国税OB税理士が監修。公認会計士・税理士・会計事務所・企業経理担当、税金・会計に関わる“会計人”がいま必要な情報をお届けします!

会計人ニュース

注目キーワード

  • KaikeiZine
  • 税金・会計ニュース
  • 元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:基礎から分かる移転価格税制⑨ 移転価格課税を受けた場合の救済手段

元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:基礎から分かる移転価格税制⑨ 移転価格課税を受けた場合の救済手段

移転価格調査が行われ、税務当局による更正処分を受けた場合には二重課税が発生します。この二重課税を解消するには、どのような対応方法があるのでしょうか。

税務当局から移転価格課税を受けた場合、企業グループ全体としては同一の所得に対して二重に課税されるという二重課税が発生します。この二重課税を解消するためには、①租税条約に基づく相互協議を申し立てる方法と、②国内法上の救済手段(異議申立て、審査請求、訴訟)により課税処分の取り消しを求める方法とがあり、いずれを選択するかは納税者の判断となります。実務上は、相互協議を優先するケースが多いといえます。

(1)相互協議

相互協議とは、移転価格課税等により生じた国際的な二重課税を排除するため、納税者が租税条約に基づく相互協議を申立てた場合に、我が国の税務当局が相手国の税務当局と行う協議をいいます。

我が国で移転価格課税が行われた場合、日本親会社と海外子会社は、二重課税の排除を求めて、それぞれ日本の国税庁、外国税務当局に相互協議の申立てを行います。これを受けて日本の国税庁と外国税務当局は独立企業間価格の算定方法等について協議を行います。

相互協議において合意に達した場合には、合意内容に従って、日本の国税庁は合意金額まで所得金額を減額し、外国税務当局も合意金額だけ所得金額を減額し税金を還付します。こうしたプロセスを「対応的調整」と呼んでおり、これにより二重課税が解消します。図1は相互協議のプロセスを簡単に示したものです。

この相互協議の特徴としては、

  • 相互協議は、政府間での非公開協議であるため、原則として納税者が直接協議に参加することはできない。
  • 相互協議では、双方の当局が合意に達するよう努力することは求められていますが、合意に達する義務までは課されていないため、相互協議で必ず合意するという保証はない。

という点が挙げられます。

そのため、相互協議を行ったものの、合意に対しない(決裂)というケースもあり得ます。このような場合には、国内法に規定する救済手段により二重解消の解消を求めて争うこととなります。

 

 

図1:相互協議のプロセス(我が国で移転価格課税が行われた場合)

(2)国内法上の救済手段

税務署長に対する再調査の請求や国税不服審判所に対する審査請求、司法上の手続(訴訟)により課税処分の取り消しを求める方法です。これらの手段を通じて課税処分が全部取消しされれば、二重課税は解消します。

国内法上の救済手段を採るには、一定期間内に申請しなければならないため、相互協議を優先する場合であっても、必ず国内法上の救済手続きを採っておく必要があります。

相互協議が合意して納税者がその合意に同意すれば、国内法上の救済手段を取り下げ、相互協議が合意に至らなかった場合は、国内法上の救済手続きに移行することになります。

 

図2:移転価格の更正処分を受けた場合の救済手段

**********************
多田税理士への講演依頼・問い合わせは下記まで。
**********************

租税調査研究会事務局
tax@zeimusoudan.biz

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

ページ先頭へ