収益性の検証にFLR比率を活用しよう
その後Dさんは、飲食店専門の税理士に相談し、FLR比率の活用方法について教えてもらいました。
現在のFLR比率を確認すると各店舗が68%、75%、85%という結果になっており、各店舗の改善の方向性が分かりました。
収益性を検証するためには飲食店の3大コストのFLRを把握する必要があります。
飲食店の場合、儲かる(多くの利益を生み出す)かどうかは、3大コストであるFLRコストをどれだけコントロールできるかに大きく左右されます。
FLRコストとは、ドリンクなども含んだ材料費である原価(Food:フード)、人件費(Labor:レイバー)、家賃(Rent:レント)のことです。
Uberや出前館などのデリバリーサービスを活用している会社については、販売手数料の金額についても原価に含めて計算した方がよいでしょう。
このFLRコストの売上に対する構成比率の適正水準は、売上の70%以内です。
FLR比率が約70%であればお店に利益は10%残り、75%であれば利益は5%残り、それ以上となるとお店に利益はほとんど残りません。
これはどんな業態にも共通したルールです。
各店舗に共通する本部費の売上に占める構成比が8%~12%であることを考えると、お店のFLR必率が70%以内に抑えられなければ、本部費を負担しきれず会社としては利益が残りません。
このルールを知らずに経営してしまうと、現場に出て毎日必死に働いても、いつまでたっても利益が得られず、苦しい生活に疲弊し「実は計画の段階で儲かっていなかった……」という残念な結果になってしまいます。
現在のFLR比率を確認し、改善が必要な方向性(店舗の売上・原価・人件費・その他経費や本部費のどこに問題があるか?)を明確にしましょう。
<FRL比率を活用した現状分析と改善の方向性>
A店 | B店 | C店 | |
Food:フード 原価 |
目標 28% 実績 34% |
目標 30% 実績 35% |
目標 30% 実績 35% |
Labor:レイバー 人件費 |
目標 30% 実績 28% |
目標 30% 実績 30% |
目標 30% 実績 35% |
Rent:レント 家賃 |
目標 10% 実績 6% |
目標 10% 実績 10% |
目標 10% 実績 15% |
FLR比率 | 目標 68% 実績 68% |
目標 70% 実績 75% |
目標 70% 実績 85% |
FLR比率から 想定する利益率 |
12% | 5% | ▲5% |
実際の利益率 | 7% | 5% | ▲10% |
現状分析と改善の方向性 |
【A店】
・売上がしっかりとれているため、人件費と家賃比率が低くなっている。ただ目標より原価率が6%も高いため収益性が低い。売上を落とさないよう注意して、原価率の改善(仕入業者の変更、商品構成の見直し、原価率の低いメニューを提案、価格の見直し)などを行う。 ・FLR比率から想定する利益率よりも実際の利益率が5%も低いため、水道光熱費や販売促進費、消耗品などの経費の使い過ぎが考えられるため、FLR以外の経費を見直す。 【B店】
・原価率が目標よりも5%も高いため、収益性が低い。A店と同じく、原価率の改善を行う。 【C店】
・売上が低く、家賃率が適正値になっていない。また、原価率も非常に高い。原価率を低く抑えながら売上回復を最優先する。半年経っても売上の回復見通しが立たなければ撤退を検討する。 ・FLR比率から想定する利益率よりも実際の利益率が5%も低いため、水道光熱費や販売促進費、消耗品などの経費の使い過ぎが考えられるため、FLR以外の経費を見直す。 |
飲食店経営の基本はFLR比率の検証から!
現状のFLR比率が70%以下に抑えられているかを確認し、改善の方向性を明確にしましょう。
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