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【“旅する女性タックスアドバイザー” 世界の税金問題】第5回/インドネシアのお偉いさんが日本駐在へ。インドネシアからの送金が日本で所得課税になる?!

人気連載第5弾! 東京、ニューヨーク、香港と渡り歩いた”旅するタックスアドバイザー”マリアが、実際に直面した税金に悩めるクライアントとのエピソードをご紹介。今回は、日本に駐在する外国人がぶち当たる「送金課税」に関する事例です。

日本にいる外国人“非永住者”

こんにちは、旅するタックスアドバイザーのマリアです。今回はとてもややこしい「送金課税」について紹介したいと思います。ややこしい上に、国税庁の公式説明も英語版の十分なものがないのが現状。われわれタックスアドバイザーは、クライアントから「なんなんだこの税制は」と、怒られることもあります。

日本に来る外国人の数は、年々増えていますね。観光客のほか、留学生、移住してくる人など、目的はさまざま。一時的な滞在をしている人や、2~3年住む人、10年以上住んでいる人など、期間もいろいろです。

私が東京で働いていたころ、主にクライアントだったのは日本に住む外国人の方々でした。そして、ほぼ全員が日本に2~3年くらいの期間滞在することを目的とした外国人駐在員でした。

彼らは日本の税法上、「非永住者」というカテゴリーで括られます。非永住者とは、日本に住所のある居住者ではあるものの、長期間腰を据えて日本に住んでいるわけではない人たちのことを指します。非永住者として過ごした後、腰を据えて日本に住むことになると、「永住者」というカテゴリーにレベルアップします。

会計事務所に就職したてのころの私は、
非永住者の人たちは、まだ腰を据えて日本に住み込んでいるわけではない。
永住者になる前は、永住者に非(あら)ず=非永住者

と覚えました。

所得税法上、日本国籍を持っていない外国人は、10年間のくくりで累積5年以上日本に住むと、非永住者から永住者にステータスが変わります。出入国を繰り返している場合でも、10年間遡って日本にいた日数を足した合計値で判断します。

ちなみに、日本国籍をお持ちで日本にお住まいの皆さまは永住者です。非永住者になることはできません。非永住者とは、外国籍の人だけに該当可能性のあるステータスなのです。

※なお、これはあくまで税計算をするための、所得税法上の居住ステータスの話です。移民法上のステータスや、査証(ビザ)の要件上必要となる永住者の年数などとは関係ありません。そして、日本入国の時点で1年未満の滞在が確定している人は、居住者にすらならないので非永住者か永住者かの判定は不要です。

インドネシアのお偉いさんが憤慨なワケ

2014年2月下旬、インドネシア人のクライアントから電話連絡がありました。私たちの作成した彼の日本の確定申告書の計算内容が理解できないとのこと。私たちが彼の確定申告書のドラフトを作成し、承認を得るためにそれ送付した直後にかかってきたものでした。会計事務所の繁忙期にはよくある話ですが、個人の皆さまに税計算の説明をすることは、私たちにとって大切な業務のうちのひとつです。

彼は2013年の3月に、インドネシアから日本にやってきました。世界的消費財メーカーのお偉いさんで、日本に3年間の駐在予定でした。

駐在員の税金は会社が面倒を見ることが多いのですが、彼の場合は日本での税金まわりは彼自身が個人的に支払い、後日、会社と清算を行うこととなっていました。そのため、彼と私たち会計事務所とが直接連絡を取り合って、2013年分の日本の確定申告書を作成していたのでした。

私もインドネシア・バリ島に行ってきました!

「インドネシアからのRemittance (送金)100万円が税計算上加算されているけれど、これはなぜか説明してもらえるか? 確かに日本に来てから送金はした。日本に来たばかりのころに、インドネシアにいたころの預金を400万円分くらい日本に移したとあなた方に言ったね。あれは初月の生活資金がなかったから送金しただけで、こっちで稼いだ所得ではないんだ。僕の説明が足りなかったようだ」

彼が日本に来てから得た所得は、日本円で合計1500万円ほどでした。これは、日本支社から彼に払われたものと、海外にある本社から彼に払われたものとの合計額です。

そして、彼は日本への入国後、インドネシアから日本に400万円ほど送金をしていました。私たちの作成した確定申告書上では、この送金額400万円のうち100万円を、日本の確定申告で所得に含めなければならないと判断された税計算が行われていました。

彼は、この100万円は所得でなく単なる資産の送金なので、申告に含めるべきではないと主張しました。

しかし、この送金額は、申告書に含める必要がありました。

なぜなら、送金課税の対象となってしまったからです。

実は、彼が日本に来てから全世界的に受け取った給与等1500万円のうち、本来非永住者として申告すべき金額は1300万円のみでした。

しかし、インドネシアから日本に一定額の送金をしてしまった結果、100万円が追加の送金課税の対象となり、1400万円を申告する必要が生じてしまったのです。

彼の1500万円の所得の内訳は、以下のようなものでした。(源泉所得云々・・・の言葉の定義については、次章で説明したいと思います)

国内源泉所得&日本支社から払われたもの・・・600万円
国内源泉所得&海外本社から払われたもの・・・300万円
国外源泉所得&日本支社から払われたもの・・・400万円
国外源泉所得&海外本社から払われたもの・・・200万円
                  全世界的に受け取った所得合計:1500万円

“非永住者”の所得のうち、日本で課税されるのは?

