2017年1月1日から、新たな加算税制度が導入される。過去5年以内に無申告加算税または重加算税を賦課されたものが、再び「無申告」または「仮装・隠蔽」に基づく修正申告書の提出等を行った場合、加算税が10%加重されるのだ。会計事務所が新規顧問先と契約するときは、過去5年以内に重加算税が賦課されていないか、確認しておくことをお勧めする。

2017年1月1日からスタートする新たな加算税制度(附則第54条関係)は、過去5年以内に無申告加算税または重加算税を賦課された者が、再び「無申告」または「仮装・隠蔽」に基づく修正申告書の提出等を行った場合、加算税を10%加重されるもの。つまり、5年以内に2回、無申告加算税または重加算税となると、加算税にプラス10%上乗せされる(国税通則法第66条、第68条関係)。
現行の加算税は、「無申告」または「仮装・隠蔽」が行われた回数にかかわらず一律であるため、意図的に「無申告」または「仮装・隠蔽」を繰り返す者も少なくない。そのため、悪質行為を防止する観点から今回の改正が行われた。
新たな加算税制度がスタートして重要になると考えられるのが「仮装・隠蔽」の考え方。税理士の関与先に無申告というのはあまり考えられないので、ここでは無申告については省く。
「仮装・隠蔽」の考え方として課税当局は、「仮装は所得、財産あるいは取引上の名義等に関し、それが事実であるかのように装う等、故意に事実を歪曲することをいい、隠ぺいは、課税標準または税額等の計算の基礎となる事実について、これを隠し、あるいは故意に脱ろうすることをいう」と考えている。
こうした考え方を前提に、帳簿書類に虚偽記載等があった場合、①貸倒れの事実のない売掛金等を貸倒れとして必要経費に算入している、②架空(過大)仕入、架空(過大)製造原価又は架空(過大)経費を計上している、➂棚卸資産の数量を除外し、または理由もなく著しく過少な評価を行っている、➃秘匿した売上代金等により取得した資産を借入金等で取得したものとするため、虚偽の借入証書、手形等を自ら作成、あるいは他人に作成させたーことがあれば、重加算税が賦課されると考えられる。法人税の重加算税事務運営指針第1-1(2)②「帳簿書類の改ざん、帳簿書類への虚偽記載、相手方との通謀による虚偽の証ひょう書類の作成、帳簿書類の意図的な集計違算その他の方法により仮装の経理を行っていること」に該当すると推察されるからだ。
とはいうものの、帳簿書類に仕入金額を過大に記載していても、単に誤って記載されたと税務署に認められると、隠ぺいまたは仮装の行為に該当することにはならない可能性もある。
一方で、帳簿書類等を正当に記載・作成していたとしても、決算書作成時に決算書上でのみ➀~➂のような不正行為を行っているようなときには、隠蔽または決算書の虚偽記載として仮装行為に該当すると考えられる。
さて、納税者に積極的な隠蔽行為がなかったとしても、重加算税が賦課されることはあるのか。この点、最高裁の判例(平成6年11月22日第三小法廷判決、平成7年4月28日第二小法廷判決)に、単に過少に記載した納税申告書を提出したにすぎなくても、課税標準を「ことさら過少」に記載した申告書の提出行為そのものを「隠蔽行為等」と認定できる場合には、重加算税が賦課される可能性があるとされたものもある。
なお今回の改正では、過少申告加算税および源泉所得税の不納付加算税については、前述の見直しの対象外。また、更正予知前に適用される加算税についても上記見直しの対象外となっている。
地方税については、国税と併せて、加算金の加重措置が導入される。該当税目は、個人住民税利子割、配当割、株式等譲渡所得割及び分離課税に係る所得割、法人事業税、たばこ税、ゴルフ場利用税、自動車取得税、軽油引取税、法定外普通税、鉱産税、特別土地保有税、入湯税、事業所税、水利地益税等並びに法定外目的税となる。