海外に住んだら、本当は日本の税金なんて払わなくていい
もう少し詳しく説明すると、出張や旅行でなく、日本の住民票を抜いて2年、3年と長い期間、海外に住む場合。
日本の非居住者となるわけで、本来であれば、日本を出国した日の翌日から、日本に関係する所得がない限り、日本への所得税は負担しなくてよいことになります。

…ただし、いわゆる「海外駐在」、つまり日本の会社との雇用を残したまま、日本の会社との約束の下に、海外に転出する場合。
結局は、会社との間で調整されてしまい、税金を日本へ払っているのと同じような給与体系になってしまうのですね。
あぁ、悲しき会社人…。
駐在に行くと、相対的にお得感のない国
さて、そんな「手取り保障」の下で駐在に行くとすると、高税率な国の場合は、なんだかお得に感じますよね。日本に居たころよりも高い税金を払う羽目にはならないので、相対的に不利にはなりません。
逆に、税金の無い国や、低税率国に駐在に行く場合には、お得感が無いわけです。

所得税のない国として有名なのは、モナコ・ドバイ・サウジアラビア・キューバなど。
低税率国として有名なのは、香港(最高17%)・シンガポール(最高22%)・レバノン(最高20%)など(いずれも2017年5月現在)。
ちなみに、日本の所得税と住民税を合わせた最高税率は55.945%(2017年5月現在)。低税率国の上記税率と比べると、その違いは一目瞭然ですね。
繰り返しになりますが、会社勤めの人が「手取り保障」の下で駐在に行くと、せっかく税金が低い国に行っても、日本に居たころと同じ手取りを受け取るので、全くお得感がありません。
クライアントの不満を買う仕事
「怒りにはいつも理由がある。ただし、正当な理由はめったにない」ーベンジャミン・フランクリン
今回のクライアントであるOLさんは、税金のない国へ行くというのにその恩恵を受けられないことから、会社の制度に対する不満を抱え、それはもうずいぶんと落ち込んでしまいました。
税金アドバイザーの私に不満をぶつけられても…と思いながらも、
「逆にロンドン駐在になったら、あそこなんかはもう税率高すぎますけど。仮にドバイからロンドンに移ったとしても、手取りに影響はないと考えると公平な制度ですよね。」
「いや、御社は本当にいい会社だと思います!滅多にないですよ!」
…とゴマをするのでした。
今回のケースの結論:「低税率国の恩恵を受けたいなら、その国の現地採用になるべし!」