3.IPOを目指すと辞める人がいる理由

従業員にとってメリットが大きく感じるIPOですが、その対応を始めてから優秀な従業員幹部が辞めたりしていないでしょうか。また、周りの会社で辞めたという噂を聞きませんか。従業員幹部の退職は、IPOを目指している会社で起きがちなことです。

これはなぜかと言うと、IPOのメリットや必要性がわからないのに負担が増えて耐え難いと思ってしまうためです。人は負担があっても理由がわかっていればがんばります。しかし、理不尽だと思ったら優秀な方ほど辞めやすいとも言えるでしょう。従業員幹部は優秀な方多いです。判断も早く、周りを動かすポジションにいます。そういったポジティブな能力を理解できていない理不尽と感じるIPO対応に時間を割かないといけないことを堪らなく嫌だと思うのです。残りたい理由があって本当は出て行きたくなくても、ひと度転職市場を見たら引く手あまたで隣の芝生が青く見えてしまうわけです。

実は経営者たちにとっても大きなリスクを抱えていることになります。貴重な従業員が辞めてしまうのです。とくに幹部クラスの会社の中核を担う人物たちが辞めがちです。経営者にとっては、これからこそ頑張って欲しいし、頑張った成果でIPO成功したときに上場会社の幹部として華を持たせたいし、上場しない時よりも経済的なメリットも提供できると思っているでしょうから、想いを共有できず悲しいことでしょう。

しかし、当の従業員にとっては辞めることは当然の話となるわけです。メリットがわからないし、必要性もわからないのに、しんどさだけが増えて理不尽に感じるのですから。

4.IPO対応は本当に理不尽なのか

結論から申し上げると、IPO対応が理不尽であることはほとんどありません。

「ほとんど」と申し上げた所以は、間違ったIPO対応をしていることもあるからです。これについては本当に不幸だと思います。

 

IPO対応とは仕組みを作って運用していくことですが、上場したら仕組みを使わなくていいわけではありません。むしろ適切な運用を求められます。そのため、実は上場しても事務の負荷は日常的にかかっているわけです。

急にIPO専門の担当者になってしまったとしても、運が悪いと思う必要はありません。

IPO担当になったということは、会社の重要な役割を任されたということ。期待されたキーマンなのです。

ですので、適切な戦力や支援が会社としてあるかどうかの論はありますが、単純に運が悪いとも言えないでしょう。

 

そしてIPOを契機に設ける会社を管理する仕組みは、極論を言えばIPOだから必要なのではなく、「上場会社」としての信頼を得るために社会から要請される水準の仕組みです。すなわち、得るもののためにやらないといけないものなのです。

しかしながら、従業員としてはどこか釈然としないのではないでしょうか。何がおかしいのか。必要なIPO対応を正当に行なっていたとしても、理不尽に感じるときが3つ挙げられます。

1つ目は、従業員にとってIPOそのものをちゃんと理解する機会が不足している場合です。2つ目は、慣れていない仕組みを用いないといけないとき。3つ目は、適切な戦力や支援、評価が会社としてないと感じるときです。

 

1つ目の理解する機会の不足については、日本では社会人以前の教育も、会社に入ってからもマネジメント教育というものをほとんどやっていないという慣行が原因です。マネジメントどころか「社会」という勉強の機会もありません。マネジメントや社会について、なんとなく理解しているに過ぎないことが実態です。

もし学びの機会を設けてくれている会社があるとしたら、従業員のことをとても気にかけている会社であり、長期的な強さを大切にしていると言えるでしょう。教育するということは、人件費や研修費など大きなコストをかけているということで、目先の利益を減らすことになります。よって、会社に教わって当然という考え方では成り立たないでしょう。少なくとも研修が軽視されている日本では学ぶ機会があれば有り難い機会と考えるべきです。

 

2つ目は、慣れていない仕組みを用いないといけないことが要因です。

すでに上場している会社であれば手続きなどをきっちりできている印象がありませんか。印象はあっても、その手続の本当の意義や正確な方法論を語れる方はあまりいないでしょう。ではなぜ上場会社の従業員たちは対応できているのかというと、皆さんよりも特別優秀だからというわけではありません。仕組みとして、対応することが当たり前になっているからやっているに過ぎないのです。だから安心してください。皆さんが理不尽と感じることは慣れていないだけなのです。

 

3つ目は、適切な戦力や支援、評価が会社としてないと感じるとき。これは経営者すらIPOに振り回されていることが多いことが一番の原因です。IPOは経営者にとっても初めての経験の連続なのです。とはいえ、その不利益を被るのは御免と思うのも最もです。実際のところ、経営者としてはまっとうに評価して報いたいと思っていても後手に回っていることがあるのもしばしばです。特にIPOの進捗についてコミュニケーションがスムーズで無いときはこの傾向が顕著に現れます。一番の打開策としては、ちゃんと全当事者がIPOについて同じ目線を持ってコミュニケーションを円滑に行えるようになることです。これが出来ないと不満が溜まって従業員は出ていくしかなくなってしまいます。そして、同じ目線を持つために必要なことは学ぶ機会でしょう。