国税OB税理士が監修。公認会計士・税理士・会計事務所・企業経理担当、税金・会計に関わる“会計人”がいま必要な情報をお届けします!

会計人ニュース

注目キーワード

増加する税務署スルーしての不服審判所直接審査請求

国税不服申立制度の見直により、税務署への異議申し立てを経ずに国税不服審判所へ審査請求を行うこと(直接審査請求)が可能になって2年が過ぎた。国税庁及び国税不服審判所の平成29年度の再調査の請求・審査請求・訴訟の概要によれば、制度見直し初年度(平成28年度)で大幅増加となった直接審査請求を行う納税者が29年度も増加の一途にあることが分かった。

平成26年6月の行政不服審査法の改正に伴う国税通則法の見直しで、国税関係の不服申立手続も全体的な見直しが図られ、同28年4月から新たな制度が開始された。
具体的には、不服申立制度の公平性及び利便性の向上を図るため、それまでの国税における税務署長などが行った処分に不服がある場合の手順である、

①処分後2カ月以内に税務署長等へ「異議申立て」を行う
②その異議決定後の処分になお不服がある場合には、第三者機関である国税不服審判所へ「審査請求」を行う
③それでも不服がある場合は裁判所へ訴訟を提起する

という流れから、①、②について「異議申立て」に代わる同様の手続を踏襲する「再調査の請求」を行うか、これまで税務署長が行った所得税法や法人税法に規定する青色申告書に係る更正処分等でしか認められなかった国税不服審判所への直接「審査請求」を行うかのどちらかを納税者個人が選択できるよう改められるともに、請求期限も3カ月に延長されるなどが行われた。

再調査の請求における救済割合は12.3%

税務署長による更正・決定や差押えなどの処分に不服のある納税者が、国税不服審判所長に対する審査請求をする前に、その処分を行った税務署長などに対して処分の取消しや変更を求めて不服を申し立てる「再調査の請求」(旧異議申立て)の平成29年度発生件数は、前年度より140件(8.4%)多い1814 件発生している。

一方、直接審査請求を選択する者については、消費税が前年度比30.8%増加の633件となり申告所得税の598件を抜いて最も多くなっていることが特徴として挙げられる。

継続案件を含めた要処理件数2324件。このうち処理した件数は1726 件と、前年度に比べて3.4%少なく、平成に入ってから最少件数となっている。これは、1件当たりの処理に時間が掛かっているためと推察される。

処理の内訳をみると、「取下げ等」208件、「却下」200件、「棄却」1105件、「一部取消」173件、「全部取消」40件で、納税者の主張が一部でも認められたのは213件にのぼり、処理件数全体に占める割合(救済割合)は前年度を5.5ポイント上回る12.3%に達し、4年振りで二桁を記録した。

(図表 国税庁「平成29年度における審査請求の概要」より抜粋)

直接審査請求が全体の約7割を占める

次に、税務署の処分を不服として国税不服審判所長に対しその処分の取消しや変更を求めて不服を申し立てる「審査請求」の状況をみると、審査請求件数は2953件で前年度よりも465件(18.7%)増加した。平成28年度の審査請求では、直接審査請求件数が368件から1473件に急増したことから、29年度の直接審査請求件数に注目が集まっていたが、蓋を開けてみれば、28年度より547件(37.1%)増え2020件と2千件を超え、審査請求全体の3分の2超が税務署長への異議申立てをスルーして直接不服審判所長へ申立てている。2953件を税目別でみると、法人税等と徴収関係が前年度よりも減ったものの、申告所得税(153.1%増)、相続税・贈与税(196.6%増)、源泉所得税(44.4%増)及び消費税等(27%増)は軒並み増加している。

一方、平成28年度は直接審査請求の急増などもあり2千件を割った処理件数は、積極的な処理の促進を図ったことから29年度は516件増加の2475件まで回復した。処理した2475件の内訳は、「取下げ」247件、「却下」186件、「棄却」1840件、「一部認容」148件、「全部認容」54件で、納税者の主張が認められた認容件数は202件となっているが、容認割合は8.2%と前年度の12.3%から4.1ポイント大きく減少し、納税者サイドからみると厳しい結果となっている。これについては、直接審査請求を行うことによるリスクを指摘する専門家もいる。というのも、税務署長への異議申立てを行うことで税務署の議決書からその処分理由が詳細にわかり、これに基づいて論拠や証拠を知ることで審査請求時に理論武装が図れるが、直接審査請求では審査請求までに十分な準備期間が得られないためだ。

 

国側敗訴は全体の1割

国税不服審判所に審査請求を行ったもののなおその処分に不服がある場合、最終手段として裁判所へ訴訟を提起することとなるが、平成29年度の訴訟発生件数は前年度の230件からさらに減少となる199 件と200件を割り6年連続の減少となるとともに、平成に入って最低の件数となった。

継続事案も含めた訴訟の終結件数は210件と前年度を比べて15件ほど減っており、このうち納税者の主張が認められ国側が敗訴したものは一部敗訴が10件、全部敗訴が11件の合計21件と全体の10%。この21件を税目別でみると、所得税が最も多い10件、以下、法人税6件、相続税・贈与税3件、徴収関係2件。審級別にみると一審12件、二審2件、上告審7件だった。

 

著者: イーター侍

税金ライター/元税金専門誌編集者

四半世紀以上、税金専門誌の編集者として国税庁、国税局、税務署、会計事務所に出入りする。数年前に独立した後、編集者時代に築いた人脈をいかし、ネットワークビジネスを手がける。その傍ら、趣味と副業を兼ねて税務関係ニュースを追いかける“中年ライター”だ。

ページ先頭へ