今回は、個別性は強いものの、実務上その取扱いに迷うような問題を取り上げます。

複数の当事者が取引に関与する場合は?

典型的な三者間取引として、インボイスQ&A問41では、委託販売を扱っています。

委託販売の場合、委託者は、取引先(受託者)に対し商品の販売を委託し、受託者は当該商品をその購入者に販売します。

適格請求書制度が導入されると、当該購入者に対して実際に課税資産の譲渡等を行っているのは委託者であるため、本来、委託者が購入者に対して適格請求書を交付しなければならないことになります。

しかしながら、購入者に直接相対しているのは受託者であるため、委託者が購入者に対して直接適格請求書を交付するのは実務上の困難が伴います。

そこで問41では、受託者が委託者を代理して、委託者の氏名又は名称及び登録暗号を記載した、委託者の適格請求書を相手方へ交付するという、代理交付の方法を認めています。

さらに、問41では、次の1及び2の要件を満たすことにより、媒介又は取次ぎを行う者である受託者が、委託者の課税資産の譲渡等について、自己の氏名又は名称及び登録番号を記載した適格請求書又は適格請求書に係る電磁的記録を、委託者に代わって、購入者に交付するという、媒介者交付特例を認めています(新消令70の12①)。 

1.委託者及び受託者が適格請求書発行事業者であること

2.委託者が受託者に、自己が適格請求書発行事業者の登録を受けている旨を取引前までに通知していること[1]

この媒介者交付特例は、物の販売などを委託し、受託者が買手に商品を販売しているような取引だけではなく、請求書の発行事務や集金事務といった商品の販売等に随する行為のみを委託しているような場合も対象となります[2]

なお、代理交付は、委託者を代理して受託者が適格請求書を交付するもので、委託者の氏名を記載しなければならず、煩雑なため、実務的には媒介者交付特例が使用される場合が多いのではといわれています[3]


[1] 通知の方法として、問41は、個々の取引の都度、事前に登録番号を書面等により通知する方法のほか、例えば、基本契約等により委託者の登録番号を記載する方法などがあるとしている(インボイス通達3-7)。

[2] 税務通信No.3714『財務省担当官に聞く! インボイス制度の疑問点』<第2回>(令和4年8月1日)20頁は、この取扱いにつき、「消令70の12に『媒介者を介して国内において課税資産の譲渡等を行い場合において』との要件が規定されていることから、単に委託販売において、受託者が受託品を引き渡す場合にように、物理的に物を引き渡すことを媒介することに限られない。その理由としては、『課税資産の譲渡等』の概念が『対価を得て行う』を包含していることを踏まえれば、物の引渡しに付随する債権回収行為等を媒介する場合も含むと解すことも可能であるから。」としている。

[3] この点につき、熊王征秀/渡辺章『逐条放談・消費税のインボイスQ&A』(2022年・中央経済社)149頁では、「渡辺 :基本的には、媒介者交付特例が圧倒的に使いやすいと思います。ただ、例えば専属の代理店の場合とか、あとは自分のものではない商品やサービスを、自己の名前を伏して、委託者の名前を借りて取引しているケースがあるので、そういう時は代理交付がいいのだろうと思います。」と述べている。

立替金の取扱い

実務上、取引の相手先(又は任意の第三者)に経費を立て替えてもらい、後日精算することはよくあると思われます。

経費立替の依頼者(A社)が、経費の支払先(C社)から交付され、実際に立替払をした者(B社)の氏名が記載されている適格請求書を受領したとしても、これをもって、C社からA社に交付された適格請求書とすることはできません。

そこでインボイスQ&A問84では、立替払を行ったB社から立替金精算書等の交付を受けるなどにより、C社からの課税仕入れがA社のものであることが明らかにされている場合には、その適格請求書及び立替金精算書等の書類の保存をもって、A社は、課税仕入れに係る請求書等の保存要件を満たすとしています(インボイス通達4-2)[4]

この場合、立替払を行うB社が適格請求書発行事業者以外の事業者であっても、C社が適格請求書発行事業者であれば、A社は仕入税額控除を行うことができます。

なお、立替払の内容が、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる課税仕入れに該当する場合(本コラム第4回を参照[5])、立替えの依頼者は、当該帳簿の保存のみで仕入税額控除を行うことが認められます。

この場合、適格請求書及び立替金精算書等の保存は不要となります。

さらに、問84では、A社に交付する適格請求書のコピーが大量となるなど、立替払を行ったB社が、コピーを交付することが困難なときは、B社がC社から交付を受けた適格請求書を保存し、立替金精算書を交付することにより、A社はB社が作成した(立替えを受けた者の負担額が記載されている)立替金精算書の保存をもって、仕入税額控除を行うことができるとしています。

この場合、A社は、立替金精算書の保存をもって適格請求書の保存があるものとして取り扱われるため、立替払を行った者は、その立替金が仕入税額控除可能なものか(すなわち、適格請求書発行事業者からの仕入れか、それ以外の者からの仕入れか)を明らかにし、また、適用税率ごとに区分するなど、A社が仕入税額控除を受けるに当たっての必要な事項を立替金精算書に記載しなければならなりません。


[4] なお、従業員が経費を立替払した際に受領した領収書等(適格請求書)の宛名が従業員の氏名になっている場合、会社が仕入税額控除を受けるには、適格請求書の他に、会社名等が記載された立替金精算書の保存が必要となる(税務通信No.3728・令和4年11月14日「ショウ・ウインドウ」45頁)。

[5] 本コラム第4回ではインボイスQ&Aの該当箇所を問82としていたが、令和4年11月の同Q&Aの改正等により、本稿作成時点では同問98に繰り下がるとともに一部文言が加筆修正されている(ただし、重要な変更ではないと解される)。