自治体の反応は千差万別
一方、自治体の反応は、通知前に該当する返礼品の中止を決めた自治体のほか、自治体で返礼品が同省の基準に該当するのかの検証等を行い見直すことを表明する自治体も多く出たが、すでに今年度の返礼品と提供事業者の選定を終えてパンフレットの作成やホームページのリニューアルが済んでいること等の理由から見直さないとする自治体など、その対応はまさに千差万別だ。
具体的な対応では、平成27年度のふるさと納税寄付額全国トップだった都城市では、牛肉や豚肉、焼酎などの返礼割合を5~6割としているが、6月以降は返礼品の量を減らすことで返礼割合の引下げを行う。また、返礼品数が1400品を超える静岡県焼津市では、事業所の負担などを踏まえ、速やかに通知に準じた品ぞろえに改めるとともに、時計やカメラなどの申込みを中止することを明らかにした。
これに対して、継続するとした自治体は、地元産業・農業等の振興に役立っていることを前面に押し出して反論。たとえば、返礼品として人気の高い米を贈っている長野県阿南町は、「農家や作付面積の増加につながっている」として本年度も約5割となる返礼割合を変えない。また、パソコンを返礼品としている山形県米沢市では、情報関連産業を中心とした東北有数の産業集積地で県内でも屈指の製造品出荷額を誇ることを挙げ、「ものづくりのまちしての本市の特徴を踏まえ、市内において製造等がされた電化製品についても特産品として返礼品に採用してきており、地域経済の活性化と雇用の確保にも大きく影響していることから、当面はこの考え方を継続する」とし、三菱電機のルームエアコン「霧ケ峰」や高級腕時計を返礼品にしている長野県諏訪市も、「「霧ケ峰」は、市郊外の霧ケ峰高原に由来し、高原で風を測り自然風を再現しており、諏訪にゆかりの品との認識を表明。また、大分県国東市は誘致企業のキヤノンのデジタルカメラは「地場産業振興に寄与する」として現状維持する」としている。
再検討要請第1号は「伊那市」
こうした自治体の対応を横目に、総務省はこのほど、通知への対応が不十分として長野県伊那市に再検討の要請を行った。伊那市では、3月末で一度寄付の受け付けを停止して、「お掃除ロボット」や「液晶テレビ」、「カラーレーザープリンタ」などの家電製品を含めた返礼品について返戻割合を3割となるよう見直した。そして、家電製品のうち調達額10万円以上の製品は取りやめたものの、10万円未満の製品については法人税法施行令第133条(少額の減価償却資産の取得価額の損金算入)の規定を根拠に取り扱いを続けるとする「市ふるさと納税運用方針」をまとめ、ふるさと納税の受付を4月18日に再開した。
しかし、高市総務大臣は21日定例理記者会見で、家電製品は資産性が高いものであることから返礼品としてはふさわしくないとして「価格に関わらず送付しないよう理解を求めたい」と発言するとともに、寄附の多くが個人であるにも拘らず税法(法人税法)を根拠としたことに「大変違和感がある」として再検討を求めた。これに対して同市は当初難色を示したが、最終的に再検討することを明らかにしている。
自治体間での寄附額格差の広がりも懸念
今回の通知により、地域経済が停滞する中で返礼品を取り扱うことで活路を見出した企業にとっては収益減となり、自治体からも寄附金額減少を懸念する声が上がっている。また、見直しを行う自治体からは、「全自治体が徹底しなければ不公平になる」と寄附額格差の広がりを指摘する声もある。総務省では、自治体の対応に注視して通知に沿って見直しを促していくこととしており、まだ暫くは返礼品についての総務省と自治体のやり取りは続きそうだ。