国税OB税理士が監修。公認会計士・税理士・会計事務所・企業経理担当、税金・会計に関わる“会計人”がいま必要な情報をお届けします!

会計人ニュース

注目キーワード

熊本地震 災害で納税しなくてもよい方法あるのか? 保険金でカバーできなければ雑損控除

4月14日午後9時26分ごろ、熊本県を震源とする最大震度7の強い地震が発生した。気象庁によると、震度7を観測したのは熊本県益城町。震源の深さは10キロ、地震の規模を示すマグニチュードは6.4と推定されている。 熊本市内も震度6を記録し、九州全土で揺れを観測。熊本県内では、その後も強い余震が続いている。熊本県内の企業では、3月決算を終え、申告準備を進めている最中だったと思われるが、こうした自然災害に襲われ、甚大な被害を被った場合、通常通り税金を納税しなければならないのだろうか。

大きな自然災害の場合、特例的に税金の優遇措置が設けられるのが一般的だ。2011年3月11日の東日本大震災でも、災害を受けた人を対象に特例が設けられた。
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h23/jishin/tokurei/zeikin.htm
災害特例のざっくりとした内容は、①申告期限の延長、②納税猶予、③納税額の減額・免除が一般的。(詳細は税務署や市町村の税務課にご確認ください)

① 申告期限の延長
やむを得ない事情で期限までに納税ができない場合は、災害がやんだ日から数カ月(2カ月)以内に限り期限が延長される。ただこの場合、「地域指定による期限延長」や「個別指定による期限延長」など、いくつか条件も付くため、その都度確認する必要がある。

② 納税猶予
災害により財産に一定の損害を受けた場合、納税を猶予する制度。
国税においては、災害で相当な損失(全財産のおおむね20%以上の損害)を受けた場合、損失の程度により本来の納期限から1年以内の猶予期間を認めてもらえることがある。
また、被災により税金を一度に支払えないと認められると、原則1年(最大3年)以内の期間において納付期限が猶予されることがある。
地方税においては、手続きが地方自治体により異なるので、市町村の税務課に確認することが不可欠だ。

③ 納税額の減額・免除
たとえば、国税の所得税においては、災害により住宅や家財などに損害を受けた場合、確定申告をすることで、所得税法に定める雑損控除か、災害減免法に定める税金の軽減免除のどちらか有利な方法を選ぶことで、所得税の全部または一部を軽減することができる。
地方税においても、個人住民税、固定資産税、自動車税などにおいて、被災納税者の税金を一部軽減または免除することがある。

保険金支払対象外なら税金で取り戻す

ところで、今回の熊本大地震のような大災害でなくても、被害を被った場合、復旧するのにかなりの費用を要する。保険でカバーできればよいのだが、損害を全額カバーすることはほとんどできない。
こんなとき、支払った所得税や住民税の全部または一部が、戻ってくる「雑損控除」か「災害減免法による所得税減免措置」が受けられる。所得によって、受けられる控除は違ってくるが、控除の方法がまったく異なるので、どちらが有利か試算する必要がある。

雑損控除は所得控除なのに対し、災害減免法は税額控除。年間所得1千万円以下の人は、雑損控除と災害減免法のどちらか1つを選択することができる。年間所得が1千万円を超えると災害減免法は使えず、使えるのは雑損控除だけでとなる。
雑損控除の対象者及びその資産は、損害を受けた資産の所有者が納税者本人もしくは納税者本人と生計を一にする親族とされ、その年の総所得金額等が38万円以下の親族の所有であるもの。たとえば、日常生活に通常必要な住宅・家具・衣類等。また、災害等に関連するやむを得ない支出などだ。

生活に通常必要でない資産については、たとえば、別荘や30万円を超える貴金属(1個)、書画骨董など、いわゆる世間で言う「贅沢品」は雑損控除の対象とならない。
雑損控除は、被害が大きく、控除しきれない場合は3年を限度に控除を受けられる。雑損控除を受けられる人は、自営業者や年金生活者、サラリーマンで、確定申告をすることにより雑損控除が受けらえる。

一方、災害減免法の対象となる資産は、住宅と家財。その損害額が住宅や家財の価額の50%以上の場合、使うことができる。控除額が所得金額を超え、1年で控除できない場合には、翌年以降最大3年間(東日本大震災の損害については翌年以降5年間)に渡り、繰越控除できる。

雑損控除と災害減免法のどちらを選ぶかは、個人の状況によっても異なるが、多くの税理士の意見では、分岐点はザックリと見て所得500万円。500万円以下なら災害減免法を選択したほうがトクになるケースが多いようだ。とはいうものの、実際にどちらを選ぶべきかについては最終的には税理士に相談することをおススメする。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は租税研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャーとしても活動。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/
■KaikeiZine
https://kaikeizine.jp/

ページ先頭へ