3.請求人の主張

請求人が2事業年度連続して期限後申告に至った原因は、本件税理士法人が単に期限内に申告することを怠っていたことであり、請求人は、本件税理士法人の担当職員から期限内申告であるかのような日付が記載された申告書の写しを渡されていたため、本件青色取消処分の通知を受けるまで、2事業年度連続して法人税の確定申告書がその提出期限までに提出されていなかったことについて知ることは困難であった。

請求人にとって、その職責を信頼して税務代理を委任した本件税理士法人が、申告期限の徒過といった初歩的な誤りを犯すことなど到底想定し難いことであり、請求人が、その信頼に疑いを差し挟むべき事情がないにもかかわらず、本件税理士法人の重過失によって期限内申告できなかったことの不利益を納税者本人に帰責させることは妥当でなく、「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」(本件事務運営指針)の5[1]にいう特別な事情がある。


[1] 国税庁長官発遣『法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)』(平成12年7月3日付課法2-10ほか3課共同)

4.審判所の判断

(1)法令解釈

  • ①青色申告の承認の取消しについて

青色申告の承認の取消しは、法人税法127条1項各号に該当する事実があれば必ず行われるものではなく、現実に取り消すかどうかは、個々の事情に応じ、所轄税務署長の合理的な裁量によって決すべきものと解される。

そして、処分を行うにつき、法の規定から処分行政庁に裁量権が付与されていると認められている場合において、税務署長がその裁量権に基づき行った青色申告の承認の取消処分については、それが社会通念上妥当性を欠いて裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したと認められる場合や法の趣旨及び目的からみて裁量権の不合理な行使であると認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法又は不当とはならないものと解するのが相当である。

  • ②本件事務運営指針について

本件事務運営指針は、その趣旨において、法人の青色申告承認の取消しに関する基本的な考え方を示した上で、青色申告の承認の取消処分に係る処理の統一を図るために、法人税法127条1項4号に掲げられた取消事実について、本件事務運営指針の4において、2事業年度連続して期限内に申告書の提出がない場合に、当該2事業年度目の事業年度以後の事業年度について、青色申告の承認の取消しを行うものとし、本件事務運営指針の5は、本件事務運営指針の4に該当する場合であっても、役員その他相当の権限を有する地位に就いている者が知り得なかったこともやむを得ないと認められるなどその事実の発生について特別な事情があり、かつ、再発防止のための監査体制を強化する等今後の適正な記帳及び申告が期待できるなど、取消しをしないことが相当と認められるものについては、その事案に応じた処理を行うものとしている。

すなわち、本件事務運営指針の4及び5は、青色申告の承認の取消しの趣旨及び目的に沿って、法人税法127条1項4号の規定の適用に当たっての税務署長の合理的な裁量の基準として統一した取扱いを定めたものであり、当審判所においても、これらの取扱いは相当であると認められる。

法人税法は、いわゆる申告納税制度を採用しており、この制度の下では、納税者自身が自己の判断と責任において申告することが求められており、また、税理士法2条1項1号に規定する税務代理は、民法99条が規定するところの代理人が本人に代わって意思表示を行う行為に該当し、その法律効果は直接本人に帰属するものであることから、納税者が自己の判断と責任において、申告手続を税理士に委任し、当該税理士が納税者の代理人として申告した場合には、その申告はそのまま申告名義人である納税者の行為として取り扱うべきものである。

(2)検討

請求人は、本件各確定申告書の提出がいずれも期限後となった事実は認めつつも、本件税理士法人に対する信頼に疑いを差し挟む事情がない状況で、本件税理士法人の職員から期限内申告であるかのような日付が記載された申告書の写しを渡されていたため、期限後申告となっていることを知ることが困難であったことは、本件事務運営指針の5に定める「特別な事情」に該当する旨主張する。

しかしながら、本件事務運営指針の5に定める特別な事情とは、法人税法がいわゆる申告納税制度を採用し、この制度の下では納税者は自己の判断と責任において申告することが求められていること及び本件事務運営指針の5がその特別な事情の例として「役員その他相当の権限を有する地位に就いている者が知り得なかったこともやむを得ないと認められるなど」の事情を掲げていることからすれば、納税者の責めに帰すことのできない外的事情による場合などが該当するところ、請求人は、自己の判断と責任において本件税理士法人に税務代理を委任したものであり、2事業年度連続して期限後申告になった原因が本件税理士法人にあり、その事実を請求人が知らなかったとしても、それは請求人の責任の範囲内の行為であり、請求人の責めに帰すべき個別の事情にすぎず、請求人の主張する事情は、本件事務運営指針の5に定めるその事実の発生についての特別な事情とは認められない。