5.解説

法人税法127条1項4号は、法人税の確定申告書が提出期限までに提出されなかった場合、当該申告書に係る事業年度以後の青色申告の承認を取消す旨規定しているが、課税実務上は、本件事務運営指針の4に従い、2事業年度連続の期限後申告となった場合に、青色申告の承認を取消すという運用が行われている。本件税理士法人が期限内申告を怠った理由については、裁決書では明らかにされていないが、本件税理士法人の職員から期限内申告であるかのような日付が記載された申告書の写しを渡されていたというのが事実であるとすれば、税理士法人の過失は重大なものといわざるを得ない。一方で、請求人が、税理士法人に対する信頼に疑いを差し挟むべき事情がないにもかかわらず、不利益を納税者本人に帰責させることは妥当でないという主張は、国民感情として首肯できる要素はあるものの、本件事務運営指針の5にいう特別な事情とは、納税者の責めに帰すことのできない客観的事情による場合とされ、税法の不知や不注意といった事情は含まれないとされているので、納税者と税務代理人という委任関係の一方の当事者である請求人には酷な結果ではあるが、税務代理という制度上やむを得ないと思われる。後は請求人と税理士法人との間でどのように損害を賠償していくのかという流れとなろう。


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