前3回は、年末に改正された「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存への円滑な移行のための宥恕措置」の内容についてお届けしました。今回から元に戻って「改正電子帳簿保存法がデジタル化時代の税務調査、税務行政を変える!」の続編についてお届けします。今回は、なぜ、電子帳簿保存法が抜本的に見直されたかについてです。
【電子帳簿保存法とは】
電子帳簿保存法(電帳法)は、帳簿であれば、備え付けて保存、書類であれば保存しなければならないと各税法で保存義務が課されている帳簿書類を電子で保存する場合に特例を定めている法律です。各税法では、紙を前提に保存義務を課していますので、電帳法にしたがって、一定の要件に従って電子で保存した場合には、各税法に保存義務を課している帳簿書類に代えることができるということです。また電子で取引した場合にはその電子取引に係る電子データを保存しなければならないという保存義務をこの法律で課しています。
帳簿書類は、適正公平な課税を確保するためには大変重要なものであり、これがきちんと保存されていないと真実の所得把握はできないことになります。これを電子データで保存する場合には、電子の特質として改ざん、修正、すり替え等が容易で痕跡も残らないなどの電子化文書の脆弱性があります。これを補うために一定の保存要件を課して保存することとし、税務調査に際にも紙の場合と同様の調査ができるようにしているものです。
一方で、紙での保存が経営活動や業務運営の効率化の阻害要因となっていることから、納税者の保存に係る負担軽減を図るためにこの特例法が定められています。
【電帳法 抜本的見直しの背景】
電帳法は令和2年度改正でも電子取引に係る保存要件の緩和が行われるなど、これまで累次の改正が行われてきたところですが、その電子帳簿保存法が、令和3年度税制改正でなぜここまでの抜本的見直しが行われたのか、その背景について見ていきたいと思います。
今回の感染症では、わが国における行政サービスや民間分野のデジタル化の遅れなど、様々な課題が浮き彫りになりました。世界デジタル競争力ランギング2020(スイス国際経営開発研究所)では27位と先進国ながら低迷しているところです。
最近はデジタルトランスフォーメーションDXという言葉をよく聞くようになりました。進化したデジタル技術を使って、人々の暮らしを変革する。既存の価値観や枠組みを根底から覆す革新的なイノベーションをもたらすものと言われているようです。
新型コロナ感染防止のためには、社会全体のデジタルトランスフォーメーションDXを強力に推進する必要があり、経済社会の再構築を行っていかなければならないという考えの下、大胆な税務手続のデジタル化を推進しています。
このような経済社会のデジタル化を踏まえ、国税関係帳簿書類を電子的に保存する際の手続きを抜本的に見直し、経理の電子化による生産性の向上、テレワークの推進、クラウド会計ソフトなどの活用による記帳水準の向上を図ることとしています。
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