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「住宅ローン控除」の適用を認めず 仲介手数料のみでは消費税負担のない取得と判断【所得税/請求棄却】元国税審判官が解説 公表裁決から学ぶ税務判断のポイント(第18回)

3.請求人の主張

次の(1)及び(2)のことから、本件仲介手数料は措置法第41条第5項に規定する住宅の取得等に係る「費用の額」に含まれるので、本件取得は同項に規定する特定取得に該当する。

(1)措置法第41条第5項に規定する「住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額」については定義がなく、同条第13項は、増改築等の定義を規定しているだけで「費用の額」を規定しておらず、特定取得における「費用の額」は限定されたものではなく、税制改正の解説書においても同条第5項に規定する「費用の額」に仲介手数料を含まない旨の記載はないから、本件仲介手数料は同項の「費用の額」に含まれ、本件取得は特定取得に該当する。

(2)所得税法第38条の規定によれば、仲介手数料が資産の取得に当たり直接要した費用であることは明らかであり、既存住宅の取得の費用の額に新消費税率による消費税額等に相当する額が含まれている場合、当該既存住宅の取得は特定取得に該当するとし、本件住宅の取得の費用である本件仲介手数料には新消費税率による消費税額等が含まれるから、本件取得は特定取得に該当する。

4.審判所の判断

(1)法令解釈

住宅借入金等特別控除の制度は、住宅の取得等の対価又は費用に充てるために借入金等の負担をした者について、その税額を控除することによって、住宅の取得等を促進し、もって、良質な住宅ストックの形成を図るべく設けられた政策的減税制度であり、昭和63年の措置法第41条の改正により、従来の居住用家屋の新築の工事の請負代金又は取得の対価に係る借入金等から、増改築等の費用に充てるための借入金等にも拡大された。同改正前の措置法第41条には「費用」という文言が使われていなかったが、同改正後の措置法第41条には、その第2項において、当該制度の対象となる増改築等とは「当該工事に要した費用の額が200万円を超えるもの」などの要件を満たすものである旨規定し、「費用」という文言が用いられた。

その後、平成26年4月1日からの消費税率の引上げに際し、消費税率の引上げの前後における駆け込み需要及びその反動等による影響が大きくなる住宅の取得等について、一時の税負担の増加による影響を平準化し、及び緩和する観点から、住宅の取得に係る必要な措置として、措置法第41条第3項において、特定取得の場合には住宅借入金等特別控除額に係る借入限度額を増額することにより最大控除額を増額し、税負担を軽減する旨、同条第5項において、特定取得を、住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等の合計額に相当する額が、新消費税率により課されるべき消費税額等の合計額に相当する額である場合の住宅の取得等とする旨が規定された。

以上から、特定取得とは、既存住宅の取得の場合には、当該既存住宅の取得に係る対価の額に含まれる消費税額等の合計額が、新消費税率により課されるべき消費税額等の合計額に相当する額である場合における当該既存住宅の取得をいうものであり、当該既存住宅の取得に係る費用の額に含まれる消費税額等の合計額が、新消費税率により課されるべき消費税額等の合計額に相当する額であるか否かは、当該既存住宅の取得が特定取得か否かの判断に影響しないものと解すべきである。

(2)検討

請求人は、個人間の売買により既存住宅である本件住宅を消費税額等の負担なく取得しているから、本件取得は、本件住宅の取得に係る対価の額に含まれる消費税額等の合計額が、新消費税率により課されるべき消費税額等の合計額に相当する額である場合に当たらず、特定取得に該当しない。そして、本件仲介手数料は、既存住宅の取得に係る費用であると認められるから、それに含まれる消費税額等の合計額が、新消費税率により課されるべき消費税額等の合計額に相当する額であることは、本件取得が特定取得に該当しないという上記認定を左右しない。

(3)請求人の主張の排斥

措置法第41条第5項に規定する「住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額」とは、①居住用家屋の新築若しくは既存住宅の取得に係る対価の額又は②増改築等に係る費用の額をいうと解するべきであって、請求人の主張は採用できない。また、請求人は、住宅の取得の費用である本件仲介手数料には新消費税率による消費税額等が含まれるから、本件取得は特定取得に該当する旨主張するが、所得税法第38条の規定は、譲渡所得の金額の計算上控除する取得費に係る規定であり、請求人の主張はその前提を欠き採用することができない。

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