必要とされる会計・税務の専門家
時代のニーズに応えるかたちで拡大を続ける訪問看護事業だが、その裏では課題もある。厚生労働省の報告では、看護職員5人未満の訪問看護ステーションが全体の約6割を占め、小規模事務所ほど効率の悪さやスタッフ負担が問題となり、収益状況が極めて良くないとしている。また、これまで利益よりもケアを重視してきた現場で、時間管理やコスト管理といった管理会計の概念がほとんどない。そのため、質の高いサービスを、より効率的に提供する体制作りが急がれている。
収益の出ていない訪問看護ステーションを見ると、1日1人当たり4件以下の訪問しかしていない事業所も多く、それが当たり前となっていることすらあるという。現在訪問看護の収入相場は30分~1時間の訪問で加算等も含めて1万円前後。効率を高め1人当たりの訪問件数を増やしていかなければ、利益を拡大していくことは難しい。さらに訪問看護ではすべてのサービスが介護保険、医療保険によって定められ、時間ごとに報酬が固定されているため、企業努力の余地は限定的だ。今後、訪問看護が主流になり、競争がさらに激化してくれば、当然、時間管理とコスト管理は重要度を増す。ありとあらゆる業務を手順化してより効率を上げるためにも、管理会計や財務会計の知識は不可欠になってくる。
上村氏はスピードにこだわった訪問看護を重視し、時間管理を徹底する方針を支援にも反映している。同社は現在、行動観察などの手法により、看護師の業務のさらなる効率化を目指している。
1件の訪問にかける時間の短縮や質の向上、効率的な経営基盤の構築に向け、経営者だけでなく、現場の看護師も管理会計を理解してもらうように教育支援を行う。インキュベクスでは、週2回の研修を通して管理会計の基礎を教えている。同社の支援事例の中には、たった1年で10拠点にまで規模を拡大した経営者もいたという。こうした事業者は、より専門的な会計や税務の知識が必要になり、税理士や公認会計士などの専門家のサポートが必要になってくる。
また、訪問看護を通じて、利用者の相続や財産に関するお金の相談ニーズも見込める。身近に相談できるネットワークがあれば、訪問看護がさらに価値あるものになる。前出の上村氏は、今後の訪問看護事業として、「高齢者が抱える生活の悩みすべてに対応できるようなビジネスモデルが不可欠」と語る。会計事務所にとってはまだ手付かずの市場。とはいうものの、訪問看護事業者からの支援ニーズは高い。新規顧客として注目される業界だ。




