告発分を業種・取引でみると、「建設業」(15者)、「不動産業」(12者)、「クラブ・バー」(7者)がワースト3で、この3業種が3年間にわたり順位変動はあるものの、ワースト3を占めており、さらにこの10年間でみると、建設業は8回、不動産業は6回もワースト3に入っている常連だ。ワースト3の脱税の手段・方法としては、建設業や不動産業が「架空の経費を計上」、クラブ・バーでは「ホステス報酬に係る源泉所得税を徴収していたにもかかわらず納付していなかった」ケースが多かった。(「告発の多かった業種」表参照)
また、国税当局では、好況業種や大口・悪質な不正の多い業種は勿論のこと、時代背景を考慮に入れた対象(業種)選定もしており、27年度は携帯電話の部品等を扱う「機械器具卸」が6者入っているほか、事業活動自体に違法または不当な行為が含まれるとして社会問題化した、新規会員を勧誘して多額の手数料を得る「マルチ商法」、運用実態がないにもかかわらず投資の名目で出資金を募り多額の現金を騙し取る「投資詐欺」なども積極的に実態解明にあたり告発に至っている。なお、気になるのが、ここしばらく大人しかった脱税を持ち掛け成功報酬を得る「脱税請負人」事案が把握されており、国税当局でも今後の動向に注意を払っているようだ。

国際化・ICT化には専門部署の調査支援等で対処
査察調査に関しても、一般の税務調査同様に、経済取引の広域化や国際化、複雑化に加えて、ICT化により不正が一層巧妙となったことから、国税当局では新たな調査手法の開発や専門部署の設置を図っている。国際化への対応としては、国際取引の実態を把握するため、東京国税局や大阪国税局に設置している、査察国際課などの専門部署による調査支援及び租税条約等に基づく外国税務当局との情報交換制度を積極的に活用して的確に対応するほか、査察官を海外の税務当局に派遣して、直接情報提供を要請するなどを行っていて、27年度も情報提供を得て相手国へ持ち込んだ使途や金額を把握した事例も含め、国際取引関連で28件を告発した。ICT化への対応としても、東京国税局や大阪国税局に設置している査察開発課などによる調査支援やデジタルフォレンジック用機材を活用した電子機器などの電磁的記録の証拠保全・解析及びデータの復元・解析を行い、不正取引の全容解明を図っている。
また、平成23年度税制改正で創設された、輸出取引を装って国内における架空の課税仕入とこれに見合う架空の輸出免税売上を計上する方法で、不正に還付を受けていた(又は受けようとしていた)ものに適用する「消費税受還付未遂犯」で4件、多額の利益がありながら、故意に税を免れようとして法定申告期限までに申告書を提出しなかったものに適用する「単純無申告ほ脱犯」で1件告発している。
脱税によって得た不正資金の留保状況を見ると、現金・預貯金、有価証券のほか、土地の購入、投資信託やFX取引等の投資に充てたり、ギャンブルなどの遊興費、愛人に対する資金援助など多種多様で、不正資金でさらに儲けようとする者も少なくない。また、その隠匿場所では、親族名義の貸金庫、ランクルームなどのほか、居宅のクローゼット内のボストンバッグ及びキャリーバッグに約2億円の現金を隠していたケース、居宅階段下の物置に積まれた段ボール箱に現金約1億円を隠していたケースなどが把握されている。
告発・起訴された事件の100%で有罪判決
27年度に告発・起訴された事件で一審判決が下されたのは133件あるが、その全てに有罪判決が出され、2人に実刑判決(1人が査察事件単独に係るもので懲役2年、もう1人が滞納処分免脱罪と併合されたもので懲役6年)が下されており、1件当たりの平均では犯則税額は6400 万円、懲役月数は15.2月、罰金額は1500万円となっている。




