この先10年で税理士業界は大変革期を迎えそうだ。その兆候が鮮明になってきた二極化。平成13年の税理士法改正後、100人以上の事務所が多数出てきた。かつて100人超の事務所は全国でも数えるほど。大規模化に伴い、業務内容も高度化・多様化し、従来型事務所との差別化がハッキリとしてきた。

複雑になる税制が逆に追い風に!税理士法人増え新たなビジネスモデル構築へ
2013年4月、某雑誌が「食えない税理士・会計士」という特集を組み、税理士業界でも話題となった。一部ではその傾向もあるものの、ビジネスを伸ばし、勤務税理士も従来とは比較にならない報酬を得ている者もいる。つまり、二極化が鮮明になってきたのだ。
二極化のキッカケは、平成13年の税理士法人制度の創設及び広告の自由化。これまでNGだった広告活動が自由化されたことで、力ある事務所が巨大化を図り、業界再編の舵をとっている。
日本税理士会連合会(日税連)の会員登録に関する資料によると、税理士法人数は1千件を超えた。平成17年から毎年約200件ペースで増加(図1参考)。このペースで増えれば、平成26年から同27年には3千件に達する。とはいうものの、監査法人の歴史からも、ある一定時点で税理士法人同士の合併など、更なる再編が予想される。
スタッフ数も税理士法人の場合は、社員税理士が毎年500人、補助税理士も200人ペースで増加している。現在の税理士登録者数が約7万3千人からすると、7人に1人が税理士法人勤務者だ。

平成23年6月発表の総務省「事業所統計資料」によれば、調査時の平成21年には、税理士法人数1995件に対して、従業員数は2万2601人と1事務所 あたり平均11人となっている。一方で個人事務所の規模は、税理士事務所数2万9097件に対して、従業員総数は13万5916人と1事務所あたり4人程 度だ。法人と個人とでは、約3倍もの規模の違いがある。
規模が大きければ売り上げも比例して大きい。広告・宣伝だけでなく、優秀な人材獲得におカネをつぎ込めるため、営業力強化や質の高いサービス提供に力を入れられる。
最近の傾向としては、資格者の多い首都圏の事務所、地方の都市部でも規模の大きい事務所が共に税理士を積極採用している。記帳代行や決算業務、税務申告だ けではなく、事業再生や再編、相続・事業承継などの高度業務を期待して、戦略的に資格者を増やしているのだ。業務拡大といっても、専門家ならではのサービ ス内容のため、簡単には市場に参入できない。二極化は規模だけでなくサービスにも及んでいる。