新型コロナウイルスの影響で業績が悪化した企業に対して、従業員の雇用維持のための人件費を助成する「雇用調整助成金」が、5月20日から20人以下の小規模企業を対象に申請手続きが簡便になった。ただ一方で同日から開始が決まっていたオンライン申請に関しては、システム障害により稼働が延期されている。

厚生労働省の「雇用調整助成金」は、今回のコロナ禍の影響により「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例」が設けられ、利用する企業などが一気に増えた。当ニュースサイトでも、「新型コロナ対応で拡充「雇用調整助成金」の申請方法」で詳細を紹介したが、一方で申請方法が煩雑で、申請から決定まで時間が掛かると評判があまり良くなかった。

ちなみに、5月18日までの申請件数は2万4797件に上るが、支給が決定したのは、約半分の1万2201件。15日までの総支給額は約40億円となっている。

そもそも、同助成金は、雇用保険法等を根拠に、労働者の失業防止のために事業主に対して給付する助成金の一つ。日本は世界的に見ても特に解雇が難しい国であり、景気が悪くなったからといって従業員を簡単に解雇できない。しかし不況期に無理に雇用を維持すれば、企業全体の業績にも響くため、企業は事業活動の縮小期には残業規制や配置転換等により雇用調整を行う。こうした措置のうち、働く意思と能力のある従業員の休業、スキルアップのための教育訓練、または他の事業所への出向に関しては、同助成金の支給を申請することで、雇用維持を行うための経済的支援を国から受けることができる制度として設けられた助成金だ。

そのため、通常時は計画的に実行されることが一般的で、今回のような新型コロナウイルス感染拡大防止対策のような緊急時を想定していなかった。通常時でも申請から支給決定まで最低でも約2カ月かかる制度だけに、今回の特例で都道府県労働局や公共職業安定所(ハローワーク)の現場は、さらに対応に時間と労力が足りない状況になっている。

こうしたなか、加藤厚労働大臣は5月19日、会見で「雇用調整助成金」の申請について、小規模な企業に対しては、申請手続きの書類を簡略化すると発表した。具体的には、雇用保険被保険者の「休業等実施計画(変更)届<様式第1号(1)>と、雇用保険被保険者以外の「休業計画届<様式第1号(1)>」を5月19日から提出不要とするもの。ただ、これら書類が提出不要になっても、まだまだ申請書類は多いのが現実。せめて、コロナ禍における特定適用においては、もっと簡便化して、申請から決定までの時間を短縮してほしいとの声は少なくない。

ちなみに、加藤厚労大臣は、5月19日の会見で、翌日の20日から同助成金のオンライン申請をはじめると、申請手続きの簡便化をアピールしたものの、20日の開始直後から、オンラインシステムの申請で、申請した人の個人情報とみられる名前や電話番号などがほかの申請者に見られる状態になっていたことが分かり、厚労省は受け付けを中止した。「現状復旧のめどは立っていない」としており、なんとも頼りのないスタートになってしまった。

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