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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:従業員慰安旅行 税務調査で否認されないための留意点②

従業員慰安旅行の会社負担額については、通常、福利厚生費として費用処理されます。当該旅行が社会通念上一般に行われている福利厚生行事と同程度のものであれば会社の処理は是認されるでしょう。しかし、会社負担額が社会通念上認められる範囲を逸脱し、多額と認められる場合には給与課税されることとなります。税務調査により会社負担額が給与と認定され、争いになった事例が多く見られます。今回は会社負担額が争点となった過去の裁決、裁判例を紹介します。

次の2つの要件も満たしている場合には、原則として給与課税しなくてよいとされています。

①旅行期間が4泊5日(目的地が海外の場合には、目的地における滞在日数)以内。
②全従業員の50%以上が参加。

しかし、これらの基準を形式的に満たしたとしても、会社負担額が高額であれば給与課税されてしまいます。以下に紹介するのは会社負担額が争点となった過去の裁決、裁判例です。

【平3・7・18裁決】
▼旅行期間:3泊4日
▼目的地:バンコク
▼旅行代金:3,124,112円
▼参加人数:17人
▼会社が負担した1人当たり旅行費用:183,771円 →福利厚生費が相当

【平8・1・26裁決】
〇平成3年分旅行
▼旅行期間:3泊4日
▼目的地:シンガポール
▼旅行代金:2,387,000円
▼参加人数:7人
▼会社が負担した1人当たり旅行費用:341,000円 →給与課税

〇平成4年分旅行
▼旅行期間:3泊4日
▼目的地:アメリカ西海岸
▼旅行代金:4,089,700円
▼参加人数:9人
▼会社が負担した1人当たり旅行費用:454,411円 →給与課税

〇平成5年分旅行
▼旅行期間:3泊4日
▼目的地:カナダ
▼旅行代金:5,200,000円
▼参加人数:10人
▼会社が負担した1人当たり旅行費用:520,000円 →給与課税

【平10・6・30裁決】
〇平成5年分旅行(従業員の家族も参加)
▼旅行期間:3泊4日
▼目的地:九州
▼旅行代金:9,800,000円
▼参加人数:51人(内従業員32人)
▼会社が負担した1人当たり旅行費用:192,003円 →給与課税

〇平成6年分旅行(従業員の家族も参加)
▼旅行期間:4泊6日
▼目的地:ハワイ
▼旅行代金:25,600,000円
▼参加人数:55人(内従業員26人)
▼会社が負担した1人当たり旅行費用:449,918円 →給与課税

〇平成7年分旅行(従業員の家族も参加)
▼旅行期間:3泊4日
▼目的地:沖縄
▼旅行代金:17,700,000円
▼参加人数:68人(内従業員29人)
▼会社が負担した1人当たり旅行費用:260,332円 →給与課税

【平14・4・11 岐阜地裁】
〇平成8年分旅行
▼旅行期間:4泊6日
▼目的地:シンガポール
▼会社が負担した1人当たり旅行費用:204,919円 →給与課税

〇平成9年分旅行
▼旅行期間:4泊6日
▼目的地:サイパン
▼会社が負担した1人当たり旅行費用:199,501円 →給与課税

〇平成10年分旅行
▼旅行期間:4泊6日
▼目的地:バンコク
▼会社が負担した1人当たり旅行費用:165,066円 →給与課税

【平25・5・30 東京高裁】
▼旅行期間:2泊3日
▼目的地:マカオ
▼旅行代金:8,000,000円
▼参加人数:32人(内従業員10人)
▼会社が負担した1人当たり旅行費用:241,300円 →給与課税

以上の通り、過去の裁決や裁判例を見ても、現状においては適正額について明確な金額基準のようなものはないと言わざるをえません。会社が負担したタイへの1人当たり旅行費用183,771円を社会通念上一般的に行われているとして福利厚生費処理を認めたものもあれば、九州への1人当たり旅行費用192,003円について会社負担額が多額であり、社会通念上一般的に行われている福利厚生行事と同程度のものとは認められないとしたものもあります。

従業員慰安旅行の費用については税務調査で必ずと言ってよいほどチェックされる項目です。10万円を超える会社負担額については給与課税リスクがありますので、慎重に判断する必要があります。

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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