3.請求人の主張
以下のとおり、推計の方法には合理性が認められない。
イ 推計の基礎となる総収入金額
原処分庁が算定した総収入金額には、総収入金額に当たらない自動車税等の預り金や事業に係る売上げではないものが含まれている。
ロ 推計に用いる同業者の類似性
請求人の事業は自動車整備業のみで、自動車販売は附帯的に行っているだけであるから、原処分庁が、自動車整備業及び自動車販売業を営む者を類似同業者の抽出基準としていることには合理性がない。
4.審判所の判断
(1)推計の必要性について
請求人は、税務調査の際、調査担当職員の帳簿書類の提示要求に対し、帳簿書類の作成、保存はしていない旨申述し、調査担当職員にその提示をしなかった。そのため、調査担当職員は、各年分の請求人の事業所得の金額を資料により直接確認することができなかったことから、原処分時の推計の必要性はあったと認められる。
(2)推計の方法の合理性について
原処分庁は、各年分の総収入金額に類似同業者の同業者平均所得率を乗じて、請求人の各年分の事業所得の金額を計算している。
業種、業態及び事業規模に類似性のある同業者にあっては、特段の事情がない限り、同程度の総収入金額に対し同程度の所得を得るのが通例であり、また、同業者間に通常存する程度の営業条件の差異は、同業者の比率から平均値を算出する過程において捨象されることからすれば、抽出された類似同業者の同業者平均所得率をもって所得金額を推計する方法は、類似同業者に類似性が認められ、かつ、その基礎数値等が正確なものである限り、合理性を有すると認められる。
原処分庁が実際に採用した選定基準は、業種及び業態の同一性、事業所の近接性、事業規模の近似性等からして、請求人との類似性を判別する要件として合理性を有するものであり、また、その選定過程も適切なものである。そして、同業者平均所得率の算定に使用した資料は、いずれも帳簿書類等が整っている青色申告者の決算書であって、その内容も税務署長との間で争いのないものであるから、その信頼性ないし正確性は高いものであり、さらに、類似同業者の件数も、各同業者の個別性を平均化するに足るものということができるため、類似同業者と請求人との間には類似性があり、原処分庁の類似同業者の抽出基準及び抽出方法は、一応の合理性を有するものであると認められる。
(3)請求人の主張について
請求人は、上記3のとおり、事業は自動車整備業のみで、自動車販売は附帯的に行っているだけであるから、原処分庁が、自動車整備業及び自動車販売業を営む者を類似同業者の抽出基準としていることには合理性がない旨主張する。しかしながら、請求人は、自動車整備業だけでなく自動車の販売も行っていると認められる以上、原処分庁が、抽出基準において、自動車整備業及び自動車販売業を営む者を請求人の類似同業者としたことは相当である。
(4)所得税等各決定処分の適法性について
審判所認定の総所得金額に基づき請求人の各年分の納付すべき税額を算出すると、いずれも原処分額を下回る[1]から、各決定処分はいずれもその一部を取り消すべきである。
[1] 審判所は、請求人の主張のうち、①総収入金額に自動車税の預り金が含まれていること、②入金額の一部は請求人の売上とは認められないこと等を認容した結果、審判所認定の事業所得の金額は、原処分庁認定額を下回ったものと思われる。



