3.請求人の主張

本件各車両は、以下のとおり、いずれも所得税法38条2項に規定する「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当しない。

(1)本件各車両は、車両としての実用性に着目して購入されたものではなく、公道における走行も、フェラーリに乗ること自体を目的とするものであって、いずれも美術品オークションを運営する会社等が扱うような個性の強い車であるから、希少価値を有し、かつ、ほかの車両による代替性のないものである。

(2)本件各車両と同種の車両は、中古車市場において、その新車価格を大幅に上回る高値で取引されている。この取引価額は、時の経過によって逓減する機能性・実用性ではなく、時の経過によって逓減しない希少性・非代替性に着目して形成されていることが明らかである。このような取引価額の高騰とその形成要因という観点からも、本件各車両が減価しない資産であることは明らかである。

4.審判所の判断

(1)認定事実

請求人は、本件各車両について、それらを売却したのと同一の車両買取販売会社から購入していたところ、本件各車両の生産時期、生産台数等及び車両本体価格は以下のとおりである。

請求人は、本件各車両について、いずれも道路運送車両法上の登録をして交付を受けた自動車登録番号標を表示し、公道を走行させて使用していた。

(2)検討

①所得税基本通達2-14の相当性について

減価償却資産を定義する所得税法2条1項19号の委任を受けた所得税法施行令6条1項柱書により、減価償却資産から除外される「時の経過により価値の減少しないもの」について、所得税法基本通達2-14は、古美術品、古文書、出土品、遺物等のように歴史的価値または希少価値を有し、代替性のないもの等がこれに当たると定めているところ、この取扱いは、「時の経過により価値の減少しないもの」の例示として、当審判所においても相当であると認められる。

②当てはめ

本件車両A及びBは、いずれも、生産開始後まもなく購入されたもの[1]であり、それぞれの売却時典においても生産されてから20年程度経過したに過ぎないのであるから、一般の車両に比して入手しにくい車両であることを踏まえたとしても、本件車両A及びBが歴史的価値又は希少価値を有して代替性のないものであるとまではいえない。次に、本件車両C及びDについてみても、これらと同種の車両の販売台数がいずれも不明であることや生産開始後間もなく購入されたもの[2]であり、売却時点においても生産開始から10年ないし20年程度経過したにすぎないものであることからすれば、本件車両A及びBと同様に歴史的価値又は希少価値を有して代替性のないものであるとはいえない。

他方で、本件各車両が、道路運送車両法上の登録をされ、自動車登録番号標を表示して公道を走行していたことからすれば、これらが車両として使用する目的で購入されたことが認められるから、かえって「時の経過により価値の減少しないもの」に該当するとはいえない事情が存在する。

以上から、本件各車両は、所得税法38条2項に規定する「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当する。

(3)請求人の主張について

請求人は、本件各車両は、中古車市場において新車販売価格を超える価格で取引されているものであるから、「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当しない旨主張する。しかしながら、結果的に取引価額が高騰したものがあるとしても、本件各車両が希少価値を有し代替性のないものであると認めるに足りないことは上記(2)のとおりであるから、請求人の主張は採用できない。


[1] T&Amasterの記事では、本件各車両の購入時期は明らかではないが、審判所はそのように事実認定している。

[2] 同上