2.業務費用
(1)業務費用推移

業務収入の同様のトレンドになっており、2018年度を底として増加傾向にあります。2017年度以降、急ピッチで人員削減や事務所の統廃合を進め、組織をスリム化したことが現れています。
続いて業務費用の7割を占める人件費を見てみます。
(2) 人件費推移

EY新日本の「業務及び財産の状況に関する説明書類」では2016~2018年度と2019年度以降で科目の組替が行われており、人件費として単純比較ができないことから、ここでは「報酬給与」「賞与」に絞って推移を見てみます。
2017年度以降、構造改革を行い人員の削減を進めたことで、業務費用の半分以上を占める報酬給与と賞与は大きな減少を見せており、特に2016年度から2018年度にかけては15%以上減少しています。
人件費のトレンドを紐解くため、人員数と1人当たりの単価に分けてみてみます。
(3) 人員数推移

2016~2018年度にかけて、総人員数は△699人と10%以上減少しています。パートナーに限定しても△87人(627人→540人)であり、率にすると約14%の減少です。2017-2018年にかけての構造改革により、構成員では10人に1人、パートナーでは7人に1人がEY新日本を後にしたことになり、かなり大規模なリストラだったことがうかがえます。
(4) 一人当たり報酬賞与推移

2016年度は東芝問題への対応もあったのか報酬は高い水準でしたが、その後2年間は1百万円程度ダウンしています。そして業務収入の回復と歩調を合わせるように、2019年度以降、再び以前の水準に戻っています。
以上から、2017~2018年度にかけてコストの高いパートナーを中心にリストラを進め、人員数の削減と合わせて人件費単価を抑えることで収入の落ち込みに対応し、その後、業績の回復に伴い単価は上げつつも人員数は抑制することで、人件費はスリム化された様子がうかがえます。
数字を見ると、改めてEY新日本の構成員は、2017~2018年度にかけてリストラに加えてサラリー、ボーナスも減少するというかなり苦しい状況に置かれていたのではないかと想定されます。2019年度以降は人員数、1人当たりの報酬等も落ち着いているように見えるものの、業界として人手不足という話も聞こえてきますが、実際はどうなのでしょう。
(5) その他
項目別の業務費用推移を見てみます。

* 2016,2017年については、以下の区分により附属明細書より集計
人件費:報酬給与、賞与、退職給付費用、社員退職引当繰入、法定福利費、福利厚生費、支払報酬
施設関連費用:賃借料、減価償却費
その他業務費用:業務委託費、旅費交通費、諸会費、通信費、損害保険料、消耗品費、租税公課、貸倒引当繰入、その他
2016,2017年度は上記の通り科目組替により、それ以降の期と同条件での比較ができないため、以下では2018年度以降に限定してみていきます。
業務費用全体を眺めると、人件費については報酬給与及び賞与のトレンドと同様であり、IT及び通信費も増加しています。これは他法人同様、AIやDXへの対応のためのコストアップなどが想定されます。一方、施設関連費用は低下傾向にあり、構造改革によるスリム化の影響がうかがえます。
その他業務費用について内訳を見てみると、半分を占めるのが業務委託費であり、2018年度118億円に対して2020年度132億円と14億円増加しています。前述の通り監査法人業界では人手不足という話を聞きますが、業務委託でカバーしている部分があるかもしれません。その他、旅費交通費が2018年度32億円から2020年度22億円に減少していますが、こちらはコロナの影響でしょうか。
業務費用についてまとめると、構造改革により人件費と施設関連費用を抑制しつつ、人手が足りない部分は外部への業務委託を活用し、IT及び通信費等のコストアップにも対応しながらなんとか利益を確保していると言えます。
なお「業務及び財産の状況に関する説明書類」には、提携するEYへの費用は明示されていないようです。2020年度の附属明細書を見ると諸会費が80億円程度計上されており、トーマツ(業務会費11億円)、あずさ(諸会費12億円)に比べるとかなり大きな金額になっているのですが、ここに含まれているのかはっきりとはしません。



