・・・今回の具体的な松本市のテレワーク事業モデルについて教えてください。
坂本 松本市と松本商工会議所が連携した実証実験ですが、在宅ワーカーとクラウドを活用した新たな会計処理スキームを、具体的にビジネスとして進めたのが、スマイルワークスです。当社が2016年2月末までの実証実験中、松本市内にサテライトオフィスを開設。本社から社員を移住させるとともに、会計業務や給与計算業務のクラウドシステム「ClearWorks」を活用し、地元の在宅ワーカーに向けて、伝票入力などの会計業務や給与計算業務を、クラウドベースで行う仕事を提供しました。
<会計代行業務の流れ>

伊嶋 もうひとつの事業であるシステム開発については、富士通の100%子会社であり、民需市場向けのICT機器販社として展開する富士通マーケティングが、首都圏で受託したクラウド開発案件を、松本市に在住するSE経験者に発注。テレワークによって開発する新たな仕事のスタイルを創出する実証実験を行いました。

他の都市でも十分に事業化の可能性アリ
・・・経理の入力代行業務をワーカーに提供していく上で、教育などのシステムはどのように行ったのですか。

坂本 在宅ワーカーの皆様に対して、スマイルワークの松本サテライトオフィスが、クラウドワーキングを円滑に開始しできるようにサポートなどを行いました。具体的には、クラウド型統合業務システム「ClearWorks」やクラウド型ストレージ「SecureFolder」などの設定方法や操作方法の教育研修を行うと同時に、実際のお客様の帳票から会計処理や給与計算処理などを行って頂き、業務処理の精度などを高めて頂きました。
この研修の過程で、在宅ワーカーさんの各々の適正、例えば難しい会計処理はできないが短時間で沢山の仕訳登録ができる方もいれば、逆に処理スピードは速くないが難しい会計処理を行うことができる方、などを見極めながら、実際の担当業務の割り当てなどを進めました。
・・・松本市での事業モデルを、他の地方都市でも展開する可能性はありますか。
坂本 松本モデルをベースにしっかり整理してゆく必要がありますが、他でも十分成功するものと強く実感しています。私は当社を設立する前、会計ソフトを開発・販売する企業に勤めていましたが、IT・ネットワーク環境の変化と会計ソフトの発展により、経理などの入力作業ニーズは、全国的に高まっていると感じています。従来この業務は、主に会計事務所が担ってきましたが、価格競争が激しくなり、費用対効果が合わなくなってきました。
会計事務所業界においては、最近は記帳業務を主体とした業務代行はますます低価格化していますが、一方で今回のように記帳入力業務そのものは外部に委託し、その分自身や職員は高度なコンサルティング業務に主軸を移していく会計事務所も増えてきました。
今回の松本での取り組みは、こうした会計事務所業界の課題をクラウドとテレワークの活用で強力にバックアップできるものと確認しています。
・・・連携していくことで双方にメリットがあるわけですね。
坂本 「クラウド」「テレワーク」という新たなビジネススタイルが定着すると、会計事務所は手間のかかる入力作業から開放され、付加価値の高いサービスをクライアントに提供していくことに専念できます。松本市の実証実験事業が他の市域でも実施される意味は大きく、地方の雇用創出、活性化をはじめ、サービスを受ける企業及び会計事務所にとっても、非常にメリットのあるビジネスになると確信しています。
<鼎談者プロフィール>

株式会社ノークリサーチ
伊嶋謙二 代表取締役社長
大手市場調査会社を経て、1998年にノークリサーチを設立。 IT市場に特化した調査、コンサルティングを展開。特に中堅 ・中小企業市場の調査・分析を得意としている。主に民間IT企業のリサーチ、コンサルティングを行う。
また経済産業省、総務省などの公共事業や商工会議所やIPA、ITCAなどの団体の委員やアドバイザーとしても参画している。

株式会社ノークリサーチ
木村知司 研究員
ノークリサーチ研究員。「創生する未来」事業を立ち上げて、地方創生に寄与する活動も行っている。地域で実施する実証事業やセミナー・イベントなどの企画を立案し、IT ベンダーへの働きかけで地域の販売店、ユーザー企業に参加を募り、それにともなう広報、プロモーション活動でメディアとのタイアップを行っている。

株式会社スマイルワークス
坂本恒之 代表取締役社長
2003年にスマイルワークスを設立。会計・販売管理・給与計算・マイナンバーを統合的に管理するクラウド型ERMシステム「ClearWorks」をリリースし、クラウド活用による中小企業の生産性向上を支援。ITを活用した事業開発・マーケティング施策のエキスパートとして各方面から信頼を得ている。日本商工会議所IT経営アドバイザー。