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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:基礎から分かる移転価格税制⑧ 移転価格事務運営要領の改正~企業グループ内役務提供(IGS)の見直し

平成30年2月16日付で「移転価格事務運営要領」が改正されました。これにより、企業グループ内役務提供(IGS)のうち「低付加価値IGS」に該当するものついては、「総原価に5%マークアップした金額」を独立企業間価格として取り扱う旨の規定が新たに追加されました。

■企業グループ内役務提供(IGS)とは

企業グループ内部では、経営・財務管理、会計業務、予算管理などを相互に提供し合うことがあります。こうした役務提供を「企業グループ内役務提供」(IGS:Intra Group Service)と呼びます。

国外関連者に対して、企業グループ内役務提供の活動を行う場合に、それらの活動が、国外関連者にとって「経済的又は商業的価値を有する」ものであるときは、適正な対価を回収する必要があります。

■IGSに係る独立企業間価格の算定方法の見直し

改正前の事務運営要領では、一定の要件を満たすIGSについては、役務提供の総原価の額を独立企業間価格とすることができるとされていました。

今回の改正では、総原価の額による方法に加え、いわゆる「低付加価値IGS」に該当するものについては、役務提供に係る総原価の額に、総原価の額の5%相当額を加算した額を独立企業間価格として取り扱うこととされました。この「低付加価値IGS」に該当するためには、以下の要件のすべてを満たす必要があります。

 

<低付加価値IGSの5要件>

①当該役務提供が支援的な性質のもので、企業グループの中核的事業活動に直接関連しないこと。

②当該役務提供において、無形資産を使用していないこと。

③当該役務提供を行う者が、重要なリスクの引受け、管理、創出を行っていないこと。

④当該役務提供の内容が次に掲げる業務のいずれにも該当しないこと。

(イ) 研究開発

(ロ) 製造、販売、原材料の購入、物流又はマーケティング

(ハ) 金融、保険又は再保険

(ニ) 天然資源の採掘、探査又は加工

⑤当該役務提供と同種の内容の役務提供が非関連者との間で行われていないこと。

 

 

今回の改正によって、企業グループ内の活動は以下のように分類することができます。

(注)低付加価値IGSであっても、原則的な移転価格算定手法によって独立企業間価格を算定することもできます。

■文書化義務

低付加価値IGSにおいては、以下の書類の作成保存が必要となります。

  1. 当該役務提供を行った者及び当該役務提供を受けた者の名称及び所在地を記載した書類
  2. 当該役務提供が低付加価値IGSの5要件を満たしていることを確認できる書類
  3. それぞれの役務提供の内容を説明した書類
  4. 当該法人が実際に当該役務提供を行ったこと又は当該役務提供を受けたことを確認できる書類
  5. 総原価の額の配分に当たって用いた方法の内容及び当該方法を用いることが合理的であると判断した理由を説明した書類
  6. 当該役務提供に係る契約書又は契約の内容を記載した書類
  7. 当該役務提供において当該法人が当該国外関連者から支払を受ける対価の額又は当該国外関連者に支払う対価の額の明細及び計算過程を記載した書類

■株主活動の明確化

企業グループ内の活動のうち、株主活動(親会社が子会社の株主として遵守しなければならない法令に基づいて行う活動)についてはIGSに該当せず、対価の回収も必要ないとされています。今回の改正では、株主活動の範囲に関する記載が拡充しました。

株主活動に当たれば対価の回収は必要ないため、実務上、株主活動の範囲を押さえておくことは重要です。改定後の事務運営要領では、以下のような活動が株主活動に該当するとされています。

イ 親会社が発行している株式の金融商品取引法第2条第16項に規定する金融商品取引所への上場

ロ 親会社の株主総会の開催株式の発行その他の親会社に係る組織上の活動であって親会社がその遵守すべき法令に基づいて行うもの

ハ 親会社による金融商品取引法第24条第1項に規定する有価証券報告書の作成(親会社が有価証券報告書を作成するために親会社としての地位に基づいて行う国外関連者の会計帳簿の監査を含む。)又は親会社による措置法第66条の4の4第4項第1号に規定する連結財務諸表の作成その他の親会社がその遵守すべき法令に基づいて行う書類の作成

ニ 親会社が国外関連者に係る株式又は出資の持分を取得するために行う資金調達

ホ 親会社が当該親会社の株主その他の投資家に向けて行う広報

ヘ 親会社による国別報告事項に係る記録の作成その他の親会社がその遵守すべき租税に関する法令に基づいて行う活動

ト 親会社が会社法第348条第3項第4号に基づいて行う企業集団の業務の適正を確保するための必要な体制の整備その他のコーポレート・ガバナンスに関する活動

チ その他親会社が専ら自らのために行う国外関連者の株主又は出資者としての活動

 

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租税調査研究会事務局
tax@zeimusoudan.biz

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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