2.争点

  • (1)本件取引による落札代金は請求人に帰属するか否か(争点1)。
  • (2)請求人のGに対する損害賠償請求権の額として、益金の額に算入すべき金額はいくらか(争点2)。(他の争点は省略)

3.当事者の主張

  • (1)争点1に係る原処分庁の主張

本件取引は、Gが行ったものであるが、①Gの地位(管理課長ないし管理部長として、職制上重要な地位にあった)、②本件取引の対象商品は、請求人が仕入れたものであり、送料の大部分も請求人が負担した、③請求人の内部管理体制の不備により、本件取引が誘発された、等の事情からすれば、Gの行為は請求人の行為と同視することができる。したがって、本件取引による落札代金は、請求人に帰属する。

  • (2)争点2に係る請求人の主張

Gが請求人から商品を窃取したことによる請求人の損害額は、当該窃取された商品の仕入額と送料の合計額となる[1]


[1] 争点2に関し、原処分庁は、請求人の損害額は、当該窃取された商品の請求人における販売額と送料の合計額となると主張していた。

4.審判所の判断

  • (1)争点1について

審判所の認定した事実によれば、Gは、一定の業務と権限を任された従業員に過ぎず、請求人の経営に関与する地位にもなく、実際の業務は、本社店舗における販売と仕入れは含まれるものの、その範囲を超えて自由に商品を仕入れたり、インターネットを通じて商品を販売したりする権限は与えられていない。また、本件取引に係る商品の発送・領収書の発行は、基本的にG個人名で行われていたことからすると、落札者が、落札時点までに、取引の相手方が請求人であると認識しておらず、本件取引による落札代金は、Gが管理する口座に入金され、Gが私的に費消していた。

以上の事情によれば、本件取引は、請求人を主体とする取引とはいえない態様で行われており、その収益は、Gが私的に費消し、請求人がこれにより利益を受けたような事情もない。したがって、本件取引による落札代金は、請求人に帰属しない。

  • (2)争点2について

Gが請求人から商品を窃取したことによる損害賠償請求権の額は、その窃取された商品の時価により計算すべきである。また、Gは、商品の窃取に際し、請求人に送料を負担させたのであるから、請求人のGに対する損害賠償請求権の額は、Gが請求人から窃取した商品の時価と請求人に負担させた送料の合計額となる。