると、たまたま運よく上限額を超えなかった者との間で極めて不公平な結果をもたらすのではないか。』という疑問があります。

この問題については、【平14・4・11 岐阜地裁】の判決文の中で以下のように述べられています。

「海外社員旅行に参加した従業員等が受ける経済的利益の額が多額に過ぎることその他の事情により、当該福利厚生行事が社会通念上一般的に行われている範囲内のものとは認められない場合には、当該旅行費用については少額不追求の前提を欠き、課税しなくて差し支えないとする理由が失われるのであるから、その場合は原則に戻って、その経済的利益相当分全額が給与所得に係る収入金額となり、従業員等の所得として課税すべきものと解され、その一部についてのみ課税しないという扱いをすることは相当ではないと解される。」

よって、社会通念上一般的と認められる金額を超える分にのみ給与課税するのではなく、全体について給与課税することとなります。

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

ページ先頭へ