組織で感じた違和感から自由を求めて独立を決意。「マネーフォワード クラウド専門」で、開業1年で顧問先100件を獲得したPYXIS会計事務所代表の水島龍希税理士。水島氏が、「時間・場所・人に縛られない」理想を実現できた秘訣とは?マネーフォワード クラウドとのコラボとなる今回のインタビューでは、その背景にある哲学と戦略に迫ります。

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監査法人や会計事務所での勤務を通じて、日々の業務に追われながらも、ご自身が本当に望む「時間」や「場所」、そして「人」との関わり方を模索している方も多いのではないでしょうか。

この記事では、貯金50万円で独立し、あえて「人は雇用しない」という方針を掲げ、「マネーフォワード クラウド専門」という独自戦略で、開業1年目にして100件もの顧問先を獲得した、PYXIS会計事務所の代表税理士・水島龍希氏にインタビューを行いました。

水島氏が実践するのは、「時間・場所・人に縛られない」という理念に基づいた、新しい事務所経営の形です。
単なる開業の成功ノウハウにとどまらず、なぜ水島氏は多くの選択肢のなかから独自の道を切り開く決断ができたのか。
そのキャリア選択の背景にある「哲学」と、理想を現実にするための緻密な「戦略」について、ご本人にお話を伺いました。

※このインタビューは、バックオフィスに関する様々なデータを連携し、経理や人事労務、法務における面倒な作業を効率化するSaaS型サービスプラットフォームを提供しているマネーフォワード クラウドの協力でお送りしています。

PYXIS会計事務所代表の水島龍希税理士

水島龍希
國學院大學経済学部を卒業後、税理士法人横浜総合事務所に入所し、税務業務に従事。その後、東京の税理士法人で決算申告業務に携わり、のべ200件以上の案件を担当。2020年10月にフリーランスとして独立し、中小企業の記帳代行や経理業務改善をサポート。2023年2月、税理士登録を機にPYXIS会計事務所および合同会社PYXISを設立。現在、マネーフォワード クラウドをメインに幅広いサポートを提供している。士業サミット2023「ルーキーCHALLENGE賞」ノミネート。

「時間・場所・人に縛られない」理念のもと独立を決意

■本日はよろしくお願いします。まずは事務所名の「PYXIS(ピクシス)」に込められた想いからお聞かせいただけますか?

水島龍希氏(以下、水島):よろしくお願いします。「PYXIS」はラテン語で「羅針盤」という意味なんです。会計事務所での勤務時代、お客様とコミュニケーションを取るなかで、経営者の方が進むべき道に迷われたときの指針となるような存在でありたいと思うようになりました。単に税金の計算をするだけではなく、お客様の人生や経営の「羅針盤」になりたい。そうした想いを込めてPYXIS会計事務所と名付けました。

自分が発した一言が、相手にとっての「気づき」になったり、何かの役に立ったりしている実感が欲しい。それがこの仕事の原動力になっています。

■素晴らしい理念ですね。その想いに至るまでには、どのようなキャリアの変遷があったのでしょうか?

水島:父が経営者ということもあり、元から独立開業はしたいと考えていたのですが、独立前は修行として2つの会計事務所で経験を積みました。

最初に入った事務所は、いわゆる「製販分離」が徹底されていました。私は内部で記帳や申告書作成を行うことが多かったのですが、効率的である反面、「今後開業するなら全部の仕事を一通りできるような場所でないといけない」という思いが強くなってきました。そこで、一気通貫でお客様を担当できる事務所へ転職しました。しかし、そこで待っていたのは別の葛藤でした。

■どのような葛藤だったのでしょうか?

水島:のべ200件ほどのお客様を担当させていただくなかで、組織人としての「違和感」を感じるようになったんです。自分が税理士として「このお客様にはこうした方がいい」と思うことがあっても、組織にとっては正解ではないときもあります。もちろんいま考えると、自分自身が未熟な部分もあったと思いますが、当時は個人の方針と組織の方針で起きるギャップに違和感を抱いていました。

■組織に所属していると、どうしても避けられない部分かもしれません。働き方の面ではいかがでしたか?

