国税OB税理士が監修。公認会計士・税理士・会計事務所・企業経理担当、税金・会計に関わる“会計人”がいま必要な情報をお届けします!

会計人ニュース

注目キーワード

  • KaikeiZine
  • ライフスタイル
  • 【“旅する女性タックスアドバイザー” 世界の税金問題】第6回/日本とアメリカ、全く異なる住宅ローン控除のアプローチ

【“旅する女性タックスアドバイザー” 世界の税金問題】第6回/日本とアメリカ、全く異なる住宅ローン控除のアプローチ

人気連載第6弾! 東京、ニューヨーク、香港と渡り歩いた”旅するタックスアドバイザー”マリアが、実際に直面した税金に悩めるクライアントとのエピソードをご紹介。今回は、日本とアメリカの住宅ローンに関する税制の違いについてお話します。

日本に家を買いたい米国籍のクライアント

こんにちは、旅するタックスアドバイザーのマリアです。今回は米国籍のクライアントが感じた、日米の住宅ローン税制の違いについて、ご紹介したいと思います。

日本も米国も、ローンを組んで住宅を構えた場合には、何かしらの税的な優遇措置が設けられていますが、その制度の中身は大きく異なります。

数年前、東京で働いていた頃のクライアントの話です。彼は5年前、米国本社から日本法人へ転籍してきました。日本に住んで5年強経過しており、この先も長期間、日本に滞在する見通しだということで、思い切って住居を構えることを検討していました。

「住宅ローンを組んだら、日本でもDeduction(控除)を受けられるんだろ?」

そう質問を受けたのが、この話の始まりです。彼は米国にすでに住宅用不動産を保有しており、その住居に係る控除を毎年米国の申告書で受けていました。(米国籍の彼は、日本に住んでいても米国に申告を出し続ける義務があります)。このことから彼は、いくらか米国のローン控除について知識があったため、日本においても同様の制度があるものだと踏んで質問をしてきたのです。

日本国内でローンを組んで、日本の住居を購入して、日本で利子を払う。日本で働いている彼は日本で税金を納めているため、日本の住宅ローン控除の恩恵を受ける対象であることは明らかです。しかし彼は結果的に、住宅ローン控除の恩恵を受けることはできそうにありませんでした。それはなぜかというと・・・・。

Photo by akizou

住宅借入金等特別控除、通称“住宅ローン控除”

“住宅ローン控除“という言葉は、皆さんにとって大変身近な単語かと思います。正式には「住宅借入金等特別控除」といいますが、住宅ローンを組んで一定の利子を払っている場合、その年の税金が安くなるというものです。この恩恵を受けるためには原則として、確定申告をしなければなりません。

ローン利子を払っている場合に取れる税控除なのですが、実際の控除額は支払った利子の額とは関係なく計算されます。住宅借入金等利子特別控除でなく、住宅借入金等特別控除です。利子を控除するのでなく、借入金の元本部分を元に控除額を決定します。しかし控除を受けるには利子を負担していることが要件です。少しややこしいですね。

具体的には、借入金の年末残高の1%を、その年の所得税額から引くことができる仕組みです。ただし控除額は40万円を超えることはできません(平成26年以降の借入の場合)。

たとえばローンの年末時点の残高が3000万円の場合には、3000万x1%=30万円なので、30万円が控除対象額となります。ローンの年末残高が6000万円の場合には6000万x1%=60万円なのですが、上限である40万円を超えてしまっているため、控除額は40万円にとどまります。繰り返しますが、利子の支払い額はこの計算と関係ありません。

また、控除額は年税額を超えることはできません。これはよく考えると当たり前のことで、たとえば所得税を20万円しか払っていない人が、40万円の控除を受けて差し引き20万円得することはできないということです。払った税金が帰ってくるという仕組みなので、払っていない部分は返ってきません。所得税で引ききれない借入金利子がある場合には、住民税からその引ききれなかった部分が一定額控除されます。これはお住まいの市区町村が勝手に計算してくれます。日本の行政は素晴らしいですね!

住宅ローン控除の適用を受けるための条件はいくつかありますが、要点のみおおざっぱに列記すると、以下のようになります。

・ローン利子の利率が0.2%以上であること(平成28年以前に組まれたローンの場合には、利率1%以上であること)
・ローンや債務の返済が分割で、返済期間が10年以上のものであること
・ローンの対象となっている住居の床面積が50㎡以上であること
・控除を申告する年の12月31日まで引き続きその住居に住んでいること
・控除を受ける年の合計所得金額が3000万円以下であること

などなど。

住宅ローン控除の政策的背景、それは日本に家を構えて住んでいる個人が、そのためにローンを組んでいて、かつ一定の利子を負担しているのであれば、代わりに税額を低くしましょうという立て付けです。従って、無利子または極めて低い利率しか負担していないなどという場合には、税額控除の適用対象とはなりません。

また、ローンの対象となる家に住んでいない場合にも、この控除の対象とならないことが上記の条件から分かります。たとえばローンを組んで購入した不動産を他者に貸し付け、利益を出している場合などでは、一般にローン控除の対象となっている個人と同じように税額を低くすることは公平ではないからです。

最後に、合計所得金額が3000万円を超える場合には、そもそも担税力(税金の支払い能力)が高いとされるため、住宅ローン利子を負担している個人であっても、税額を低くする必要はないという政策的意図が見受けられます。「お金あるでしょ」ってことですね。

クライアントの場合

冒頭で紹介したクライアントは、直近に提出した日本の確定申告書上、給与所得の欄に“4200万円”という数字が記載されていました。過去5年分の確定申告書を振り返ってみても、毎年4000万円前後の給与所得を得ています。

しかし、この内訳をみると、基本給やボーナスなどを得て支払いを受けた現金は2000万円ほどに過ぎませんでした。そのほかの2200万円の構成要素は、米国本社から振り出されたストックオプションの権利確定益や、2人の子供のインターナショナルスクールの学費を会社が払ったものなどでした。つまり現金ではなく、“経済的利益”が2200万円あったということです。現金としては2000万円ほどしか支払いを受けていなかったということです。

現金でなくとも、株や経済的利益など、雇用主から得たものはすべて給与収入に参入されます。彼は合計所得金額3000万円以下という要件を満たすことができそうにないため、このままの待遇で翌年以降も行くとなると、ローン控除の適用対象とならない可能性が強いといえました。

「来年以降ストックオプションの権利確定を受けないなどの事情があれば別なのですが・・・・」と説明するしかありません。

現金としては2000万円ほどしか受け取っていなかった彼は納得がいかず、かつ、そもそもこの3000万円の要件にすら納得していないようでした。

「わかったよ。日本の税制がそのようにしているのは分かったけど、僕みたいなケースの人はかわいそうだね」

筆者がアメリカに住んでいたころの家・・・・の向かいの家の外観が素敵でした(笑)
1 2
ページ先頭へ