ITスペシャリストは、近年注目を集める情報システムの基盤技術に関する専門家のことです。どのような分野の専門性を持つのか、どんな資格を有しているのかを説明します。

ITスペシャリストという言葉を聞いたことがありますでしょうか?

ITの特定分野における専門家のことであり、近年注目を集めています。

ITスペシャリストの仕事内容や専門分野、ITスペシャリストとして活躍するために持っておきたい資格についてご説明いたします。

ITスペシャリストとは

ITスペシャリストとは、直訳するとITの専門家となりますが、ITシステム基盤の基幹を担う技術者のことを指します。

経済産業省に定めるITスキル標準(ITSS)には、ITスペシャリストには6つの専門分野があります。ITスペシャリストは、その専門分野において、レベル3以上のスキルが求められます。

レベル3とは、ITSSでは「要求された作業を全て独力で遂行する。スキルの専門分野確立を目指し、プロフェッショナルとなるために必要な応用的知識・技能を有する。スキル 開発においても自らのスキルの研鑽を継続することが求められる」と定められています。

ちなみに、レベル4ではこれに加えて後進の育成などが求められ、レベル5ではプロフェッショナルとして社内をリードすることが求められます。

ITスペシャリストの役割

ITスペシャリストは、システムの構築や運用にあたって、技術面からプロジェクトの成功を支える専門家です。職種として、よく比較されるのがシステムエンジニアでしょう。

システムエンジニアは、システムの設計・開発にあたって、関連する幅広い知識が求められます。それに対してITスペシャリストは、特定の分野についてより専門的な知識が求められます。

ITスペシャリストの仕事内容

ITスペシャリストは、ハードウェア・ソフトウェア関連の専門技術を活用し、最適なシステム基盤の設計、構築、導入を実施します。主な活動領域は次のようになります。

【開発】

・システムコンポネントの分析、設計

・システムの構築、導入

【運用、保守】

・システムの運用

・システムの保守

また、ITSSで定められているITスペシャリストの6つの専門分野は次のとおりです。

・プラットホーム、システム管理、ネットワーク、セキュリティ、データベース、アプリケーション共通基盤

つまり、ITスペシャリストは、これらの専門分野において、システムの開発や運用・保守にあたり、最適なシステム基盤の設計、構築、導入を行うことが求められます。

ITスペシャリストの6つの専門分野

ITスペシャリストの6つの専門分野について、それぞれ見ていきましょう。

プラットホーム

ここでのプラットホームとは、ハードウェア、OS(Windows,Linuxなど)、ミドルウェアなどを指しています。これらは、システムやアプリケーション開発を行うにあたっての基盤システムになります。

ITスペシャリストには、顧客の高度な要求にも対応できるプラットホームの設計・構築・導入を行うことが求められます。

システム管理

ハードウェア、ソフトウェア、アプリケーションを含めたシステム全体のサポートをします。

ITスペシャリストは、システムの運用や管理における、設計・構築・導入を行います。その際には、障害や災害が発生した場合の対応も考慮します。

ネットワーク

ネットワーク技術に関する知識を活用し、ネットワークの構成要素やキャパシティ、障害回避手段などを検討します。それをもとに、ネットワークの構築、運用・保守などを行います。

セキュリティ

企業へのサイバー攻撃やハッキングといった事例が増えており、システムのセキュリティ対策がより重要となっています。

ITスペシャリストは、セキュリティ方針やセキュリティ対策基準を策定し、セキュリティシステムの設計、実装を進めます。

セキュリティの運用管理やセキュリティ障害が発生した場合の対応も行います。

データベース

情報システムにおいてデータを扱う上で、データベースは欠かせません。

ビッグデータの活用など、システムで取り扱うデータ量は以前より飛躍的に増えています。

ITスペシャリストは、信頼性の高いデータベースの設計、構築、導入を行うことが求められます。

アプリケーション共通基盤

導入するシステムに適したソフトウェア・アーキテクチャやフレームワーク、共通ライブラリの設計、実装を行ないます。

また、ライブラリの管理、ソフトウェアの品質管理、アプリケーションの開発ツールの作成、導入も行います。

ITスペシャリストが持っておきたい資格

ITスペシャリストは、上記の専門分野について深い知識が求められます。ITスペシャリストとして活動するにあたって役立つ資格をご紹介します。

基本情報技術者

情報システムに関する技術的な知識や技能が一定以上の水準であることを認定する国家試験です。

情報システムを構築・運用する技術者だけでなく、システムを利用するエンドユーザを含めて、ITに関係するすべての人を対象としています。

特定の製品やソフトウェアに関するものではなく、情報技術の基礎となる知識・技能について、幅広く総合的に評価されます。

基本情報技術者は、ITSSでは「レベル2」に該当します。

ITスペシャリストは「レベル3」以上を求められますので、この資格を持っているだけではその基準に達しませんが、ITスペシャリストを目指すにあたって入口になる資格と言えるでしょう。

応用情報技術者

基本情報技術者を取得した人が、レベルアップして次に目指す資格として位置づけられている国家資格です。

高度IT人材となるために必要な応用的知識・技能を持つ人を対象としています。

基本情報技術者と比べて、より幅広い知識と応用力が求められます。

応用情報技術者は、ITSSでは「レベル3」に該当します。

資格として、ITスペシャリストに相当すると言えます。

ネットワークスペシャリスト

ネットワークに関する専門的な知識や技術を有していることを認定する国家資格です。

ネットワークの固有技術からサービス動向まで幅広く精通し、大規模かつ堅牢なネットワークシステムを構築し、運用できる能力が求められます。

試験の水準が非常に高く、難関資格に位置づけられます。

ネットワークスペシャリストは、ITSSではネットワーク分野の「レベル4」に該当します。

データベーススペシャリスト

データベースに関する高い専門性を有していることを認定する国家資格です。

膨大なデータ群を管理し、パフォーマンスの高いデータベースシステムを構築し、顧客のビジネスに活用できるデータ分析基盤を提供する能力が求められます。

この試験も非常に難易度が高く、合格率の低い難関資格です。

データベーススペシャリストは、ITSSではデータベース分野の「レベル4」に該当します。

オラクルマスター

データベース市場で世界的に高いシェアを占めるオラクル社が認定しています。

オラクルのデータベースを管理するスキルを証明する資格です。

オラクルマスターは、難易度によって、Bronze、Silver、Gold、Platinumといったステップが設けられています。

特に、Gold以上の資格を持っていると、データベースに関して高い専門性を持っていると見なされます。

CCNP

世界的なネットワーク機器ベンダー大手のシスコシステムズ社が認定する資格です。

シスコシステムズの認定として、CCT、CCNA、CCNP、CCIEといったステップがあります。

この中で、CCNPはプロフェッショナルレベルとされています。

CCNPの取得によって、ネットワーク分野において、専門的な技術を有していると示すことができます。

まとめ

ITスペシャリストの専門分野や関連する資格についてご紹介しました。

IT化・DX化は企業の中で今後さらに進められていきますので、ITスペシャリストの能力を必要とする場面が増えると想定されます。

この記事が、ITスペシャリストを目指す方やITスペシャリストを活用したい方の参考になりましたら幸いです。