3.決定したテーマに沿ったTODOの実践

実践を推進していくためのTODOは3つあると、筆者は考えています。

(1)担当者を決め、その業務範囲を明確にする
(2)サプライチェーンの全体像を把握し、今できることに着手する
(3)「働き方の多様化」を実現する

(1)について、業務として進めていくにあたっては、マネジメントする人間が必要です。スタッフを集めて部門化するも、各部門に兼務担当者を配置するもあり得ますが、重要なことは業務範囲と権限を明示しておくことです。でないと、たとえ担当者がいても、取り組みが形骸化してしまいます。以下のような業務付与が考えられると思います。

・ESG問題の解決状況のチェックと対策、リソースの調達
・社内外におけるSDGs推進状況の共有・情報提供
・SDGs、ESG問題に関する情報収集と分析

(2)について、SDGsの実践におけるESG問題への取り組みは、自社だけの問題にとどまらず、関連する顧客や取引先へも影響が波及することは、第2回のコラムでもご説明したとおりです。よって、サプライチェーン全体の把握が必要、ということになってきます。もちろん限界はありますが、サプライチェーンで起きうるESG問題を図式化し共有したり、信用調査会社や地域社会・業界内での対象企業の評価など各種リサーチを経て、可能な範囲で把握してみましょう。ESG問題のリスクを発見することができたら、そこから今できる対策に着手していけばよいです。

最後に(3)ですが、SDGsの取り組みを促進するためには、この項目はとても重要であると考えています。在宅勤務やワーケーションなど従業員が生産性を高めやすい勤務場所を選択できるようにすることは、自社の生産性の向上、通勤時のCO2削減、交通費の削減などにつながりますし、短時間勤務やフレックスタイム制の導入なども、従業員にとって仕事のしやすさに直結し、前述の生産性の向上につながります。企業と社員の共通価値を創り出すものであるといえますね。

4.自社評価及び自社アピール

初めにお話したとおり、企業でのSDGsの実践は「業務」です。そしてKPIを設定した以上、そのプロセスはしっかりと管理されなければなりません。したがって記録の作成が必要となってきます。

経営者のみなさんは「言われなくても分かっています!」という感じかもしれませんが、参考まで記録方法や項目についてポイントを整理しておきます。

・取り組みを5W1Hで記録している
・業務日報などの既存の書式に簡単に追加できる
・取り組み結果を可能な限り数値化して記録している
・取り組み結果から読み取れる事柄を分析し記録している
・関与したステークホルダーを記録している

また、SDGsの実践が業務である以上、ビジネスと一体であるため、その経済性についても無視できない課題ですね。当該取り組みの有効性を会計面から評価するということが必要です。

・ESG問題の解決にかかったコストを取り組みテーマごと集計して評価する
・ESG問題の解決から得た収益または削減できたコストを取り組みテーマごとに集計して評価する

これらの集計結果をKPIの達成状況と組み合わせることで取り組みの費用対効果の検討が可能になり、改善のきっかけを作ることができます。

そしてここまで進めてきた「記録」「評価」は、企業にとって「資産」です。
資産は社外に「見せる化」することで、ステークホルダーから選ばれるアビリティになります。
この「見せる化」の取り組みは、すでに大企業などでは取り入れられている基本的な方法があります。「サステナビリティレポート」というものです。自社における一定期間のESG問題の解決状況を公開するためのレポートです。投資家や顧客、採用活動者向けなど、編集方針はその利用目的によって異なってきますが、SDGs実践における対外的自社アピールになります。

SDGsの登場によって顧客は取引先の社会性を、消費者は消費行動の社会性を重視するようになってきました。
学生の企業選びの基準も変化してくると推察され、企業にはワークライフバランスや仕事の社会的意義、人間的な成長の機会などが求められてきています。
SDGsの実践は彼らのニーズに応えることができます。
だからこそ記録をとり、それを「見せる化」して、ニーズに応えることができるという事実を対外的に表現し、積極的に発信していくことが大切です。

「資産」を適切にアピールし、選ばれる企業になりたいものですね。

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