個人事務所で週3日、9時半~15時半のパート勤務を2年続けた後、所員数20名ほどの税理士法人に正社員として転職しました。そのとき、子どもたちは小3と年中。育児と仕事の両立が大変になることへの不安と、新しい環境への期待が入り混じってのスタートでした。
正社員として働くまでは、延長保育を使い、私が次男の幼稚園の送迎をしていましたが、勤務時間が9時~17時半になり、延長保育を使っても間に合わないので、隣に住む義母に幼稚園の送迎をお願いすることにしました。長男は変わらず学童保育です。
正社員になり、時間も仕事内容もグっと本格的になりました。仕事にやりがいはありましたが、最初のころは緊張や不安が大きく、毎朝エレベーターの中で「今日も一日頑張れますように」と祈っていました。この税理士法人で、担当を持ち、お客様のところへ訪問して社長や経理の方とお話をしたり、事業計画を立てたり、融資のご相談に乗ってお客様と一緒に銀行に行く等、税理士業務一般を学ばせてもらいました。最初のころは失敗も多く、怒られることもありましたが、それでも日々、自分の成長を感じることができました。
いつも心がけていたことが2つあります。
一つは事務所内で明るく朗らかでいること。そしてもう一つは「私にとっては(担当が20件として)お客様が20分の1でも、お客様にとっては私が100分の100。どのお客様にも親身に対応すること」でした。そして、「脇田さんが担当でよかった」などと言っていただいたときには、天にも昇るような気持ちになりました。
残業はあまりしませんでしたが、繁忙期は義母にお願いして、残業することもありました。夕飯を作ってもらう日々が続くときには、夕飯代としてお金を払っていました。その方がお互い、する方もしてもらう方も気兼ねがなくよかったからです。育児と仕事の両立をあまり苦労せずにできたのは、義実家の協力が大きかったです。とても感謝しています。
そういえばこんなことがありました。残業していて、20時過ぎくらいに「今日はもう少し仕事していきたいな」と思い、家に電話をしたら、次男に「ママ今どこー?今から帰ってくるの?」と聞かれて、「うーん…今日ね、もっとお仕事していきたいんだけど、いいかな?」と言うと、「やったー」って言われたんです。それで「え?やったーって何よ~」と思ったら、「だって今日いっぱいお仕事してきたら、違う日、早く帰れるんでしょ?」と。
義母の協力があるとはいえ(夫の帰りは遅い)、母親にしかできないこともあると思うし、帰って子どもの寝顔を見る日が何日か続いたり、こんな風にかわいいことを言われると胸がきゅっと痛みましたが、それでもこの環境に感謝しつつ、どんなことも前向きにとらえて、なんでも吸収しようと思っていました。
正社員になって1年4カ月経ったころ、パート勤務時代の時間(積み上げ計算をしたら8カ月分ほどになりました)と合わせて『実務経験2年』を満たすことから、税理士登録をしました。税理士を目指し始めて有資格者になるまで6年半、そこからパート勤務2年(正社員換算で実質8カ月)、正社員勤務1年4カ月、トータル10年かけての登録です。
税理士登録をしたある日、会社に行くと机の上に新しい名刺が置いてありました。「税理士 脇田弥輝」。不思議と嬉しさより「どうしよう…!本当に税理士になっちゃった!」とドキドキしてしまいました。ずっとなりたかった税理士だからこそ、重みがあって身が引き締まりました。
その税理士法人では、税理士かそうでないかで仕事内容や給与が変わることはなく、名刺がそっと変わっただけ。事務所内での環境は変わりませんでしたが、自分の中での意識は変わりました。また、確定申告時期に支部の無料相談会に行ったり、雑誌や書籍の執筆依頼が来たりと、税理士登録したことで事務所外での仕事の幅が広がりました。拙著「青色申告と経費・仕訳・節税がよくわかる本」の執筆依頼も勤務時代にいただきました。本をゼロから書いていくことは想像以上に大変でしたが、税金のことに詳しくない人にも分かりやすく…と一生懸命考えて作り、おかげさまで好評で、一人でも多くの事業主の方のお役に立てているのかと思うとうれしいです。
今思い返してみても、「パート勤務」「正社員勤務」「開業」のうち正社員勤務のときが一番、仕事と育児の両立で忙しかったです。でも私は、パートで長期間かかるより、正社員になってぐっと成長できてよかったと思っています。置かれている環境は人それぞれなので、すごい無理をすることはないと思いますが、多少の無理をすることで早めに成長できたかなと思っています。