グループ内の事業再編にかかる税金を巡り、インターネット検索大手のヤフーと国税当局の争いは、国税当局の圧勝で決着した。最高裁第1小法廷(山浦善樹裁判長)は2月29日、ヤフーの上告を棄却。課税を適法とした一、二審判決が確定した。ヤフーは国税局から合併をめぐり、法人税など約178億円を追徴課税されたのは違法として国を訴えていた。
インターネット検索大手のヤフーが、子会社買収をめぐり法人税など約180億円を追徴課税されたことを不服として課税処分の取り消しを求めて争っていた裁判の上告審で、最高裁第1小法廷(山浦善樹裁判長)は2月29日、ヤフー側の上告を棄却。「企業再編税制を利用した租税回避目的の買収で、法人税を不当に減少させた」とする国税局側の主張を認めた一審、二審判決が確定した。
ヤフーは2009年2月、データセンター運営会社「ソフトバンクIDCソリューションズ」(IDCS社)を親会社で通信大手のソフトバンクから買収し、翌月に合併。IDCS社が抱えていた約540億円の赤字を自社の利益と相殺することで、法人税負担を軽減させた。
企業再編税制では、グループ内合併や共同事業を営むための合併時に赤字の引き継ぎを認めているが、租税回避目的の合併を防止するため、特定資本関係が発生して5年以内の合併の場合は、役員引き継ぎ要件などの「みなし共同事業要件」を満たしていることを条件としている。ヤフーは社長のIDCS社副社長就任によってこの要件を満たしていた。
しかし国税当局はヤフーのこの人事が「租税回避目的だった」として赤字の引き継ぎを否認。追徴課税を不服としたヤフーが課税処分の取り消しを求めて争っていたもの。
第1小法廷は判決理由の中で、企業の組織再編を利用した「租税回避」の判断基準について、「通常は想定されない方法や、実態とかけ離れた形の再編であるなど、不自然なものか、合理的な理由があるかなどを考慮して判断すべき」と初めての判断を示した。その上でヤフーが組織再編の中で行った一連の行為について「明らかに不自然で、税負担の減少を目的として税制を乱用した」とした。
今回のヤフー事件は、租税回避の包括否認規定である法人税法132条の2(組織再編にかかる行為計算の否認)の適用の是非が争われた初の裁判である。同じ包括否認規定である法人税法132条(同族会社の行為計算の否認)の適用の是非が争われたIBM事件では国側の敗訴が確定しており、明暗が分かれる形となった。2つの事件の「違い」は何だったのか。次回検証する。
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