(3)年収1千万円世帯の平均的な支出

公認会計士の支出をまとめたデータは見当たらないため、ここでは年収1,000万円世帯の平均的な支出を見てみます。

総務省の家計調査年報(家計収支編)平成29年(2017年)によると、年収923万円以上の世帯(二人以上かつ勤労者世帯)における毎月の平均収入は86万3,267円、平均支出は63万3,380円となっています(税金、社会保険等を含む)(※4)。これを年間にすると、収入は1,036万円、支出は760万円となります。

ただし総務省の統計では持ち家にかかる住宅ローン返済は対象外となっており、住居費用は2万2,122円に留まっています。年収923万円以上世帯における持ち家率は87.4%となっていることから、実際の支出を見る上ではローン返済を加味する必要があると思われます(※5)。

株式会社オープンハウスの「関東版:世帯年収1,000万円編」によると、年収1,000万円以上の場合、住宅ローンの借入額は4,501万円~6,000万円 で38.7%を占めています(※6)。仮に借入額5,000万円、35年間元利均等返済、全期間固定金利2.62%とした場合の返済額は、毎月18万1,979円となります。先ほどの総務省統計データにこれを加味すると、毎月の支出は81万5,359円、年間で978万4,308円となります(※7)。

(4) 高収入=高貯蓄ではない

会計士の平均収入及び年収1千万円以上世帯の平均支出をもとにすると、平均的な年間貯蓄額は1,018万円-978万円=40万円と計算されます。

年収1,000万円以上の世帯で年間貯蓄が40万円程度であることをどう見るか。意見が分かれるところではないでしょうか。職場へのアクセスのよい街に住み、教育費も多くかけるのであればこんなものかもしれません。一方、より収入が少ない世帯にとっては遣いすぎに映るかもしれません。

とは言え、上記の計算をある程度正確と考えるのであれば、高収入すなわち貯蓄が多い訳ではないことが分かります。FIREを目指すのであれば、高収入世帯であっても、周りと同じような生活をしていては相当厳しいのではないでしょうか。仮に1億円を目標とした場合、年間40万円の貯蓄では250年必要となり、早期退職どころではありません。

 

以上、公認会計士の平均的な収入及び年収1,000万円以上世帯の平均支出をもとにFIREの実現可能性を考えると、何かしらの対応が必要になると考えられます。

 

「FIREと公認会計士4.公認会計士からみるFIREの実現可能性(後)」に続きます。

 

【参考・出典】

※1 「公認会計士の年収は本当に高いのか。年収でみる、公認会計士を目指す価値」,資格の学校TAC,

https://www.tac-school.co.jp/kouza_kaikei/kaikei_cpa/kaikei_contents_annual_income.html

※2 「平成30年分民間給与実態統計調査結果について」,国税庁,

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/minkan/index.htm

※3 「2019 年労働時間等実態調査集計結果」, 一般社団法人 日本経済団体連合会,

https://www.keidanren.or.jp/policy/2019/076.pdf

※4 「家計調査年報(家計収支編)平成29年」,総務省統計局,

https://www.stat.go.jp/data/kakei/2017np/index.html

※5 住居費については、持ち家率が9割弱となっており賃貸住まいの世帯を考慮すると実際はもう少し下がると想定される。ただし、ここでは正確なシミュレーションは目的としておらず、当該数値を用いた。

※6 「関東版:世帯年収1,000万円編」,株式会社オープンハウス,

https://oh.openhouse-group.com/contents/data/1000/1000.html

※7 毎月の平均支出63万3,380円+ローン返済額18万1,979円=81万5,359円(年間978万4,308円)


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