いま、本当に価値のある顧客企業の支援とは何か?をテーマに、株式会社KUROJIKA代表取締役・早川伸夫氏に執筆いただく「KUROJIKA式・顧客の利益創出メソッド」の連載第2回目です。中小製造業や卸売業の利益創出のプロである早川氏に、成果を出すための“本質的な”選択と集中について解説いただきます。
この記事の目次

早川伸夫
株式会社KUROJIKA代表取締役。利創経営参謀。
銀行、製造業、小売、海外新規事業など多業界・多職種を経験したのち独立。中小企業の現場に入り込み、売上アップやコスト削減による利益創出を支援。2025年1月より、士業・コンサルタント向けに再現性の高い経営支援メソッドをお伝えする「利創経営参謀養成講座」を主宰。また、現在は中小企業の経営改善や利益創出を支援するDX・AIシステム「FOCAL」の事業開発にも取り組んでいる。
“利益が出ない”のは、努力が足りないからではない
「広告を打ち続けないと、販売数量が増えない」
「新規顧客の数を増やせば、きっと売上が伸びる」
「新商品を出せば、打開できるかもしれない」
── こうした言葉を、経営者から何度聞いたでしょうか。
けれど、こうした“打ち手”の多くは実は本質からズレている。
利益が出ない最大の原因は、“努力が足りない”ことではなく、“努力の方向を間違えている”こと。
いえ、正確にいえばこうです。
成果に直結しない“対象”に向かっていくら行動しても、成果にはならない。
つまり、問題は“行動量”ではなく“行動の対象”なのです。
成果をわけるのは、“どれだけやるか”ではなく“何をやるか”
私は、成果を生み出すために必要な行動の構成要素を“対象・質・量”の3つに整理し、次のような方程式として定義しています。

どんなにルールやツールをていねいに整えても、それを成果につながらないところに使っていたら、むしろ手間もコストもムダに増えるだけですよね。
だからこそ、“本当に成果が出やすいところ”に時間もお金も人も集中させることが大切なのです。
不思議なもので、この“当たり前すぎること”も他人のことだとよく見えるのに、いざ自分のこととなると急に見えなくなってしまいます。
そして、事業に落とし込んだときにはどこが“本当に成果が出やすいところ”かわからず、あれもこれもと手を広げてしまいがちですし、支援する側にとってもアドバイスが難しくなります。
イメージしやすいように、選択と集中の誤りに関する事例を以下に2つご紹介します。
ケース①:選択の誤り
年商数億円のとある製造業の企業様から、「広告を打って売上を増やしたい」という相談がありました。
ところが現状を分析すると、広告で獲得している新規顧客の粗利率は15%台。
顧客獲得コストを考慮すると完全に赤字なうえに、リピート率も低く、LTV(Life Time Value=顧客生涯価値)も期待できない状態でした。
一方で、既存顧客の上位10社は粗利率35%以上でボリュームも大きく、安定的な取引を継続していましたが、そのうちの半分は取引量が増えてはいませんでした。
私は、こう問いかけました。
「本当にその“広告費”、新規顧客に投じるべきでしょうか?」
「既存顧客への単価交渉や、LTV最大化のほうが先では?」
その結果、広告投資を抑え、主力顧客向けに商談設計を見直したところ、営業行動量はほぼ変えずに利益が1.5倍へ増加。
行動の“量”ではなく“対象”を変えた効果が出ました。
ケース②:集中の誤り
年商10億円台のある卸売業の企業では、新規事業や施策が同時多発的に進んでおり、社内のあらゆる部署が疲弊していました。
社長は「打ち手を増やすことが突破口になる」と信じていたようですが、現場にヒアリングすると、「何のためにやっているのかわからない」、「いままで何度も打ち上げては失敗し、振り返らないから同じようなことを繰り返す」との声が続出。
実際に費用対効果を整理していくと、いま進めている施策のうち、半分以上が“利益につながる理由”がはっきりせず、やる意味が曖昧になっていることがわかりました。
一般的な業務改善コンサルティングでは、ここで“仕組み作り”からはじめてしまいがちですが、顧客価値や成果につながらないことを高速で回したり、再現性を高めたりしても、ムダの拡大再生産となるだけです。
そこで私はこう伝えました。
「“やるべきこと”を決める前に、“やらないこと”を決めませんか?」
取り組みを棚卸しして、本来注力すべき業務に資源を戻した結果、残業は月60時間→30時間に減少し、利益率も向上。
社員の達成感も明らかに高まったのです。
── このように、成果を左右する“最大の要因”は、行動量でも仕組みでもなく、“行動の対象”です。
そしてその“対象の選択”こそが、まさにKUROJIKAが体系化した『利創経営7ステップ』の核心にあたります。



