セルフメディケーション税制と「予防」

もっとも、平成28年度税制改正によって、いわゆる「セルフメディケーション税制」が導入されており、予防的な意味での医療費控除が許容されることになったとみることもできそうです(▶本連載「自助を誘因するための公助の取組み・セルフメディケーション」参照)。

しかしながら、かかる改正は、本来の医療費控除の考え方に修正を加えたものとみるべきではなく、特定の要件を充足したものについてのみ医療費控除の特例を設けたもの(措法41の17の2)にすぎないと捉えるべきかと思われます(平成29年1月1日以降に購入したスイッチOTC医薬品(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)の購入費用のみが対象とされています。)。

そもそも、セルフメディケーション税制の対象はスイッチOTC医薬品に限られていますから、そこにマスク等は含まれておらず、同控除の対象となると解することはできません(▶セルフメディケーション税制については、酒井克彦「所得税法上の所得控除にみる予防法学的変容-セルフメディケーションに関する医療費控除を中心として-」中央ロー・ジャーナル13巻1号21頁(2016)も参照)。

そうであるとすると、マスクや除菌剤は医療費控除の対象とはならないのでしょうか。

所得税基本通達の考え方とマスク

そこで、所得税基本通達73-3《控除の対象となる医療費の範囲》をみてみましょう。

同通達は、「次に掲げるもののように、医師、歯科医師、令第207条第4号《医療費の範囲》に規定する施術者又は同条第6号に規定する助産師…による診療、治療、施術又は分べんの介助…を受けるため直接必要な費用は、医療費に含まれるものとする。」として、次を掲げます。

自己の日常最低限の用をたすために供される義手、義足、松葉づえ、補聴器、義歯等の購入のための費用

ここで注意が必要なのは、「松葉づえ」や「補聴器」、「義歯」といったものの購入費用がそのままダイレクトに医療費控除の対象となるとしているのではなく、それらが、医師等の診療等を受けるため直接必要な費用であるとすれば、同控除の対象となるとされているという点です。

除菌剤をこのロジックで解釈して医療費控除の対象とすることは困難であるように思われますが、マスクやフェイスガードといったものはどうでしょうか。診療又は治療のために病院に行くのにマスク類は必須です。そのように考えると、医療費控除の対象となる医薬品とはいえないものの、医療費控除の対象となる医師等の診療等を受けるため直接必要な費用であるといえはしないでしょうか。

もっとも、日本においてはマスクをつけるのは日常的な行為であって、医師等の診療等を受けるためのみにマスクをつけているわけではありません。そうすると、マスクを医療費控除の対象と解するためには、その線引きについて、もう一つのハードルが待っているともいえるでしょう。


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