多くの土地や建物を保有する地主の場合、総じて所得が高くなり、多額の所得税負担を強いられる。地主業はほかの事業と違い、損金となる経費が固定資産税等に限られるためだ。そこで今回は、とくに不動産収入が多い地主向けに、不動産管理会社の活用メリットを紹介したい。
■法人への収益移転による税率の引き下げ
不動産所得が高額の場合、不動産管理会社に収益の一部を移転させることで、個人・法人、トータルでの節税が可能となる。個人の場合、累進課税で税率がどんどん上昇するが、中小事業者であれば、800万円までは法人税率が15%と固定。個人の税率が15%を超えているのであれば、その税率差分の節税が可能というわけだ。
不動産管理会社が行う仕事は、不動産にかかる集金・入退去の仲介・修繕があった場合の業者の手配・賃借人との対応窓口など。その対価として、個人から管理料を受けとる仕組みだ。管理料について税法に明文規定はないが、集金額の15パーセント以下であれば税務調査で否認されることはないと税理士などは指摘する。そして、個人側においては、この管理料を経費として損金処理することが可能となる。
■個人所得の分散と給与所得控除の利用
前述のとおり、不動産管理会社に管理料を支払うことで、所得税と法人税の税率差での節税を図ることが可能であるが、ここでは、もう一歩踏み込みたい。法人側において支払うべき法人税を上手く節税すれば、節税メリットはさらに大きくなるからだ。
たとえば、地主親族を役員に据え、役員報酬を支払う。そして、その親族役員はなるべく多いほうが良い。管理料の額や家族構成などにより一概には言えないが、所得はなるべく多数に分散させるのが、節税においての王道。
所得が多くの人数に給与として分散できれば、人数分だけ給与所得控除を活用できる。仮に、役員全員の給与が103万円以下で法人損益がトントンになるのであれば、個人側で計上した管理料については、完全に節税できることなる。
■相続対策にも使える
不動産管理会社の利点は、地主の所得税の節税だけにとどまらない。地主に相続が発生し、相続財産のほとんどが不動産である場合、相続人が納税する相続税の資金確保に窮することも想定される。そのような場合、相続した不動産の一部を不動産管理会社に売却することで、納税資金を確保することができる。不動産管理会社の買い取り資金は、その不動産を担保にして銀行借入により調達する。結果的に、銀行借入により相続税を納税することとなるが、現状では相続税を延納する場合の利子とは、くらべものにならないほど安くつく。また、建物を建築する場合でも、不動産管理会社名義で建築すれば、条件さえ満たせれば借地権が発生する。地主側の相続税対策にも役立つであろう。
■おわりに
以上のように、不動産管理会社を設立すると多くのメリットが享受できる。しかし、各種金額の設定や管理会社への不動産売却など、方法を誤れば十分なメリットを享受できない場合もあるため、税理士等の専門家によく相談のうえで実行していただきたい。