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仮想通貨 税金的には「雑所得」も課題あり

最近、仮想通貨で取り沙汰されるニュースのほとんどが悪いイメージ。野田聖子総務相の事務所が、金融庁の調査対象会社の関係者を同席させたうえで、金融庁の担当者に説明させていた問題ものその一つだ。野田氏は、事実関係を認めたうえで、「金融庁に対しての圧力はない」などと釈明しているが、世間の多くはこれを色眼鏡で見ている。めっきりグレーなイメージが強い仮想通貨。それでも今後、われわれの生活から切っても切り離せないものになるかもしれない。この機会に税金とそれにまつわる問題に触れてみたい。

2018年1月に起こったCoincheck(コインチェック)による、仮想通貨NEM(ネム)の巨額流出事件をきっかけに、世間の仮想通貨に対するイメージは、よりダーティになった。テレビCMも自粛され、コインチェック事件以前16社あったみなし業者も、金融庁の監督強化で相次ぎ撤退、2018年7月27日現在3社まで減った。

金融庁はこの数年、仮想通貨の世界的な流れなどを注視しつつ、みなし業者をはじめ、関連業者を慎重に監督、法整備に進めてきた。こうした中、今回の野田氏の仮想通貨に絡んだ問題が取り沙汰されたもの。

きっかけは、東京都内の企画会社「BLACK STAR & Co.,社」(東京都千代田区)が昨年10月から独自の仮想通貨「SPINDLE」を販売していたことから、金融庁が今年1月、仮想通貨交換業を無登録で行う資金決済法違反の疑いがあると同社に通告、書面での回答を求めた。この通告の数日後、野田氏の事務所が金融庁に仮想通貨に関する説明を求めたとされ、報道によると、野田氏の秘書と企画会社の関係者が知り合いだったことから、野田氏がこの企画会社の仮想通貨交換業者としての登録において、便宜を図るように金融庁に圧力をかけたものとの憶測が飛んだ。

野田氏はこれに対して、同席は認めたものの、圧力はかけていないと説明している。

行政調査に対する国会議員側からの照会をめぐるは過去にもあり、行政調査への圧力と取られかねないとの批判が繰り返されてきた。「圧力」云々は、こればっかりは受け取る方の考え方ひとつ。なんとも言い難いものがある。

さて、仮想通貨に関しては、「通貨」と付くことから「お金」のイメージがあるが、資金決済に関する法律により不特定多数間での物品購入・サービス提供の決済・売買・交換に利用できる「財産的価値」と位置付けられた(資金決済2の5)。また、情報処理システムによって移転可能なものと定義されている。つまり、仮想通貨は、同じ決済手段の一つである法定通貨、いわゆる「お金」と法的性格を異にすることが明確とされたわけだ。

法的な位置付けなど、少しずつだが整いつつある仮想通貨だが、税制面においては2017年11月、国税庁は質疑応答の形で個人においては「雑所得」として確定申告することを示した。国税庁によると、2017年に仮想通貨投資で1億円以上の資産を築いた人は国内で331人。仮想通貨への投資で1億円以上の資産を築いた方を「億り人」と呼んでいるが、来年はこの「億り人」だけでなく、仮想通貨の確定申告者はさらに増えることが予想される。

公的年金等以外の雑所得額の計算方法は、「総収入金額-必要経費」で求める。仮想通貨取引では、1年に何度も取引を繰り返すことも多いが、利益が出ることもあれば、損失を出してしまうこともある。所得を計算するときは、これらの取引同士であれば、損益通算することが可能。つまり、利益50万円と損失20万円の取引があった場合、トータルで30万円の総収入額があったことになる。ただ、儲けよりも損失が大きくても、株式と違って損失の繰り越しができない。年をまたがってプラス分からマイナス分を相殺できないわけだ。前年にいくら損していても、今年儲けていれば課税される。

実際の仮想通貨取引シーンにおいては、複数回売買を行っている人が多い。その場合、売買するたびに所得を計算し、1年間(18年1月1日~12月31日まで)の合計を所得額として申告する。この合計所得額の計算方法には、「移動平均法」と「総平均法」とがある。移動平均法は、仮想通貨を購入するたびに購入額と残高を平均し所得を計算する。総平均法は、1年間の購入平均レートをベースに計算した総購入金額と、売却合計金額の差額(所得)を計算する方法だ。1度どちらかを選択すると、継続して使用するルールになっており、一概にどちらが得ということもない。仮想通貨交換所を通さずに交換した場合など、取得原価が不明場合も想定されるが、この場合は、保守的に0円と評価することになる。実際には滅多にないが、中には、仮想通貨間交換で、対円市場がないもがあり、円建価格の把握が困難なものもあるので、専門家でもなければ税務申告のハードルは高い。

なお、仮想通貨を円や商品に交換せず、ただ保有しているだけの場合は確定申告の必要はない。あくまで売買によって発生した利益に課税される。

雑所得は総合課税の対象なので、最後に給与所得などほかの収入と合算した額に応じて課税額が決まる。所得税は収入に応じて課税率が高くなる累進課税だから、最高税率は45%。多額の利益を得ていれば、所得税は最大45%、さらに住民税10%と合計して最大55%の税金を納税する必要がでてくる。

専門家でもなければ、交換の都度、その時点時価を把握し、取得原価を移動平均や総平均法で計算、実現損益、課税対象額を計算することは非常に困難だ。そもそも、仮想通貨はなぜ雑所得になるのかという根本的な問題もあるように思う。なぜなら、今回の見解は、あくまで国税庁でのであり法律の裏付けがない。租税法律主義であるわが国においては、国税庁の見解ではなく所得税法をベースに考えるのが自然だと思う。雑所得ならその議論の過程が見えないのもおかしな話だ。学者の間では、法律的に考えたら雑所得ではなく譲渡所得なのではないかとの意見も聞かれる。仮想通貨に関する税制は、まだスタートラインについたばかり。今後、専門家や実務家、行政との意見を交えながら、各国に先んじて法整備を進めてほしい。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は租税研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャーとしても活動。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
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