水島:そこも大きかったですね。この業界の慣習もあり、確定申告の時期は特に多忙な日々が続いていました。朝は定時に出社し、夜はお客様に合わせて残業する。そういった日々を送るうち、「自分は誰と、どんな時間を過ごしたいのか」を選んで働いていきたいという気持ちが強くなっていきました。

■その想いが確信に変わった、決定的な出来事はありましたか?

水島:ある年の私の誕生日の出来事です。月末が誕生日なのですが、ちょうど申告期限と重なり、どうしてもその日中に仕上げなければならない業務がありました。当時は製販分離の体制だったため、直接お客様と調整することが難しく、一気に作業を進める必要がありました。気づけば日付が変わり、終電もなくなっていました。タクシーを待ちながら、ふと「自分は将来、どんな働き方をしていたら幸せなんだろう」と深く考えさせられました。

決して仕事が嫌だったわけではありません。ただ、時間や場所に縛られず、もっと自分の裁量でコントロールできる働き方がしたいと考えました。そのとき、『時間・場所・人に縛られない』といういまの人生理念の輪郭が、ぼんやりと見えた気がしました。

人生を「自由」に生きたい。

私にとって「自由」とは「時間・場所・人に縛られない」ことでした。

売上拡大より時間単価を重視して事務所を開業

■その後、2020年にフリーランスとして独立され、大学院を経て2023年に開業されますが、スタート時の開業資金は「50万円」だったと伺いました。一般的にはもっと資金を用意するものかと思いますが、不安はありませんでしたか?

水島:不安がなかったと言えばうそになります。でも、当時の私には「必要なものは、必要になったときに入れればいい」という割り切りがありました。50万円といっても、税理士登録費用などで30万円ほど消えてしまうので、実質的な活動資金は20万円ほどしかありませんでした(笑)。当然、立派なオフィスを借りることも、ホームページを業者に外注することもできません。

■たった20万円で、どうやって環境を整えられたのですか?

水島:正直20万円の詳細な内訳は覚えていませんが、「お金がないなら、知恵と時間を使えばいい」と腹をくくりました。例えば、ホームページは外注すれば数十万円かかりますが、自分でワードプレスを勉強して作ればサーバー代だけで済みます。プロから見れば拙いものだったかもしれませんが、半年、1年とかけて独学で作り込みました。機材に関しても「いつかモニターを買いたいな」と思いながら、ノートパソコン一台の小さな画面で仕事をしていましたね。AIも発達していない時代でしたから、一つひとつ手作業で調べて構築していきました。

お金がないことを「やらない理由」にするのではなく、「お金を使わない戦略」に切り替えただけです。いま振り返れば、その泥臭い経験があったからこそ、何でも自分で解決する力がついたのだと思います。

■「お金を使うか、時間を使うか」の二択で、迷わず時間を使うことを選ばれたのですね。また、「専従者以外は雇用しない」という方針もあるそうですが、一般的な拡大志向とは真逆の決断に思えます。

水島:そうですね。人を雇えば、どうしてもマネジメントのコストが発生します。「この人とこの人が合わない」といった人間関係の調整や、退職時の補填などに時間を取られることを考慮すると、自分がコントロールできる範囲で、均一なクオリティのサービスを提供する方が合理的だと考えました。

でも実は、実績が出てくると、「このやり方ならもっと件数を増やせるのではないか」「組織化して拡大することもできるのではないか」という可能性が頭をよぎる瞬間はありました。

■そこで「自由」を選び続けられた理由は?

水島:私にとって大事なのは、「客単価」よりも「時間単価」だったからです。人を雇って売上を伸ばしても、自分の時間が管理業務で奪われてしまっては意味がありません。それよりも、自分と家族が楽しく過ごせるだけのお金があれば、そのラインを超えた売上は私にとっては必要のないものでした。

売上の天井が決まってしまうことよりも、「時間・場所・人に縛られない」という人生の理念を貫くことの方が、何よりも重要だという確信があったんです。「稼ぐ」ことよりも「自由である」ことの優先順位が揺らぐことはありませんでした。