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【“旅する女性タックスアドバイザー” 世界の税金問題】第3回/アメリカに現地採用で転職。年明けに心機一転!のはずが、日本に住民税を納めることに!?

人気連載第3弾!東京、ニューヨーク、香港と渡り歩いた“旅するタックスアドバイザー”マリアが、実際に直面した、税金に悩めるクライアントとのエピソードをご紹介。今回のテーマは「住民税」です。

日本にいないのに住民税を納める必要があるの?

こんにちは。旅するタックスアドバイザーのワタナベマリアです。今回は日本からアメリカ・ボストンの会社へ転職したOさんの、本当にあった住民税にまつわるお話をお届けしたいと思います。まずは、住民税がどんな性質の税目なのかを改めて解説します。

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住民税の性質

世の中にはいろいろな税目がありますが、「住民税」という税目を皆さんも耳にしたことはあると思います。

個人である皆さんが生活の中で目にするのは、消費税や固定資産税、ガソリン税などが多いのではないでしょうか。次いで、稼ぎや儲けに課される所得税と住民税が身近な税として挙げられます。個人の住民税は、所得税と同様に、その人の所得に対して課される税です。しかし、所得税と住民税には、いくつか違う点があります。

まず一番の違いは、納税先。所得税は「国税」つまり日本国へ払う税です。一方、住民税は「地方税」という位置づけになり、都道府県及び市区町村へ払う税となります。

次に挙げられる違いは、納税時期。サラリーマンの場合、所得税はオンタイムに納税するものです。その月の給与分の税が、その月に源泉徴収されます。個人事業主の方などは、確定申告でまとめて納税することもありますが、今回はサラリーマンを例に説明を進めさせてください。

たとえば、2017年7月に受け取る給与などから引かれている所得税は、2017年7月分の給与に対して計算されたもの。ボーナス月などに所得税の源泉徴収税額が膨らむのは、オンタイムに税計算がなされるためです。

一方で住民税は、納税時期に大きなタイムギャップを持っています。前年の所得に対して計算されたものが、翌年の6月から翌々年の5月に渡って12等分され、給与から差し引かれます。たとえば、2016年の所得に対して計算された住民税は、2017年6月から2018年5月に渡って徴収されます。

Photo by きなこもち

最後に特筆すべき大きな違いは、納税者の判断です。所得税は、基本的に日本にいる人は誰しもが納税者となり得ます。日本に住んでいる日本人はもちろん、海外から出張や駐在で来ているビジネスマン、映画を撮影しに来るハリウッドスターなども潜在的には納税者です。加えると、日本に住んでいなくても、日本にある資産から利益を得ている人は、納税する義務があります。

「租税条約」「短期滞在者免税」などを利用して、結果的には納税しなくて済むケースもありますが、所得税は多くの人を納税者の基礎としています。納税者の母数が大きく、また、誰がどれだけ所得を得ているかを行政が把握することも大変難しいため、原則的には「申告納税方式」という納税者の善意を前提とした方法を採用しています。

一方で住民税は、住民であることが納税者となる決定要素になります。記述の通り、住民税は都道府県及び市区町村へ納税するものなので、どの自治体の住民なのかを毎年1月1日時点で特定し、住民登録のある人に対して賦課します。そう、申告納税ではなく、賦課決定なのです。

確定申告書は、国の機関である税務署へ提出をしますが、都道府県には提出しませんね。地方行政側は、国が個人や会社から吸い上げた所得税に関する情報を共有してもらい、そこから独自の税計算を行って、住民に対して賦課決定通知を発送します。よって、税の徴収時期が課税年の翌年6月となってしまうのです。

住民税は「納税の時期が課税年に対して大きなタイムギャップを持っている」「納税者となるかどうかの判断は1月1日のみを切り取ってされるものである」というのがポイントです。ちょっと説明が長かったので、もうお腹いっぱいでしょうか。

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年明けから心機一転!のはずが大きな落とし穴

今回のクライアントは、30代後半の意欲に満ちあふれた日本人サラリーマンOさん。日本で勤めていた会社を退職し、ボストンにある会社で現地採用となりました。

2014年2月から就業開始予定。日本で生まれ育ったOさんは、長年夢であったアメリカ生活に心躍らせていました。この会話は、2014年の1月上旬に繰り広げられたものです。

前回の記事(第2回/低税率国・シンガポールで、その恩恵を受けられない悲しき運命)でも紹介させていただきましたが、アメリカ企業の多くは、海外から採用する人材または自国で採用して海外へ派遣する人材へ、ベネフィットの一環として税務アドバイザーによるカウンセリングを提供しています。

Oさんが渡米前に私たちのもとへ来たのも、勤務予定であるボストンの会社が、日本側とアメリカ側の税務アドバイスを事前に与えることを、彼へのベネフィットとして提供していたのです。

「初めてのアメリカ生活でね。家族も大変楽しみにしているんです。私は1月20日くらいには渡米して、2月からのスタートに備えようと思っているのですが、子どもは3月末まで学校が残っているので、奥さんと一緒に4月に来る予定なんです」

Photo by ATOHS

こんなにも楽しそうに、わくわくとしているクライアントと話をすると、こちらも幸せな気持ちになります。

しかし、私は税務アドバイザー。ここで死刑宣告です。

「住民税の清算については、今の会社様とお話になられていますか?」

・・・・固まるOさん。ここで私は、上記につらつらと書いたエピローグと同じ説明を彼に与えました。

「今2014年1月ですよね。ということは、まだ2012年分の所得に対して課された住民税の支払い期間中です。2012年の所得に対する住民税は、2013年6月から2014年5月までが支払い期間なので、本来だと今年の5月で支払い終了でした」

「加えて言うと、住民税は1月1日時点で住民であった人に、その前年の所得に対して課されます。Oさん、今日は1月12日ですが、1月1日時点でまだ住民登録を抜いていないですよね?」

「・・・・残念ながら、2013年の所得に対する住民税を、今年の6月から支払わなくてはいけません。そう、出国した後に」

酷い話です。2014年の1月に渡米するのに、2014年の6月から日本に住民税を支払わなければいけない。案分計算などされるわけではなく、納税者となるかならないか=オール・オア・ナッシングの世界なのです。

出国時の住民税の清算には、最終給与から残額を一括で控除してもらう方法や、自分で市区町村役場に行き、残額を納税する方法などがあります。

Oさんの場合は2012年の所得に対する住民税について、あと5回分の支払いが残っていたので、いずれかの方法を選択することが必要でした。2013年の所得に対する住民税はというと、2014年1月時点では納税者であることは確定していますが、税額は未だ賦課決定されていません。

将来の賦課決定に備え、日本に納税管理人という世話役を立てて彼が代理で支払うか、または自動口座振替を設定しておき、2014年6月からはその口座を利用して住民税を払う方法などが考えられます。いずれにしても頭の痛い問題です。

「マリアさん、私がもし2週間早く出国していたら、たとえば2013年12月28日に出国して、転出届も市役所に出していたら、私は2013年の所得に対してかかっていたはずの住民税を1円も納税しなくて済んだということなのですか?」

・・・そう、その通り!これが今回の教訓です。

今回のケースの結論:「日本から出国するのであれば年内に!」

 

著者: ワタナベマリア

旅するタックスアドバイザー

慶應義塾大学法学部卒業。香港在住の税金アドバイザー。過去に東京とニューヨークで国際税務の仕事を行う。世界中を旅する会社人に各国の税制のアドバイスを行う中で、制度比較から見えてくる税金のおもしろさを広めようと執筆を始める。好きな税目は消費税。

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