国税OB税理士が監修。公認会計士・税理士・会計事務所・企業経理担当、税金・会計に関わる“会計人”がいま必要な情報をお届けします!

会計人ニュース

注目キーワード

税務署の目が光る「社長の“出張ついでの観光”」

秋も深まってきたが、「出張ついでに観光」という社長も少なくないだろう。気をつけなくてはいけないのが、会社のおカネで羽振りの良い観光だ。税務調査で痛い目を見ることもあるだけに、“出張税務”はきっちりと押さえておきたい。

秋の行楽シーズンの出張の楽しみの一つに、「出張ついでの観光」をあげる人も少なくない。社長や役員ともなれば、その観光にも、それなりにおカネをかけるケースがある。ただ、税務調査では、この“公私混同”はとくにチェックされるだけに、日ごろから注意しておく必要がある。

同族オーナー会社ともなれば、「俺(社長)が就業規則だ」という人もいるだろうが、税務的には全く認められないので、出張費用についてはあらかじめ就業規則などに「旅費規定」を定め、それに基づき支給することが重要だ。

社長が海外出張する場合、「ファーストクラスでないと嫌だ」という人も中にはいる。この場合、「社長が海外出張する際には、飛行機はファーストクラスを利用する」ということを旅費規程の中で明らかにしておけば、税務調査が入ったときに調査官と揉める可能性はグッと低くなる。また、出張先での業務に集中するため、宿泊先をビジネスホテルではなく、設備の整ったホテルへグレードアップしたいと考えるのであれば、その旨を旅費規程の中で明らかにしておくことも事前の対策となる。

出張費でポイントになる「常識の範囲」とは

ただ、出張費として損金処理できるのは、その金額が「常識の範囲」ということが前提。「常識の範囲」を超えると、給与として所得税が課税されるもある。この「常識の範囲」だが、税務署が基準にしているのが「役員を含むすべての社員において、バランスの取れた基準で計算されているか」と言う点。つまり、「旅費規程」そのものが適正であるかということが問題となる。

「旅費規定」が適正かどうかについては、出張先への距離や役職に合わせてどの程度の概算旅費を想定しているのか、また「旅費規程」そのものが世間一般の相場からかけ離れていれていないかが検討される。ここで税務署が「適正でない」と判断すると、非課税となる旅費とは認められなくなる。

また、同業種、同規模の企業が一般的に支給している金額と比較して、支給された概算旅費が適正であるか、というのも判断材料となる。

常識の範囲内として認められる出張旅費であれば、役員給与とみなされ所得税が課税されることはないが、出張にかこつけて観光を行い、その費用を会社が負担したケースでは、そうもいかない。

妻同伴の出張は条件付で認められる

税務的には、非課税として取り扱うことのできる出張旅費を「業務に必要なもの」に限定している。この「業務に必要なもの」として認められるのは、交通費や日当、宿泊費、往復の航空運賃、支度金など。一方で、税法の世界では「役員等に対して機密費、接待費、交際費、旅費等の名義で支給したもののうち、その法人の業務のために使用したことが明らかでないもの」については、役員に対する「経済的な利益」の供与があったものとして、役員給与とみなすことになっている。そのため、出張ついでの観光は、会社から支払われた旅費を「業務に費やした期間」と「観光に費やした期間」との比率で按分し、観光部分にかかった費用を役員給与として処理することになる。

とはいうものの、旅行の目的があくまで取引先との商談など業務上のものであり、その“ついで”として観光を行ったようなケースでは、往復交通費に限り、その全額を経費として処理することができる。

なお、役員給与には、「定期同額給与」「事前確定届出給与」「利益連動型給与」の3種類あるが、中小企業のほとんどの会社が同族会社であり、事前に確定している給与以外は原則として損金算入できないだけに、こうしたケースでは、給与として所得税が課税された上に、会社の経費として落とすこともできないという“ダブル損”になってしまう。

また、出張ともなれば妻同伴というケースもあるが、妻の観光分も会社が負担してしまうと、その役員に対する給与とみなされてしまうことも覚えておきたい。その例外としては、たとえば、役員が常になんらかの世話を必要とする身体障害者で、世話人として妻が付き添う必要があるとき。さらには、妻の同伴が明らかにその旅行の目的達成に必要と認められるときに限り、妻の観光費用を除いた金額分だけが出張旅費として損金処理することができる。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は租税研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャーとしても活動。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
http://zeimusoudan.biz/
■KaikeiZine
https://kaikeizine.jp/

ページ先頭へ