国税OB税理士が監修。公認会計士・税理士・会計事務所・企業経理担当、税金・会計に関わる“会計人”がいま必要な情報をお届けします!

会計人ニュース

注目キーワード

監査報告書の長文化で会計士の淘汰がすすむ

2017年6月26日付で、金融庁より、「『監査報告書の透明化』について」が公表された。今回は、監査報告書の長文化による会計業界への影響について解説する。

■監査報告書とは?

監査報告書とは、監査人が実施した監査の結果に基づき、会社の財務諸表が企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を適正に表示しているかどうかについて、意見の表明を行う報告書のことである。

監査対象となる会社には、資本金5億円以上又は負債合計額200億円以上の大会社や上場会社等がある。監査報告書の種類には、短文式報告書と長文式報告書とがあり、日本では短文式報告書が一般的であったが、今回の金融庁の発表により、変化を迎えようとしている。

従来の短文式報告書では、主に監査の対象、監査人が実施した監査の概要、財務諸表に対する監査人の意見の記載に留められ、具体的な会社のリスクや監査人の考え、実施した監査の詳細は記載されない。

しかし、いわゆる長文式報告書の導入となれば、監査報告書において監査人が着目した会計監査上のリスク等(「監査上の主要な事項(Key Audit Maters:KAM)」)に関する情報が開示されることとなる。そのため、監査報告書の情報価値を高め、会計監査についての財務諸表利用者の理解を深めることや、監査の品質管理の向上に繋がるなどの期待が寄せられている。

■諸外国による長文式報告書の導入の検討

諸外国における長文式報告書の導入状況について見ていくと、まず、欧州ではイギリスやオランダなどで監査報告書の拡充について、先行して検討が進められてきた。ISA(国際監査基準)の改正により、2016年12月15日以降に終了する会計年度より、長文式報告書が導入されている。

次に、アジア・オセアニアにおいては、中国及びオーストラリアでは2016年12月期より、一部の企業に対して、長文式の監査報告書が義務付けられている。

また、アメリカでは、2017年6月に監査報告書に関する改定基準が公表されたことに伴い、2019年6月30日以降に終了する事業年度から、大規模企業に対して長文式の監査報告書が義務付けられる予定である。

■監査報告書の長文化による会計業界への影響

日本での長文式報告書の導入時期については、本稿記載時点において、未定ではあるが早ければ2019年度から導入される可能性がある。会計業界へは、どのような影響があるのだろうか。

・財務諸表の利用者への影響
企業のリスクに対する情報を多く入手することができるようになり、投資活発化へ良い影響があると考えられる。ただし、内容がより専門的なものとなるため、すべての利用者にメリットがあるかどうかについては疑問が残る。

・会社への影響
作業工程の増加等によりコストが増加することが考えられるが、監査人と会社との密な連携により、会社のガバナンスがより強化されるというメリットがある。また、報告書の内容によって、資金の調達状況に大きな差が出る可能性も。

・監査人への影響
各監査人が独自の内容を記載していくことになるため、かなりの時間と労力を費やすことが想定される。一方で、監査人は会社の責任者との密なコミュニケ―ションを図る必要があるため、より深度ある監査が行えるというメリットがある。ただし、監査人の監査手続等の差異が公となるため、監査人の淘汰が進む可能性もある。

今後の動向に注目が集まる。

著者: KaikeiZine編集部

KaikeiZine

租税調査研究会が監修する税金・会計の総合ニュースメディアです。税金・会計に関するさまざまなニュースを、わかりやすくお届けします!
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/
■公認会計士・税理士・経理の転職サイトREX
https://www.career-adv.jp/
■KaikeiZine
https://kaikeizine.jp/

ページ先頭へ