今、税理士・会計士・簿記検定試験の合格を目指す受験生のための月刊誌「会計人コース」で「ゆるっと開業DIARY」というコラムを連載しています。そこで、改めて私が開業するまでのあれこれをまとめてみたいと思います。

第10回「税理士としての転機。そして、開業」でも少し触れましたが、もともと開業の意志は全くありませんでした。勤務していた税理士法人でいろいろな仕事を任されるような立場になろうと思っていたのです。でも、縁あってベンチャー企業へ転職、その後激務から逃げるように辞めてしまい、失業手当をもらいながら家で少しのんびりしました。当時、子どもたちは中1と小3。もう自分のことは自分でできるし、親がつきっきりでそばにいなくてもいい年ごろですが、それまでずっと昼間から繁忙期は夜もいなかった母親が急に家にいるようになって、2人ともちょっとハイテンションでうれしそうでした。そんな姿を見て、「どこかに就職するんじゃなくて、自宅で開業してみようかなぁ」と思ったのが、開業のきっかけでした。

とは言え、顧問先のあてもありません。何からどう始めて事業を進めていくのか、何も決めないまま、失業手当の給付が終わったのが4月半ば。そのままなんとなく「5月1日」を開業日にしようと決め、国税庁のホームページからダウンロードした「開業届」に記入して税務署へ提出しました。

さぁ、「脇田弥輝税理士事務所」開業です。

まだ収入の見込みがなかったので、とりあえず「なるべく支出は抑えておこう」「仕事が増えてきたら少しずつお金をかけていくようにしよう」と考えました。当時自宅で使っていたパソコンはMacだったので、会計ソフトを使うためにWindowsのパソコンを買って、デュアルディスプレイとテンキーとマウスも揃えました。自宅には、元々次男が宿題をするときなどに使っていた作り付けの机があったので、そのスペースを改良した一角を事務所にしました(次男は今ではダイニングで勉強しています)。ボックスを買ったり、突っ張り棒で棚を作ったりと、楽しかったです。名刺と封筒はインターネットで作成しました。ハンコは丸印がいいのか角印がいいのか、両方がいいのか、先輩税理士の方々に聞いてみて、結局丸印だけ作りました。「脇田弥輝税理士事務所」という屋号つきの通帳も作ろうかなと思いましたが、もともと銀行口座を2つ持っていたので、そのうちの1つを事業用にしました。事業用の口座ではプライベートのものは使わないようにすれば、何の問題も不便もありません。

事務所の一角。

次に会計ソフト。有名で安いと聞いていた会計ソフトにしようかなーと、特に深く考えずに決めかけていたある日、ママ士業のランチ会で、隣に座った税理士が、「私が使っているソフトもいいよ~」と教えてくれました。そこは勝手に高いと思い込んでたところで、説明すら聞いたことがなかったのですが、実は意外に安価と知り、その税理士のご紹介で、そのソフト会社の方にお会いしました。直近では、8月に申告する顧問先(友人が作った会社)が1件あったので、その前の6月ごろに契約しました。半年間無料にしてくれたので、その年の経費はほとんどかからずに済みました。

プリンターは自宅で使っていたごく普通のプリンターを使っていたので、印刷やコピーにいちいち時間がかかりましたが、顧問先が少なかったのでのんびり印刷していました(笑)。(ちなみに今は、スペックのいいものに買い換えました。)顧問先が数件に増えてきたころ、それまでは顧問料は毎月お振込みいただいていたのですが、お客様の手間や手数料のこと、自分が請求書を出す手間などを考えて、口座振替制度を使い始めました。これも仲の良い先輩税理士に紹介していただいて決めました。この制度を使うと手数料が差し引かれますが、スムーズにお金を回収できます。単発のご依頼や、その他請求書を欲しいという先には、請求書をお出ししていますが、それは月5件まで無料というクラウドサービスを使って作成しています。請求金額を入力すると、消費税と源泉所得税を自動で計算してくれるので重宝しています。

事務所のホームページは、集客のためというより、知人が私のことを紹介したときに、「私を検索してホームページがないと不安かなぁ」と思い、開業して1年後くらいに、ワードプレスで作ってみました。4万円弱のワードプレスのセミナーに参加して、みっちり3時間教えてもらいながら作りました。続きは家で試行錯誤しながらなんとか作ってみましたが、素人っぽさ満載です・・・。それでもこれまでに何件か、ホームページのお問い合わせフォームからご連絡をいただきました。つい更新が滞ってしまいがちなので、放置しないように気を付けたいと思います。

「ゆるっと開業」という通り、最初からいろいろ揃えてバッチリ開業!というわけではありませんでしたが、それでも仕事の対応はできるし、大切なのはハード面よりソフト面だと思っています。とは言え、これからも必要に応じて快適な事務所になるよう、少しずつ揃えていこうと思っています。