人気連載第12弾! 東京、ニューヨーク、香港と渡り歩いた税制コンサルタントMariaが、あらゆる国の税に関するエピソードをご紹介。今回は旅先のイタリアから、とってもイタリアらしい付加価値税の仕組みについて、ご説明します。
イタリア旅行に行ってきました~!
みなさんこんにちは! 税制コンサルタントのMariaです。ついこの間、イタリアに行ってきました。建物が美しく、人が優しく、ご飯がおいしい国・・・素敵すぎます!

イタリアではたったの7ユーロくらいで、写真のようにてんこ盛りのパスタが食べられます。しかも美味!! 興奮しっぱなしの筆者でした。さて、今回はそんなイタリアの付加価値税の仕組みについて、ご紹介したいと思います。
ヨーロッパ諸国の付加価値税
日本の消費税がOECD加盟国、特にヨーロッパ諸国と比べて低いのは、以前の記事でもふれてきました。OECDとは、日本語で“経済協力開発機構”、いわゆる“先進国クラブ”と呼ばれる国際機関です。
加盟国はアイスランド、アイルランド、イスラエル、イタリア、エストニア、オーストラリア、オーストリア、オランダ、カナダ、韓国、ギリシャ、チェコ、チリ、デンマーク、ドイツ、日本、ニュージーランド、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、メキシコ、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、イギリス、アメリカの36カ国。
なぜ筆者が付加価値税の税率をいつもOECD加盟国基準で比べるかというと、比較対象として同程度、経済的に発展している国を持ってきたいからです。OECD加盟国の付加価値税の税率の平均は約20%。ヨーロッパ諸国が平均を引き上げていて、そのほかの国(オーストラリア、日本、韓国等)が平均を引き下げています。
ヨーロッパ諸国の付加価値税が揃いにも揃って高いのは、EUの前身のひとつである欧州経済協力体(ECC)が発足した際に、加盟の条件として付加価値税を一定まで上げることが求められていたからです。ヨーロッパでは関税率をなくして付加価値税率を上げることが、共通の手段としてとられてきたのです。
その統一した政策のおかげで、ヨーロッパではどの国でも付加価値税率20%以上を保っています。その税収は社会保障、医療、教育などの財源となっているため、税率こそ高いですが、国民へのリターンがとても大きいのです。
ヨーロッパの大学や大学院を受験したことのある方は、授業料がEU市民と、EU市民でない個人とで大きく違うことに気づくかと思います。EU市民でない個人がEU内の大学等に進学しようとする場合、一般的に授業料はとても高く設定されています。これは高税率を負担してきたEU市民と、それを負担してこなかったEU市民でない個人とを区別しているためです。

とってもイタリアらしい、軽減税率の対象品目
さて、イタリアの付加価値税に話を戻しましょう。
イタリアの付加価値税もヨーロッパの例にならい、標準税率は22%です。日本の消費税が8%であることと比べるとだいぶ高く感じますが、ヨーロッパの中では平均的な税率です。
標準税率は22%ですが、食料品等の生活必需品については、軽減税率が設定されています。
(以前別の記事でイギリスの付加価値税を紹介した際に、軽減税率について説明しましたので、ぜひ読んでみてください!⇒「イギリスの付加価値税と日本の消費税、それぞれの軽減税率は?」)
イタリアの軽減税率には生活必需品等をはじめ、10%と4%の2つの税率があります。それぞれの対象となる品目がとってもイタリアらしいので、よく見てみてください。
まずは10%軽減税率から。以下の品目が対象となっています。
o 家畜
o 食肉
o ハム
o 建物
o 小麦粉
o コメ
o 薬
o 肥料
o 観葉植物
o 果物
o 鮮魚
o 映画
o 卵
o 酢
o 砂糖
生活必需品である食料品以外に、薬も対象となっている点は安心ですね。さらに観葉植物も対象となっていることを見ると、花のある生活はイタリア人にとって欠かせないものなのでしょうか。映画が軽減税率の対象となっている点もユニークです。

さて、次に4%軽減税率を見てみましょう。標準税率22%と比べると、5分の1以下と大変低く設定されています。
4%軽減税率は、以下のの品目が対象となっています。
o 紅茶
o 医療補助器具
o 生鮮野菜
o 牛乳
o マーガリン
o チーズ
o バター
o 書籍
o 新聞
o オリーブ油
o パン
o パスタ
パンやバター、牛乳といった基本的な食料品だけでなく、“パスタ”“オリーブ油”“紅茶”という細かな設定があります。これらの食料品は10%軽減税率でなく、さらに低い4%軽減税率の対象となっているのです。私たちの思い描くイタリアを代表する食品は、付加価値税の観点からイタリア国内で優遇(保護政策)を受けていることが分かります。
イタリアの軽減税率から日本が学べること

日本の消費税が10%に上がる際、同時に8%の軽減税率が導入されます。日本が導入しようとしている軽減税率は細かな定めがなく、大まかな“食料品”すべてに対して適用されます(アルコール、外食等は除く)。つまり、高級スーパーで買う食用金粉やキャビアといった食材も軽減税率の対象となってしまうのです。これには違和感を覚えざるを得ません。
イタリアのように食品ごとの細かな設定をすると、どの食材が生活必需品なのかという政府の見解が見えやすくなりますね。日本もヨーロッパの軽減税率の仕組みから、何か学べることがあるかもしれません。