近年、中堅・中小企業でも海外進出が進んでおり、税務署所管法人でも海外取引の税務調査が強化されています。では、どのような企業が調査の対象となりやすいのでしょうか。また、調査対象法人を選定するに当たって、税務当局はどのような点に着目するのでしょうか。

一般的に、次に該当するような法人は税務調査のターゲットになりやすいといえます。

1 海外子会社を有する法人

近年では、中小企業に対しても移転価格課税や国外関連者に対する寄附金課税が行われるケースが多くなっています。それは、グループ会社間では取引価格を操作して利益を国外に移転したり、赤字の子会社を支援するために経済的利益を無償で供与するといった行為が行われやすいためです。また、海外子会社等を利用して簿外資金や受注工作資金を捻出するといった不正行為も散見されます。そのため、近年では海外子会社等を有する法人を重点的に調査する傾向があります。

2 国外送金等調書などの海外関連資料の多い法人

国外送金等調書は、国外への送金又は国外から送金を受領した金額が100万円を超えた場合に金融機関が税務署に提出する法定調書であり、海外との資金の流れを把握する上で重要な資料といえます。例えば、国外送金等調書などから次のような国外送受金を把握した場合には課税上の問題が想定されます。

■法人の代表者の個人口座に海外からの送金がある場合
法人の国外送受金のみならず、法人の代表者個人の国外送受金も併せてチェックします。もし、代表者個人の預金口座へ海外企業から入金がある場合、法人の収入に計上すべきもの(例えば、海外取引に係るコミッション等)を個人口座へ入金させることにより、法人の収入から除外しているのではないかという点が疑われます。

■タックスヘイブン国に多額の送金がある場合
タックスヘイブン国を使った租税回避が行われていないか検討します。また、持株割合を確認し、タックスヘイブン対策税制の適用の有無も検討します。

■海外への送金目的が「使用料」など、源泉徴収が必要なものである場合
著作権、工業所有権の使用料や、機械等のリース料の支払いなどについては、源泉徴収が適切に行われているか検討します。