5.何を学べばいいのか

では従業員としては何を学べばよいのでしょうか。それは会社としての社会からの要請を理解すればよいのです。難しいとされるIPOすべてを理解する必要性は全く無いのです。
これは世の中における会社というものの仕組みを理解することです。よって、社会やマネジメントを学ぶことが大切なのです。
会社の仕組みを作る際には、仕組みを設ける水準も大切です。仕組みというのは1つではありません。色んなパターンがあります。どのような水準かと言えば、会社を取り巻く社会という存在から、目指すべき強さに求められる水準で対応することです。
逆に言えば、社会やマネジメントといったところを学べば理解できるということです。目の前の手続きだけを理解することのほうが難しいでしょう。
ではなぜ、社会からの要請を理解することが大切なのか。それは、ルールが世の中の誰かを守るために存在しているからです。
資本主義社会は基本的には自由ですが、誰かに不都合が生じるところはルールで規制されているのです。そして、会社が活動することによって、誰かへ不都合を与えないためにルールが求められるのです。その誰かは会社の中の人も外の人もどちらもあり得ます。
会社に求められる社会からの要請を理解することで、IPOを目指す上で釈然としなかったところはスッキリするでしょう。なぜその手続きをしないといけないのかを理解できるわけです。意外とそんなに極端にボリュームのある話ではありません。様々なパターンのある手続き自体の一つ一つを覚えようと思ったら、それこそ管理部門のスペシャリストになれてしまいますが、大枠の趣旨を理解するだけなら誰でも十分に学びきれます。講義にすると10時間といったところです。たったの10時間でずっと釈然としないところがスッキリするわけです。
6.教育をせずにIPOを失敗したときのリスク

IPOに関する教育がなされていない場合に、IPOを断念することになった場合、従業員は苦労だけしてメリットが得られなかったと感じます。しかも、その苦労に対しずっと理不尽であると感じている方がいるくらいです。退職者が多くなったり、モチベーションがさがったりしてしまうことは想像に難くないでしょう。会社によっては、実際のところ本当はもうIPOを目指すことをやめたいのに、無理して続けている場合があるのはこういったリスクを顕在化させたくないためです。
IPOに関する教育をしっかりしている場合、そもそもの仕組み化の必要性について従業員から理解を得られています。このためIPOが成功して上場会社になった際のメリットを享受できなくても仕組みの必要性については理解してもらえており、作ったものが無意味になる可能性が低いと言えます。そして、IPOを目指さないことになったとしても、そこに合理性を感じれば大量に退職するといったことはないでしょう。この合理性を感じられるかどうかにもIPOそのものを理解しておく必要性があります。このため教育をしておくことはIPOを失敗ではなく、合理的に辞めた際にも価値のあることと言えるのです。
IPOが実現できないと露見して一気に会社が瓦解した話は時折に耳にする怖い話です。IPOは企業の成長とガバナンスの両方がうまく行かなくてはならないですし、長期的な取り組みが必要で難しいものです。IPOを進めるにしても辞めるにしても、従業員の理解を得ておくことは大切なリスクヘッジと言えるでしょう。