なぜこんなに「非永住者」というステータスのことを執拗に書いているかというと、所得税の送金課税の対象となりえるのが、この非永住者の方々だけだからです。まずは、誰のどんな所得が日本で課税対象になるのか説明したいと思います。

まずは永住者。腰を据えて日本に住んでいる人たちです。彼らの所得のうち、日本で課税対象となるものはすべてです。日本であろうが、アメリカであろうが、どの国で発生した所得であっても、日本に対してきちんと報告し、税計算し、税額が発生すればそれを納める必要があります。これを「全世界所得課税」なんていったりします。

日本に腰を据えてしまうと、全世界の所得が日本での課税対象になってしまうのです。日本にそれらの所得を持ち込もうが持ち込まないが関係ありません。世界のどこで発生しても課税です。今回の事例に登場したインドネシアのお偉いさんの場合、永住者であった場合に日本の課税対象となるのは、彼が入国して以降、全世界的に受け取った所得1500万円全額です。

一方、非永住者の所得のうち、日本で課税されるのは以下の2つです。
1)日本で稼いだもの
2)海外で稼いだが、現金などが日本に流れているもの

先ほど説明した永住者全世界所得課税と比べると、少しだけ課税所得の範囲が狭まります。非永住者は、まだ腰を据えて住んでいるわけではないので、なにもかもすべてが課税対象とはならないのです。

さて、非永住者の所得のうち、課税対象となる1)と2)の所得を分析してみます。

まずは、日本で稼いだもの。これは「国源泉所得」といわれたりしますが、要は日本で働いてもらう給与や、日本でビジネスして稼いだ収入などです。これは分かりやすいですね。

次に海外で稼いだもの。これは「国源泉所得」といわれます。分かりやすいものでいうと、国外にある不動産を売った、国外にあるアパートを貸して利益が出たなどが例として挙げられます。外国で得た所得は、総じて国外源泉所得となります。

加えて(ここからが大切です!!!)、日本国外で勤務した日数に対して払われる給与なども、国外源泉所得となります。日本の会社に駐在中の外国人非永住者が、ちょっとお隣の韓国や中国に何日か出張に行ったとします。そうすると、海外勤務日数分の給与は、国外源泉所得となるわけです。

国内源泉所得か国外源泉所得かは、所得がどこで発生したかを究極的に考えて仕訳をします。給与をもらっている雇われ人、いわゆるサラリーマンは、物理的に働いている国が源泉国となります。なので、海外出張に行って海外で勤務をすると、国外源泉所得が発生することになるのです。

そして、その所得に対する給与などの支払いが国内からか、または国外からかということは切り離して考えます。日本の会社から給与が支払われるか、海外の会社から給与が支払われるかは、国内源泉所得に対する支払いか、国外源泉所得に対する支払いかとはまったく別の議論です。

国内源泉所得か、国外源泉所得か。そして、国内払いか、国外払いか。この4つの要素は、以下の4パターンを構成します。

国内源泉所得&日本払い
国内源泉所得&海外払い
国外源泉所得&日本払い
国外源泉所得&海外払い

そして、非永住者の所得のうち課税対象となるのは「国外源泉所得&海外払い」を外した残り3つの所得です。

今回の事例に登場したインドネシアのお偉いさんの場合、以下のとおりの金額がそれぞれの内訳でした。太字部分のみを合計すると、合計は1300万円になります。これが、彼が非永住者として申告すべき金額です。

国内源泉所得&日本支社から払われたもの・・・600万円
国内源泉所得&海外本社から払われたもの・・・300万円
国外源泉所得&日本支社から払われたもの・・・400万円

国外源泉所得&海外本社から払われたもの・・・200万円
太字部分合計:1300万円

送金課税のしくみ

非永住者の人が海外から送金をする場合というのは、往々にしてあります。日本に来たばかりの人は日本に資産があるわけではないので、海外から資産の移転を行うことは日常的にあるはずです。

バリ島の建造物。素敵です!

非永住者が日本に送金をした場合、その金額が日本の所得税、贈与税、相続税などの対象となるかについて、さまざまな検討が必要です。それは送金されたお金の性質によって判断すべきですが、今回は所得税の対象となるものという想定で話を進めます。

送金があった場合、その金額は、「国内源泉所得&海外から支払われたもの」を日本に送金したのだと認識されます。彼の場合、上記金額内訳に記載のある、上から2つめの300万円がこれに該当します。これは何を意味するかというと、課税対象となる所得であり、かつ申告にはすでに含まれている(はず)なので、特段追加で課税を検討する必要はないということです。

送金額400万円のうち、300万円についてはこれでクリアになりました。彼が受け取った給与のうち、一部海外払いがあったので、それを日本に持ってきただけだということになります。申告されている金額の内数なので、追加での申告は必要ありません。しかし、残りの100万円が論点になります。

この枠を超えてしまった100万円は、税法上「国外源泉所得&海外で支払われたもの」と認識されます。そして、これは本来非永住者であれば日本に申告する必要のない所得だったのですが、日本に持ってきてしまったがために、申告すべき所得となってしまいました。これが送金課税の仕組みです。

インドネシアのお偉いさんに説明に説明を重ね、ついに申告内容の承認を受けました。

「まぁ、日本の税金は会社が払う約束だからいいんだけどさ。それにしてもよくわからない仕組みだよ、マリアさん」


今回のケースの結論:「外国人駐在員の皆さま! できるだけ国内に送金をしないか、または海外からの給与受け取り枠を広げて送金課税に引っかからないように!」

著者: ワタナベマリア

旅するタックスアドバイザー

慶應義塾大学法学部卒業。香港在住の税金アドバイザー。過去に東京とニューヨークで国際税務の仕事を行う。世界中を旅する会社人に各国の税制のアドバイスを行う中で、制度比較から見えてくる税金のおもしろさを広めようと執筆を始める。好きな税目は消費税。

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