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雇用保険など6法改正 中小企業も対応迫られる

4月から新年度を迎え、さまざまな改正法が施行されているが、会計事務所もクライアント支援のために、しっかりと頭に入れておきたいところだ。とくに、今年の改正は、高齢者と女性の就業促進が目的にあり、人材不足に悩む企業にとって注目の内容になっている。

雇用保険法、労働保険徴収法、高年齢者雇用安定法、男女雇用機会均等法、労働者派遣法、育児・介護休業法のあわせて6本からなる「雇用保険法等の一部を改正する法律」(改正雇用保険法等)が3月29日参議院本会議で可決・成立した。
同法は、「一億総活躍社会」に盛り込まれた“介護離職ゼロ、希望出産率1.8”の実現に向けた安倍晋三首相肝いりの法改正の一つだ。

少子高齢化が進展する中、高齢者及び女性等の就業促進、雇用継続を図ることを狙いとしている。そのため、65歳以上の者への雇用保険の適用拡大、雇用保険の就職促進給付の拡充、シルバー人材センターの業務拡大、育児休業及び介護休業の取得要件の緩和、介護休業給付の給付率の引上げ、妊娠・出産・育児期を通じた事業主への雇用管理上の措置の義務付け、失業等給付に係る保険料率の引下げ、など法改正は多岐にわたる。

65歳以後に勤めても雇用保険の対象に

目玉の一つが、65歳以上の雇用保険の適用拡大。これは、団塊の世代が65歳を超え、高齢化社会に拍車が掛かる中、65歳を超えても働く人が増えているため、65歳以降に新たに雇用される場合でも、雇用保険の被保険者になれるようにするもの。
年金の支給額が目減りし、高齢者の老後生活が脅かされていることを背景に、65歳以上の高齢者の求職が増加傾向にある。しかし、これまでの制度では、65歳を超えて引き続き同じ会社で雇用されている場合のみ、高齢者継続被保険者として雇用保険の被保険者となれていた。そのため、平成29年1月からは、65歳以後新たに雇用される場合も、雇用保険の被保険者となれるようにする。

その一方で、64歳に到達した直後の4月1日から、特別な手続きが不要で雇用保険料の徴収が免除されていた制度が廃止され、保険料の支払いが必要となる。ただし、高齢者雇用の多くが中小企業であることから、経過措置として平成31年度分までは徴収が猶予されることになっている。
今のところ、俎上に上がっている段階だが、65歳以上の高齢者を一定割合以上雇用している事業主に対する助成措置も検討されている。

看護・介護休暇の半日取得が可能に

今回の改正では、育児・介護休業の取得要件の緩和も目玉の一つ。そのうち、育児休業については、平成29年1月から対象となる子供の範囲に、特別養子縁組の監護期間にある子供等の追加や、子供の看護休暇の半日単位での取得が可能とされ、平成28年4月からは休業申請が行える有期契約労働者の要件緩和が実施される。

介護休業については、年間8万人程度が介護のため離職しているという総務省の調査も踏まえ、

①平成28年8月から介護休業給付の給付率の引き上げ
②平成29年1月1日から、介護休業について対象家族1人につき1回とされていた介護休業の取得(合計93日を限度)を、3回まで分割して取得を認める。
③介護休暇の半日単位での取得を可能とする

など、介護離職の防止策を手当てしている。
また、休業期間が長くなると、職場復帰が困難になり結局は離職に至るケースは昔からあるが、最近では、「妊娠を報告したら経営難を理由に正社員からパートに降格された」、上司から「うちでは産休は取れないよ」と言われるなど、いわゆる、マタニティハラスメントにより離職をせざるを得ないケースが増え、問題視されている。改正では、このような妊娠・出産等を理由に上司・同僚等による就業環境を害する行為を防止するため、平成29年1月から事業主に雇用管理上の必要な措置を義務付ける。

その他、雇用保険については、企業と従業員が折半で支払っている失業等の給付に係る雇用保険料の料率を、平成28年4月から1000分の8(改正前1000分の10)に引け下げ、負担軽減を図った。

今回の改正では、雇用保険適用対象者の拡大やハラスメント防止の強化など、企業にとってかなりのインパクトとなることから、税理士もしっかり頭に入れておき、クライアントへアドバイスしていきたいところだ。

著者: イーター侍

税金ライター/元税金専門誌編集者

四半世紀以上、税金専門誌の編集者として国税庁、国税局、税務署、会計事務所に出入りする。数年前に独立した後、編集者時代に築いた人脈をいかし、ネットワークビジネスを手がける。その傍ら、趣味と副業を兼ねて税務関係ニュースを追いかける“中年ライター”だ。

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