平成30年1月から、第二次納税義務者に税理士法人や監査法人などの、いわゆる“士業法人”の社員が加わる。士業法人が国税を滞納し、徴収すべき国税に不足がある場合、その士業法人の社員が納付義務を負うことになる。税理士法人の社員は無限責任。今回の第二次納税義務者になることが加わり、社員税理士の責任は益々重くなる。

士業法人とは、あまり聞きなれない言葉だと思うが、いわゆる税理士法人や監査法人、弁護士法人、特許法人など、国家資格者が複数人で組織する専門特化した法人だ。この士業法人の社員は、一般企業における正社員(スタッフ)とは立場が違う。士行法人における社員は、実は一般企業の「役員」に相当する。そのため、士業法人で働く人は、一般的に資格者であっても無資格者であっても「スタッフ」「従業員」と呼ばれる。
この士業法人における社員は、税理士法人であるならば、税理士しかなれない。監査法人なら公認会計士だけだ。この士業法人の社員の責任範囲に、平成29年度税制改正で第二次納税義務が加わった。
税理士法人や弁護士法人の社員は、その専門性の高さから、法律で重い責任が課せられており、責任範囲は限定されない「無限責任社員」という位置付けだ。その重い責任範囲にこのほど、第二次納税義務が加わった。
現行の国税徴収法33条では、「無限責任社員の第二次納税義務」として、合名会社や合資会社の社員が規定されている一方、同じ無限責任社員である士業法人の社員は、法人形態が合名会社でもなければ合資会社でもないため、第二次納税義務者にはならなかった。そこで、平成29年度税制改正で、合資会社や合名会社同様に、士業法人の無限責任法人の社員にも、第二次納税義務を課すことができる徴収手続きを整備することになったもの。地方税についても同様の措置を講じる。
士業法人の滞納件数が増えているという話は聞いたことがないが、最近では、当サイトでも「東京地裁 税理士の「DES」リスク説明義務めぐり3億円損害賠償命令」https://kaikeizine.jp/article/2164/でも紹介したように、高額な損害賠償請求事件も出てきている。この事件では、税理士法人がクライアントに3億3千万円近い損害賠償金を請求され争いとなっているが、東京地裁はクライアント側に軍配を上げている。現在は東京高裁に移し争われている最中だが、このまま税理士法人側が敗訴することにでもなれば、多額の賠償金をはじめ、納税にも支障をきたす可能性も想定される。
今回の税制改正により、税理士法人の社員にも第二次納税義務が課せられると社員税理士の責任範囲は一層広まる。「将来は社員にするからうちの事務所に入らない」という誘い文句も、これからは資格者にはあまり通用しなくなるかもしれない。