消費税の会計処理については税込経理と税抜経理がありますが、飲食店の場合どちらがよいでしょうか。今回は消費税の経理方式について説明します。

この記事の目次

消費税の経理方式とは!?

都内で居酒屋を3店舗経営としているIさんは、消費税の課税事業者となった第3期以来、消費税の会計処理に税抜方式を採用しています。

しかし現場で使っている店舗日報については税込のもので運用しているため、毎月の試算表の数値と日報の数値が一致せず、困っていました。

消費税の会計処理は、「税込経理」と「税抜経理」の2つの処理方法を選択することができます。

国税庁のHPでは下記のように説明されています。

なお、消費税の納税義務が免除されている免税事業者の場合は、税込経理を選択することになります。

「税込経理方式による場合は、課税売上げに係る消費税等の額は売上金額、課税仕入れに係る消費税等の額は仕入金額などに含めて計上し、消費税等の納付税額は租税公課として必要経費または損金の額に算入します。税抜経理方式による場合は、課税売上げに係る消費税等の額は仮受消費税等とし、課税仕入れに係る消費税等の額については仮払消費税等とします。」

(引用:No.6375 税抜経理方式又は税込経理方式による経理処理|国税庁

つまり、税込経理は消費税を取引価格に含めて会計処理する方法であり、税抜経理は消費税を取引価格に含めずに会計処理する方法です。

どちらの処理方法を選択しても消費税の納付金額は同じですが、仕訳などの会計処理方法や決算書の表示方法等に違いがあります。

それぞれのメリット・デメリットを把握した上で選択することが重要です。

経理方式を統一しよう

その後Iさんは、飲食店専門の税理士に相談し、消費税の経理方式について教えてもらいました。

税抜経理を全社の社内基準として採用することにし、店舗日報についても税抜表示で判断できるように改良しました。

これにより、毎月の試算表と現場で活用している日報の数字が常に一致するようになり、適切な判断をできるようになりました。

税込経理では入力が税込なので、仕訳処理や日報への入力などが簡単です。

また、免税事業者の場合は税込経理となるので、課税事業者となった際にも、税込経理を採用するのであれば会計処理や日報などを何の変更もなく継続して使い続けることが可能です。

一方、消費税の納付額が租税公課として経費で計上されるため、毎月納付額を概算計上しないと、決算の着地見込みの利益が大きくぶれてしまうので注意が必要です。

これに対し、税抜経理では消費税額はすべて仮受消費税、仮払消費税の科目に集約されるので、期中においても仮受消費税から仮払消費税を差し引くことで正確な納税額を把握できます。

消費税の税率に変更が発生した場合、税込経理ですと消費税額分だけ売上、仕入などの金額が変わるため、税率変更の前後の業績の前期比較がしづらい、変更後の予算額などを修正する必要があるといった問題も考えられます。

しかし、税抜経理では業績を税抜価格で把握するため、消費税の税率の変更があった場合にも影響はありません。

さらに中小事業者の法人税法上の交際費の損金算入の限度額の800万円や、取得価額が30万円未満の場合の少額減価償却資産の損金算入の特例などを活用する際の金額は、税抜価格で判定するため、税抜経理の方が有利となります。

一方、領収書や請求書に税抜金額が記載されていないこともあり、税抜金額で入力しようとする場合は手間が煩雑になります。

入力は税込で入力し、表示は税抜価格になるように会計ソフトの導入や社内日報などを改良する必要があります。

消費税の会計処理についても、税込経理と税抜経理では売上や原価などの経費の金額も変わってきます。

現在、消費税の税率が10%(標準税率)・8%(軽減税率)となっており、その影響額が大きくなっています。

例えば、売上の全部が店内飲食のお店の場合、月商が税抜で500万円だとすると、税抜経理の場合は年商が6,000万円ですが、税込経理の場合は年商が6,600万円となり、その差は600万円も生じます。

消費税の経理方式を頻繁に変更してしまうと、消費税の金額分だけ業績が変わり、変更前後の前期比較ができなくなるため、継続して使い続ける必要があります。

また相談事例のように、入力のしやすさから現場で使う日報では税込経理を採用し、会計処理においては税抜経理を採用している会社があります。

このような場合だと、現場で把握している業績と経営で把握している業績に消費税分だけ乖離が生じてしまうため、消費税の会計処理については全社で統一する必要があります。

消費税の会計処理について、どちらを採用するかは自社の状況に応じて選択すればよいですが、一度採用したら全社で統一して継続して使うことをおすすめします。

まとめ

飲食店の経営を改善するためには、消費税の社内基準を統一させることから!

毎月の試算表と現場で使う日報の数値をしっかり一致させ、正しい判断ができるようにしましょう。


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