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国税庁が民間転職イベントに登場 谷間世代「30歳代」の穴埋めに

転職イベント会場に、見慣れない幟が立ったブースが出現。そのブースはなんと、あの「国税庁」。「国税にFA宣言しませんか?」というチラシを配布するなど、これまでの国税庁とはちょっと違う。攻めの姿勢で転職者の獲得に動いているではないか。なぜ、いま国税庁がここまでやるのか、その理由は・・・

2016年1月下旬から2月上旬に掛けて、民間会社が主催する転職フェアに国税庁が出展した。国家公務員は新卒中心に採用しており、中途採用は、若干というのがこれまでだった。そのため、民間の転職フェアを利用しなくても、独自に採用はできていたはず。それがなぜ今年は違うのか・・・

国税庁の定員は、昭和24年6月に大蔵省の外局として発足時の行政機関職員定員令(及び大蔵省職員定員規定)を経て、現在は財務省定員規則に明記され、同規則第1条で現在の定員が5万5703人と定められている。

国税庁の職員数の推移をみると、昭和24年に設置される前の昭和20年から採用が始められ、第二次世界大戦後の激烈なインフレーションと新しい税制に不慣れであること等から、税務行政が混乱した中で同22 年に1万3515人、同23 年には1万7195人が採用され、同25年の職員数は6万2千人近くにまで達した。ところが、行政整理等により29年まで減員が続き5万300人に縮小、さらに35 年までは採用数を年間1千人以下に抑制していた。
その後、昭和40年代後半から50年代にかけては厳しい行財政事情のなか5万2千人台で推移したが、平成元年の消費税及び同3年の地価税導入に伴い定員増が認められ、4年に5万6千人台となり、平成28年度には5万5666人となっている。

多少の増減はあるものの、新規採用数はその年の退職者数を補う程度。採用人数を抑制した昭和29年から35年に採用された職員が退職した平成6年以降数年は、他の年と比べ採用が抑制されていた。そのため、平成27年4 月の職員在職状況をみてみると、20代後半の各年齢は「1千人超」、40~50代前半はほぼ全ての年齢で「1500人超」となっているのに対して、30 代の各年齢はほぼ「1千人以下」と、谷間の年代となっている。

世代間の谷間が出来る危険

国税庁では、この平成6年以降の少数採用期の職員が30歳代の主力の戦力年齢となってきたことから、将来的な現場での管理者不足を懸念、それにともなう税務行政の執行上、さまざまな問題が出てくる可能性を憂慮し、これを早期解消する必要があると判断。さらには、多様な人材確保は組織の活性化という面からも有意義であることから、30歳以上の社会人経験者を対象とした「国税庁経験者採用試験」(職階は国税調査官級)を平成21年度から開始した。

とはいうものの、現実は厳しく、同年度採用試験以降、応募者数は低調に推移(別表参照)。直近となる平成27年度試験結果を見ても、採用予定者50人に対して申込者は約200人で、実際に受験したものはさらにその半分しかおらず、30歳代の職員不足の穴埋めは到底できていない状況になっていた。

(別表)経験者採用試験実施状況

国税庁は応募者数が低い原因を、採用国税局を東京国税局等の一部に限定していたことや、採用募集についての広報・周知が不十分だったことから、一般 的に認知されていなかったと分析。そこで、今年度に実施する採用試験に向けて、民間企業が実施している転職イベントへの積極的参加及び転職サイトに情報掲 載することで、少しでも社会的知名度をアップさせ、優秀な即戦力を多く確保するために乗り出した。
採用対象の国税局についても、全国(沖縄国税事務所含む)に拡大、採用人数も200人と目標を高く設定した。

ち なみに、採用に関しては8月に受験案内が公示される予定だが、国税庁が求めている人材のハードルは高い。大学卒業後、民間企業等で正社員等の職務経験が8 年以上で、特に法人等の財務、経理または税務に関する事務、金融機関等における貸付けまたは資金運用等に関する職務、税理士・公認会計士等の業務の補助の 職務、税理士試験で国税関係の科目合格者といった即戦力を求めている。企業の経理・財務部門をはじめ、会計事務所業界でも人材不足が深刻化している。採用 側はかなりハードルを下げているほか、給与や待遇面などについても改善されている。こうした中での国税庁の採用条件は、転職者にどう写るのか、冷静に見て いく必要がある。

さて、気になる転職イベント当日だが、1月29日の「マイナビ転職EXPO」では100人近くの来場者が職員から仕事内容 等の説明に耳を傾け、2月11日の「DODA転職フェア」でも、大勢の来場者がブースを訪れていた。国税庁としては、始めての試みとしては良い感触を持っ たようだ。

外部から今回の転職イベントを見ていて「国税庁も変わったなぁ」と思わされたのが、「国税にFA宣言しませんか?」とのチラシを 配るなど、これまでの「受け身の姿勢」から「働き掛けの姿勢」へとシフトしている点。採用活動する職員の眼も、「民間企業に負けない」との、やる気に満ち溢れていた。

職員構成の歪み解消に本腰を入れたこの施策、当然にこれらの費用は税金が投入されている。優秀な人材の採用というミッションをどこまで達成できるのか、注目してみていきたい。

著者: イーター侍

税金ライター/元税金専門誌編集者

四半世紀以上、税金専門誌の編集者として国税庁、国税局、税務署、会計事務所に出入りする。数年前に独立した後、編集者時代に築いた人脈をいかし、ネットワークビジネスを手がける。その傍ら、趣味と副業を兼ねて税務関係ニュースを追いかける“中年ライター”だ。

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