2.業務費用
(1)業務費用推移

業務収入の増加と足並みを揃えるように、業務費用も増加している様子が窺えます。ここ5年間、業務収入に占める業務費用の割合は97.6%(2017年度)~99.8%(2019年度)と、概ね一定の割合で推移しています。
トーマツは、業務費用を「人件費」「人材開発費用」「ファシリティ費用」「情報システム及び通信費」「その他業務費用」の5つに分類していますが、そのうち「人件費」は業務費用の7割を超える最大のコストとなっています。次に「人件費」の推移を見てみます。
(2) 人件費推移

こちらも、業務収入、業務費用のグラフとほぼ同じ形となっており、労働集約的な監査法人のビジネスモデルをよく表しているように思えます。人件費の増加理由を紐解くため、人員数と1人当たりの単価に分けてみてみます。
(3) 人員数推移

概ね増加傾向にあるものの、2020年度は100人近い減少となっています。2016年度と比べると250人程度増えてはいるものの、増加幅は+4%程度となっており、15%増加している人件費に比べると、割合としては小さなものとなっています。
(4) 1人当たり報酬給与・賞与推移

1人当たり報酬給与・賞与は900万円前後で推移しており、大きな変動は見られません。ただし、有資格者に比べると報酬水準が低いと想定される監査補助職員及び事務職員が増加している状況を踏まえると(2016年度2,103人→2020年度2,337人)、公認会計士等に対する1人当たり報酬給与・賞与は多少増加していると推測されます。
報酬給与・賞与以外の人件費を見てみると、業務委託費が大きく増加しているのが目立ちます(2016年度26億円→2020年度62億円)。監査法人の人手不足はしばしば耳にしますが、この辺りに表れているかもしれません。
(5) その他の業務費用
項目別の業務費用推移を見てみます。

人件費以外では情報システム及び通信費、その他業務費用が増加しています。それぞれ主要な項目を見てみます。
①情報システム及び通信費

IT業務分担金(2017年度以前はシステム関連分担金)が、2019年度29億円、2020年度44億円となっています。2019年度以降は科目名変更に加え、グループ分担金(後述)からの振替による増加もあるようですが、2018年度のシステム関連分担金11億円から急増しています。
②その他業務費用

その他業務費用の半分以上を占めるのがグループ分担金です。2020年度の計上額は2016年度と比べると概ね2倍となっており、IT業務分担金への振替があった2019年度においても26億円の増加となっています。2020年度において100億円を超える費目はグループ分担金と報酬給与のみであり、かなり大きな負担となっている様子がうかがえます。
なお「業務及び財産の状況に関する説明書類」には、グループ分担金、IT業務分担金の詳細な内容は記載されていないようです。名称からは日本のデロイトトーマツグループ各社で負担している費用なのでしょうが、何に対する費用負担なのか、はっきりしません。可能性としてはグローバル提携関係にあるDeloitte に対する各種の費用が含まれているようにも思われます。
業務費用についてまとめると、監査補助者等を中心とした人員増と業務委託の増加に加え、グループ分担金とIT業務分担金が収入の増加幅を上回るペースで増加し、後述のように営業利益率は低下傾向にあります。2021年度はコロナの影響が本格化し、また今後も人手不足による人件費増加や監査のIT化へ向けた投資等、様々なコスト増が見込まれる中、業界首位のトーマツがどう対応するのか注目が集まります。



